薬物を合法化を推進したら薬物中毒者は減少するのか?

薬物を禁止しても薬物中毒者は減らない

世界で薬物指定されている大麻草・コカイン・ヘロイン・覚せい剤など世界各国で規制ルールに沿って取り締まりを行っています。しかし、世界共通で薬物政策はうまく機能していないどころか、ますます深刻化していることは事実です。薬物規制をどんなに厳しくしても、薬物使用者が減った事案は意外と少ないのです。

なぜなのでしょうか?

2016年以降フィリピン国内ではドゥテルテ大統領が薬物撲滅を掲げ、薬物使用者や密売者、中毒者を対象に5000人以上が死刑されています。このような政策が国の治安を良くし、薬物に手を染める人間もいなくなると考えるのが普通の考えです。では、フィリピンの薬物撲滅戦争は成功と言えるのでしょうか?そもそも薬物を供給する大元・根源を全て断ち切れない以上は悪化の一途をたどることになるでしょう。1年以上で述べ5000人も死刑実行がされているにも関わらず、黒幕は誰一人逮捕・死刑になっていないという事実が浮き彫りになっています。つまり、薬物中毒者末端に向けてどれだけ政策を厳しくしても、問題解決しないということです。

アメリカは世界一の薬物消費大国としても有名です。アメリカも長年に渡り薬物撲滅を掲げ、取り締まりを実施してきました。しかし、アメリカから薬物がなくなったという現実は過去一度もないのです。

どんな経緯で薬物全面合法化を推し進めたのか

2000年代初頭ヨーロッパ・ポルトガルでは深刻な薬物問題に頭を抱えていました。今後どうやって薬物問題を解決していくのか、政府主導により学者や医師などで構成された有識者委員会を作り、よりより社会を目指し討論を繰り返し、出した結論は全ての薬物取締規制を辞めるという大胆なものでした。当時ポルトガル国内には100万人ものヘロイン中毒者がいたとされており、国民約1%の割合を占めていました。

薬物自体を全面的に合法化した国はポルトガルが初めて。オランダではハードドラックに手を出さないよう大麻・マリファナを全面的に合法化する動きをどこよりも早く実現させています。しかし、ハードドラッグを合法化という国は世界で類を見ません。

このような発想がなぜ生まれたのか

有識者委員会に所属していた優秀な医師の発想。この医師が提唱したことは、薬物中毒や薬物依存は薬物そのものが原因であるのではなく、薬物に頼らないと生きていけない社会にこそ問題がある。根本から解決を図ることの重要性を示唆したことがきっかけでした。

薬物戦争が狡猾な密売業者を生むという皮肉な現実

では薬物を合法にしたらどうなるのか

ポルトガルは2001年に薬物全面を合法化しました。その後の調査結果をもとにソフトドラック(マリファナ)もハードドラック(コカイン、ヘロイン、覚せい剤)の薬物依存者は50%削減したという驚くべき事実が起こったのです。同時に薬物を厳しく取り締まっている近隣諸国よりも薬物中毒で命を落とす割合が極端に少ないことが分かりました。

薬物を合法化を推進したら薬物中毒者は減少するのか?

約50万人もの薬物中毒者がなぜ薬物を絶つことができたのか

ポルトガルは薬物を全面解禁すると同時に薬物依存者の社会復帰を全面的にサポートすることを実施したのです。麻薬取締を強化すればするほど人員確保をしなくてはいけないのがセオリーです。また、逮捕者が続出すれば同然刑務所は人で溢れる状況になるわけです。それらを維持するために莫大な税金を投入しなくてはいけません。政府はこれらの税金を薬物依存者が、きちんと社会復帰できるように就業プログラムを組んだり、少額貸付制度を設けるなどとてもポジティブな取り組みを実施したのです。

こうした動きが国民感情を良い方向へと導いたのです。私たちは薬物汚染を厳しく取り締まることにより、この世の中から薬物を根絶できると考えていました。実際厳しく取り締まった結果が今の世の中です。何一つ良くなっていません。ポルトガルは以前のように薬物を厳しく取り締まることは今後もしないという方針を打ち出しています。

一番の問題は薬物依存

薬物中毒者は薬物の犠牲者であることを決して忘れてはいけないのです。薬物に手を染めてしまった人たちをいかに社会復帰できるような建設的なプランが大切だと思います。薬物をこの世から根絶することは無理だと個人的に思っています。今のままでは。薬物を強く規制すればするほど需要が増えることは明白なのです。

