処方薬としてのヘロインは依存症の治療の次のステップになるか?

先週、フィラデルフィアが、安全な注射施設としても知られている包括的なユーザーエンゲージメントサイト(CUES)の支援を発表したとき、間違った情報や根拠のない情報との戦いに、ネットが大炎上しました。ニュースサイトやソーシャルメディアでは以下のような投稿が見られました。

「市は、いつ児童性的虐待の安全地帯を作るのか?」と1人がジョークを飛ばしました。

「私の税金ではやめて!」他の人が叫びました。

何人かが、まるで審査された証拠であるかのように「ザ・ワイヤー」(アメリカの警察ドラマ)を引用しました。

そして、誰もが自分の画面の後ろに隠されたサイトに反対しているわけではありません。ニュース番組「グッド・デイ・フィラデルフィア」で、ラジオパーソナリティでありコラムニストの ドム・ジョルダーノは、市がやり過ぎだということを証明しようとしました:「それでは、どうして私たちはヘロインを提供しないのですか?」と彼は訊ねました。
私は、大声で笑ってしまいました。処方薬としてのヘロイン?もちろん。やりましょう。

結局のところ、なぜ私たちはそうしてはいけないのでしょうか?

薬物を使用する個人に、そのための安全な空間を提供するという考えは、急進的に聞こえるかもしれませんが、世界的には、米国は証拠に基づいた依存症解決策の面で後れを取っています。ポルトガルは、その人口のほぼ1%がヘロイン中毒になってしまった後、2001年にすべての薬物を非犯罪化しました。現在、ポルトガルで、薬物過剰摂取で亡くなる成人の国民数は100万人当たり年間わずか5.8人です。それと比較して、アメリカでは年間約200人が過剰摂取死しています。カナダ、スイス、イギリス、ドイツ、オランダを含むその他複数の国々は、他の治療がうまくいかなかった人のために、医療グレードのヘロインの処方箋を提供しています。

社会心理療法と組み合わせて、メタドン、ブプレノルフィン、および持続放出性ナルトレキソンなどの FDA 承認薬を使用する投薬支援による回復は、疑いなく、オピオイド使用障害のための最も効果的な治療法です。しかし、それで効果がないほぼ40パーセントの人については、ヘロイン補助治療が、実行可能な第2の選択肢になります。

医学的管理下でヘロイン中毒を治療するためのジアモルフィン(医薬品ヘロイン)使用に関するすべての研究は、肯定的な結果を示しています。ジアモルフィンが提供されている国では、違法薬物使用、犯罪、病気、過剰摂取が劇的に減少しました。また、個人の全体的な健康と幸福が改善され、安定した住宅や雇用を確保することによって彼らの社会復帰を助けました。
さらに、個人が治療を受け続ける可能性を高めます。

それならば、なぜこの解決法がそれほど過激に聞こえるのでしょうか?

答えは複雑です。

人間(実際には、すべての動物)は、興奮を求める生き物です。

ロナルド k. シーゲル博士は、娯楽として使用する物質を求めている種は、実際には人間だけではないという証拠の収集に、20年以上を費やして、中毒に関する著作「精神作用のある物質への普遍的な衝動(The Universal Drive for Mind-Altering Substances)」に、このことについて詳細に記述しました。シーゲル博士の本を通じて、そしてヨハン・ハリの著書「悲鳴を追いかけて(Chasing the Scream)」の中にあるシーゲル博士のインタビューで、シーゲル博士は、薬を使用する人々が悪ではないことを説明しています。彼らはただの人間です。
しかし、残念ながら、米国にいる私たちの10%の人にとっては、その小さい興奮では十分ではありません。

科学的事実にもかかわらず、私達の社会は、薬物中毒の人々を、他の障害や病気を持つ人々と同じように税金、感情および根拠に基づくサービスに値しないかのように扱います。

薬物使用による障害と癌の治療の両方を必要としている人に尋ねてみて下さい、彼らは診断によって異なった治療をされているという事実を間違いなく断言するでしょう。

昨年、フィラデルフィアで1200人以上の人ががんで死亡し、がん患者が必要なときに死の拮抗薬と医療的な処置を受けることができる場所を市が提案するところを想像してみてください。がん患者が、生存と生活の向上のために、ジアモルフィンと呼ばれる薬を必要とていることを想像してみて下さい。患者は、その治療を否定されることはないでしょう。

では、なぜそれが薬物依存の人に対しては異なるべきなのでしょうか?答えは絶対に異なるべきではないということです。

しかし残念なことに、見当違いで偏見のある麻薬戦争のせいで、わが国は麻薬を違法にし、薬物を使用する人たちを犯罪者にしました。そして、ここで、反麻薬のメッセージで過飽和状態のほとんどのアメリカ人が、その批判に次のように言い返します。「しかし、薬物は、とても強いので、それらを試した後は誰もが中毒になります。大手製薬会社によって引き起こされたオピオイド蔓延で何が起こったかを見てください!

私たちは、大手製薬会社に、虚偽的な販売活動ならびに高い依存のリスクを与える一部の物質の化学組成に関して責任を取らせるべきですが、オピオイドの危機はそれよりもはるかに複雑です。

トラウマ、孤独、孤立、失業などの環境要因は、これまでの軌跡を理解しようとするときに無視できるものではありません。グレート・リセッション(2000年代後半から2010年代初頭までの世界市場での大規模な経済的衰退の時期)により大きな打撃を受けた人々は、上記のすべてを経験しました。犯罪、病気、過剰摂取のように依存症に関連する問題が、薬物が取り上げられたときに始まることは、注目に値します。政府が行なった大手製薬会社に対する取り締まり以来の過剰摂取の急増が、このことを裏付けています。

包括的なユーザーエンゲージメントサイトに反対する議論に飛び込む前に、自分自身に問いかけてみて下さい。そもそも、なぜこれらの物質は違法であり、これらの行動は違法なのでしょうか?

この代替案は、あなたが信じてきたアメリカの厳格な薬物政策ほど急進的ではありません。

ジリアン・バウアー-リース博士は、テンプル大学ジャーナリズム学科の助教授であり、「ソリューションジャーナリズム(解決模索型報道):依存症報道」という名前のコースを教えています。彼女はまた長期間に及ぶ回復者でもあります。