CBDオイルを飲んで車を運転しても大丈夫?科学者が懸念を示すポイントとは?

CBD業界は拡大を続けています。カールズ・ジュニア・バーガーが販売するCBDバーガーや、ガム、炭酸水、スポーツ用品に至るまで、今や超有名商品となったこのカンナビノイドは、影の立役者たちによって、日常生活のあらゆるシチュエーションでの使用が可能となりました。その使用目的も、運動後のリラックスから、夕方どきに生産性を高める、といったものまで多種多様。

しかしその一方で、米国食品医薬品局(FDA)はCBDの効果が望ましくない形で現れる可能性のある場面を指摘しました。CBDの使用によってハイになることはなくとも、運転中に影響が出るかもしれない、とFDAは主張するのです。

テトラヒドロカンナビノール(THC)は大麻の特徴であるハイになる効果をもたらす物質で、カンナビジオール(CBD)と同様、てんかん発作や、不安障害を抑えるなど幅広い有益な効果がありますが、両者が脳と体にもたらす影響はとても異なっています。

THCと運転の相性が良くないことは、近年ますますはっきりとしてきました。2018年には、医学雑誌ジャマ・インターナル・メディスンで発表された報告書によれば大麻の“ホリデー”である4月20日に大麻を使用することと、致命的な自動車事故の発生が12%増加するという事実が、結びつけられることが分かったのです(ただしこの研究では、アルコールの摂取の可能性を換算できていません)。しかしながら運転手が飲酒をしていなくても、2020年1月の研究では、THCの慢性的な服用によって運転時の能力に支障をきたすことが明らかになりました。特に、その傾向は16歳より前に大麻の喫煙を始めた10代に強くなりました。

CBDによる眠気が運転リスクになる可能性

ただし、CBDが運転に影響を与えるかどうかについては、まだはっきりとはしていません。そんな中でFDAは2019年12月に、ホリデーシーズンの旅行者たち向けにプレスリリースを発表しました。「CBD商品を服用した後の運転には注意を払ってください」と、FDAはドライバーたちに警告しています。この警告は、CBDが眠気、鎮静、無気力を引き起こす可能性があるという主張に基づいています。

現時点において、CBDが運転にもたらす影響については、限られた研究しか出ていません。しかしながら、トーマス・アーケル(シドニー大学の博士号候補生)がCBDとTHC、そして運転との間の関係を研究した2019年の論文がサイコファーマコロジーという雑誌に掲載されました。彼の主張ではむしろ、CBDの使用が運転を損なう可能性は低く、ただし「はっきりと確信できているわけではないので」科学者はその調査を引き続き行っている、というものでした。

「CBDを高容量服用することによって、穏やかな鎮静作用がもたらされるという証拠がいくつか示されており、これによって、軽度の運転障害が引き起こされる可能性があります」と、アーケルは述べます。

居眠り運転と睡眠薬に関するレポート

CBDが運転の能力に影響を与える懸念は、カンナビノイドそのものの事情とはほとんど関係がありません。そうではなく、CBDによるおだやかな鎮静作用が、運転能力の悪化と結び付けて考えられています。しかし、その効果の証拠として示されているのは、裏付けに乏しいものです。

2019年の消費者レポート調査によれば、CBDを使用した人の10%のアメリカ人が、睡眠の改善のために使用したと報告したといいます。その鎮静作用はまた、いくつかの過去の研究でも記されていますが、それは高容量摂取したときの報告に限られている、とアーケルは主張します。

CBDと運転の関連に関する研究が限られているのとは対照的に、睡眠導入剤を始めとする、眠気を誘発する一般的な薬とそれによって生じる運転への影響に関する研究は明確なものです。2015年にアメリカン・ジャーナル・オブ・パブリック・ヘルスに掲載された報告を見てみましょう。その研究では、トラゾドン(抗うつ薬)、テマゼパム(処方箋の必要な睡眠導入薬)、ゾルピデム(アンビエンという名前で売られている)を服用していると報告した40万4171名の成人の衝突記録を分析しています。そしてこれら3種の薬の服用によって、車の事故の可能性は高まり、特にアンビエンを使っている者たちにその割合が高くなることが分かりました。