日本でも芸能人から一般社会にまで薬物汚染が蔓延されていると言われています。日本では薬物=廃人(関わるな)というイメージが定着したことにより、社会復帰は他国よりも圧倒的に厳しい立ち位置に置かれるでしょう。こうした動きを改善しなければ薬物中毒者や依存者は増え続けると思います。

大切なことは人は一人では生きていけないということです。繋がりがあるこそ生きがいを感じるものです。

ポルトガルのように薬物や薬物対策を見直すことが求められているのではないでしょうか。よりよい社会や国を作るためには厳しく規制するだけでは解決には至りません。

薬物中毒者に有効な植物製剤

1.クラトム

東南アジアやアフリカで伝統的にアヘンの退薬を容易にするために使用されていた熱帯性の樹木として、クラトムは処方薬の鎮痛剤の代替品としても、強い薬物から脱却するための方法としても人気を得ています。

クラトムの主要な活性化合物は、アルカロイドミトラギニンおよび7-ヒドロキシミトラギニン(7-HMG)です。 オピオイド(モルヒネ様物質)としては分類されていませんが、オピオイドδ受容体に結合するだけでなく、部分的にオピオイドμ受容体を活性化します。

FDAとDEAは、1999年から2016年の間に処方オピオイドの過剰摂取により死亡した20万人のアメリカ人と比べてとるに足らない数である、米国における36人のクラトム関連の死亡を早急に強調しています。

禁断症状を軽減する方法としてのクラトムの可能性が、国際薬物政策コンソーシアム(the International Drug Policy Consortium)によってタイで実施された研究で調査されました。 研究者らは、ヘロインからアルコールに至るまで長期的な薬物中毒者では、「体に対するクラトムの効果が、禁断症状による痛みを軽減し、解毒の処置に役立つ」ことを発見しました。

2.アヤワスカ

ほとんどの中毒の根底にある精神的外傷を治療することに関して言えば、他のものよりも抜きんでた植物薬が1つあります。バニステリオプシス・カーピ(Banisteriopsis caapi)(アヤワスカ)のつるとサイコトリア・ヴィリディス(psychotria viridis)(チャクルーナ)の灌木の葉を使用して調製された向精神性のお茶であるアヤワスカです。

アヤワスカの精神活性の効果は、幻覚性の化合物であるジメチルトリプタミン(DMT)を含むチャクルーナの葉に由来します。 しかし、アヤワスカのつるの中に見出されるハルマラアルカロイドがなければ、DMTはいずれかの精神活性効果が中枢神経系に到達する前に直ちに腸内で分解されてしまうでしょう。

しかし、アマゾンの土着の民族が何らかの形でこの特有の化学的相互作用を発見し、何千年もの間、シャーマンの儀式でアヤワスカを使用してきました。西洋人にとって、アヤワスカは内部の悪魔に直面し、過去のトラウマを癒し、満ち足りた安らぎを見つける方法になっています。それは、中毒を治療するための研究の主題となっている治療的組み合わせです。

ガボール・メイト博士は、中毒にアヤワスカを用いる最前線にいます。アヤワスカの儀式において共通に経験することは、参加者が未処理のまま残っている痛みを伴う過去の出来事を再訪することです。また、多くの人は、中毒などの習慣につながる可能性のある、心の否定的パターンも観察します。

メイト博士は次のように述べました。「もし、あなたのパターンと信念、それらの中心的な信念、そしてあなたがこれらの信念にどのように到達するのかを意識することができれば、あなたはそれらの信念を放棄することができます。硬直した感情、思考、行動パターンは開放することができます。自分自身を再調整し、内外の資源をより深く発揮することができます。だから、そこで、真の自己概念と、精神活性植物、特にアヤワスカの助けを借りて再構成することができる、あるいは少なくとも再発見することができるものに到達するのです。

薬物の再発を減らす手段としてのアヤワスカの使用を調べた研究への参加者は、それらの経験を共有しました。

「儀式の前は、私は何年もクラック・コカイン中毒に苦しんでいました。そして私がこのリトリートに行ったとき、アヤワスカは私が抱えていた、麻薬やアルコールで埋めようとしていた傷や痛みの解放を多かれ少なかれ助けてくれました。このリトリート以来、私はドラッグを止めることができています。それは私の人生に大きな前向きの影響を与えました…。私の人生に家族が戻ってきました。 私の娘は家に戻りました。そして、時間が経つにつれて、私たちは毎日仲良くなって近づいています」(女性参加者、41歳)。

他の53歳の男性参加者は、アヤワスカが解毒の際の身体感覚を助けた体験を報告しました。 「クラック・コカインや飲酒の欲求や禁断症状はまったくありません。アヤワスカがその渇望、その欲求、その習慣を取り除く限り、かなり強力なものです。私にとってその渇望は存在さえしなくなったのです」

