炎症に効果:インフルエンザの治療に大麻を使用

インフルエンザや風邪を起こすウイルスが体内に入ると、 ウイルスを攻撃することによって免疫系が反応し、その後に続いて起こる重度の炎症がインフルエンザや風邪の症状を引き起こします。すなわち、喉の痛み、体の痛み、鼻水です。インフルエンザウイルスは変化しやすい感染症で、多くの新しいウイルス株が、現在入手可能な抗ウイルス薬の一部に対してどんどん耐性を持ち始めています。

ある研究で、マウスが意図的にインフルエンザウイルス株に感染させられました。テトラヒドロカンナビノール(THC)を投与された後、マウスの気道に起こったインフルエンザウイルス関連の炎症が軽減したことが分かりました。免疫系がウイルス感染に反応する方法を変えることにより、医療大麻はインフルエンザや風邪の緩和に関して新たなアプローチを提示します。

インフルエンザの時に体内で起こっていること

一般的に(英語で)フルーと呼ばれるインフルエンザは、非常に伝染しやすい呼吸器疾患です。インフルエンザAまたはB型ウイルスによって引き起こされ、上気道または下気道に広がります。咳、鼻づまりおよび鼻水、喉の痛み、筋肉痛、疲労、寒気などが症状の一部です。風邪はインフルエンザより穏やかな型で、通常は症状もより少なめです。インフルエンザ感染は、冬や春の初めなど寒くて雨の多い月によく起こります。風邪やインフルエンザは一般的に無害ですが、感染した人を衰弱させ、毎日の用事や仕事の達成を妨げがちです。

しかし、免疫系の炎症反応が大きくなり過ぎると、健康的な細胞も影響を受け、または損傷します。このために、ウイルスに感染した年配者や子供は危険な合併症を併発するリスクがあるのです。免疫系が過剰反応するのを防ぐために、人体は免疫系を抑えるのを助け、炎症のレベルを下げるエンドカンナビノイドを自然に放出します。鳥インフルエンザの事例などのように、より深刻なウイルス感染においては、エンドカンナビノイド・システムは免疫反応のバランスを確立しようと必死で活動します。これができないと特に肺における臓器不全の原因となります。このような場合、患者はウイルス感染によってではなく、制御不能な人体の炎症反応によって亡くなります。

従来インフルエンザは、合成の抗ウイルス薬で治療され、年に一度のインフルエンザワクチンで予防されます。
インフルエンザウイルスは変化しやすいため、インフルエンザワクチン(通常1年前に開発される)は次のインフルエンザ・シーズンに広がる新種または異種のウイルス株には有効ではない可能性があります。現在入手できる抗ウイルス薬は、1から数日内に症状を緩和し、症状の重度を軽減するように設計されています。

しかし抗ウイルス薬の摂取では、嘔吐、吐き気、下痢、頭痛、めまい、副鼻腔炎、気管支炎、耳感染および精神錯乱などの副作用を体験する可能性がわずかにあります。従来の薬およびワクチンはまた、自然ではない化学的構成成分を含有します。興味深いことに、日本でインフルエンザに感染し、ある種の抗ウイルス薬を摂取していた10代の患者が、自傷行為を行ったという報告がありました。これらの行動とウイルス株または薬との明白な関係は確立されませんでしたが、インフルエンザウイルスの合併症の可能性、および従来の薬・ワクチンに対するウイルス株の耐性は、治療に関する新たなアプローチの開発を必要とするのに十分です。

大麻による治療

特に大麻草は、インフルエンザウイルス感染者に対して健康上の利点を提示する、カンナビノイドおよびフラボノイドという天然分子を含有しています。CB1およびCB2というカンナビノイド受容体の特定により、人体内におけるカンナビノイドの潜在的な生理作用を理解しようという関心が増加しました。ある研究結果によると、CB1受容体が主に脳内に存在する一方で、CB2受容体は免疫細胞にあります。これはカンナビノイドが免疫系制御において役割を果たすことを示唆しています。

大麻草に含まれる500の天然化合物のうち、約85がカンナビノイドです。最も有名なカンナビノイドのうち2つがTHCおよびカンナビジオール(CBD)です。THCとCBDは、免疫細胞から分泌される炎症性タンパク質であるサイトカインの生成・放出の減少を引き起こすことで、免疫反応を最小限に抑えます。CBDは炎症性遺伝子を調整するNF-kB経路の活動レベルを低下させます。またCBDは、炎症性信号に効果的に拮抗する遺伝子発現に関する転写因子、STAT3の活動を促進します。

一方でTHCは、エンドカンナビノイド・システムを活性化するカンナビノイド受容体に結合します。さらに医療大麻には、エンドカンナビノイド・システムにおける炎症調整を促進する植物性カンナビノイドも含まれています。

カンナビノイドの他に、フラボノイドもまた抗炎症および抗ウイルス特性を持ち、抗酸化作用の宝庫でもあります。これらの天然化合物が、大麻の鮮やかな色彩の原因です。大麻草には約20種のフラボノイドが含まれており、その一部は他の植物には存在しません。

特に大麻は、子宮収縮を促進する環状脂肪酸化合物またはプロスタグランジンの炎症経路を抑制するカンフラビンA、B、Cを含みます。また、プロスタグランジンの生成を低下させ、ウイルス酵素の一部を抑制するフラボノイド・ケルセチンも含んでいるため、抗ウイルス効果をもたらします。

最後に、大麻草には、抗炎症および抗菌の薬効を持つことが報告されているルテオリンおよびオリエンチンも含まれています。この3つのフラボノイド種は、カンナビノイドの抗炎症作用と相乗効果を作り出します。抗炎症特性の他に、医療大麻は抗酸化作用、体内のビタミンC量の増加を提供し、時に血液細胞の裂傷を防ぎます。さらに、疲労や筋肉痛を緩和するのに役立つリラックス効果も提供します。

適切な大麻の使用法

従来の治療では、注射(ワクチン)、錠剤、シロップ、または吸入具(薬)が使用されています。しかし、ぜんそくなどの持病を持つ人にとっては、吸入具の選択は勧められません。同様に、ウイルス感染に対する免疫系の炎症反応を緩和するために大麻を摂取する際、喫煙によって行われるべきではありません。大麻の喫煙は薬効をもたらすことはできますが、呼吸器感染が起こっている時に喫煙すると肺への刺激を増加させ、咳が出たり、喉の痛みを悪化させたりする可能性があります。代わりに、食品やのど飴、お湯またはお茶に注入できるオイルなどの形で摂取することが推奨されます。

インフルエンザまたは風邪の症状を乗り切るため、医師は慣例的に、従来の抗ウイルスおよび抗炎症薬を飲み、たくさんの休養、十分な水分補給を取ることを勧め、1年に1度のワクチン接種を忘れないように個人的な注意をするでしょう。慣例的な治療が効かないことを知った人にとっては、医療大麻の使用が実行可能な選択肢となります。大麻草に含まれるカンナビノイドおよびフラボノイドが免疫系の炎症反応を抑え、合併症および毎年やってくるウイルス感染による困難のリスクを阻止できることは否定できないのです。