アンビエンを服用している人の自動車事故のリスクは、薬を服用していない人と比べて2倍になりました。著者は、アンビエンによる運動障害の度合いを、血中アルコール濃度0.06%~0.11%の状態と関連付けました。これは、法律で運転を認められている制限ギリギリか、それ以上に値します。

ですから、アンビエンのように服用すれば眠りに落ちてしまうタイプの薬と、CBDには大きな違いがあり、だからこそCBDの鎮静作用は「穏やか」と呼ばれているわけです。しかし、薬物に誘発されたわけではない居眠り運転だったとしても、疾病管理センターなど規制を敷く当局にとっては大きな懸念事項です。

米国運輸省道路交通安全局によれば、2017年には795名が居眠り運転の結果死亡したことを報告、また疾病管理センターによれば、睡眠が足りていない状態で1人きりで運転をすることが、7万2000件の負傷の原因となっていると推定しています。

明確な答えが出るのはもうすぐ

アーケルは、CBDと眠気の間には大きな関連性はないものの、CBDを使用することで運転中の注意力がいくらか減ってしまう可能性があるだろうと語ります。彼の研究はその見方を示しているものの、まだ明確な答えは出ていません。

「私達が行っている、THCとCBDを服用した際の運転への影響に関する研究は、それぞれ別個に服用した場合、同時に服用した場合どちらも、まもなくゴールに辿りつくと思います。もうすぐ結論は出る筈です!」

CBDはすべてのTHCの作用を中和するわけではない

CBDが運転に与える影響というものが実際あったとしても、それはわずかなものだと言えそうです。そんな中で、アーケルはCBDと車の運転が抱える、1つの大きな神話について説明します。それは、CBDはTHCのもつネガティブな効果に対し、中和するように働いて効力をなくす、というものです。

事実、THCを使用したことによる不安誘発効果をCBDが相殺する、ということは既に研究によって示されています。しかしアーケルは、この研究結果が誤解されているのではないかと懸念しています。

「THCの効果に対し、どのようにCBDが調節を行うのかということについては、多くの誤情報がオンライン上で出回っており、この間違った知識が、疑うことを知らない医療大麻使用中の患者や消費者に伝播することを私は心配しているのです」

「CBDがTHCの効果を調整するということについては、多くの間違った情報が出回っている」

しかしラッキーなことに、模擬運転試験と、THCとCBD含有のベイプを用いたアーケルの研究は、明確な情報をもたらしてくれそうです。彼の研究では、THC高容量か、THCとCBDが同容量のリキッド125㎎をヴェポライザーで吸引した14名の被験者がいました。そして、それぞれの被験者がGPSの指示に従って高速道路あるいは田舎道を走る模擬運転ゲームを行いました。THCとCBDの両方を同じ濃度で喫煙した被験者は、急にハンドルを切る回数が増え、最大4時間後まで、感覚の障害があったと報告したのです。

「我々の研究は、CBDがTHCの作用を相殺するという事実は、少なくとも運転においては無いということを示しています。ですから、そのことが知れ渡り、皆さんがそれに基づいて判断をすることが重要なのです」アーケルはそう付け加えます。

また重要なことに、この研究ではCBDのみを服用した場合の実験結果は含まれていません。アーケルによればその理由は、CBDのみのベイプは「一般社会では普及していないから」というものですが、現状は変化しつつあります。しかし、このチームの研究では、CBDとTHCの同容量の投与は、THC単独で投与した場合と比べて、THCの血液濃度が高くなることが分かっており、それはCBDとTHCの間の相互作用によって運転中の懸念が高まることを示していると言えそうです。

それでもやはり、例えばガムや炭酸水などでCBDを摂取した後、そのことを全く構わなかった場合は――少なくとも運転技術が高まることにはならなさそうです。(感覚に既に支障が出ている場合は特に)CBDの使用と運転の関連については、引き続きの研究によって明らかになることが多いでしょう。

その時までは、居眠り運転を避けたければ、まずは夜よく眠ることから始めるのが一番の解決策かもしれません。

出典:Inverse