問題のある薬物を使用している12人の被験者についての小規模な予備実験では、2つのアヤワスカの儀式とカウンセリングセッションを組み合わせました。研究者らは、「自己申告されたアルコール、タバコ、コカインの使用は減少し、報告された問題のあるコカイン使用の減少は統計的に有意だった。すべての研究の参加者は、薬物からの撤退に参加することで肯定的かつ永続的な変化を報告した」ことを言及しました。

しかし、特にアヤワスカを服用する場合、特に中毒と戦っている人が服用する場合は、注意すべきことがあります。感情的なカタルシスが起こることは珍しいことではないので、経験豊富なファシリテーター、心理学者、または先住民族のシャーマンの指導の下でのみアヤワスカを摂取するべきです。

3.シロシビン

マジックマッシュルームとして一般に知られているシロシビンは、中毒の治療に有望であることが示されているもう一つの天然の向精神薬です。

これまでのところ、シロビシンに関してはタバコ中毒を中心に研究が行われてきました。ジョンズ・ホプキンズ(John Hopkin’s)大学で実施された試験では、15人のヘビースモーカーに、認知行動療法と合わせて3期間のシロシビンを与えました。その結果、治療終了の6ヶ月後に、80%の参加者が禁煙を続けていました。

主任研究員のマシュー・ジョンソン氏は次のように述べています。「結果は決定的なものではありませんが、禁煙率はタバコ中毒の現在のところ最良とされている心理療法や薬物療法で得られる約35%に比べてはるかに高いため、シロシビンが何らかの役割を果たしていることが強く考えられます」。

シロシビンが欲求を減らし、再発を予防することに成功したのは、脳におけるセロトニン受容体の活性化によるものだと考えられています。アルコール依存症を患っている被験者を用いた小規模な実験においては、何かがシシロシビンの包含を促進しました。心強いことに、彼らは試験が終了後、36週間継続して禁酒を示しました。研究者らは、「シロシビンセッションでの最初の効果の強さは、5〜8週目の飲酒の変化を強く予測させ、また5週目の渇望の減少および禁酒の自己効力の増加を予測させました」と言及しました。

ほとんどの向精神薬と同様に、シロビシンはスケジュール1の薬物に分類されており、乱用の可能性が高く、医療上の使用が認められていないと考えられていることを意味しています。

4.イボガイン

イボガイン(Ibogaine)は、西アフリカのイボガの潅木に天然に存在する向精神性のアルカロイドです。

西アフリカの様々な地域で、伝統的に、ブウィティ(Bwiti)教のメンバーによる癒しの儀式に取り入れられてきましたが、ハワード・ロストフ氏によって1960年代に、オピオイドの断絶のための使用が発見されました。イボガインの魅力的な性質の1つは、通常、単一または限定された回数の投与後にその中毒の破壊効果が達成されることです。

ある研究では、オピオイドからのデトックスプロセスの一部として30人の被験者にイボガインを与えました。禁断症状は有意に減少し、治療1カ月後には50%が依然としてオピオイドを断絶した状態でした。

シロシビンやアワヤスカと同様に、被験者は、人生のスライドショーのようなものを目撃したと報告しており、それを研究者は「長期間の視覚的記憶の概観的で迅速な読み出しと、検索されたデータに関する平静である」と述べました。

ある参加者は次のように述べています。「イボガインは、アヘンの中毒者に数ヶ月から半年の欲求からの自由と意識の広がりを与えてくれると言って間違いありません。これにより、生活を軌道に乗せ、賢さと信念をもって、直接的かつ正直に直面していることを学ぶ、一定の期間が与えられます。イボガインはあなたのためにそれをやってくれるわけではありません。しかし、あなたがあなた自身の仕事をするのを助けてくれるのです」

しかし、イボガインは、米国および他の多くの国において、スケジュール1の薬物として分類されています。それだけでなく、主に心臓不整脈による統計的に有意な死亡数(300人中1人)が記録されています。これは、現在心臓病にかかっている人は、いかなる状況であってもこの植物を摂取するべきではないことを意味しています。

中毒になると、渇望や再発を防ぐ特効薬はありません。しかし、母なる自然が、根本的な精神的トラウマを癒すための有用なツールを提供し、不快な生理的渇望症状のいくつかを軽減してくれる可能性はあるでしょう。いずれの方法を選ぶにしても、必ずかかりつけの医師に相談し、利用可能な心理的サポートを利用し、中毒支援グループの療法や専門家と話をしてください。