実は有効活用された歴史の方が長い大麻草という植物

大麻草はアサ科の一年草の植物であり、原産地域は中央アジア、カスピ海東部沿岸と言われている。大麻草は、地球上で最も生命力が強い植物であり、天然資源として世界の広い範囲で歴史的に重要な役割がある。大麻草は成熟すると3.7メートルから7メートルくらいまですくすくと成長することから、日本では繊維をとる植物の総称である「麻」の中でも大きい麻という意味で、大麻と呼ばれるようになったという説がある。

「たいま」「おおあさ」「ぬさ」「おおぬさ」などの読み方がある。茎の表皮を縦に剥がすと上質な繊維となり、種(ヘンプシード)は食料にし、種油は灯油などにも使用することができる。繊維を取った茎は「おがら」と呼ばれ、たき火や松明の燃料に使われ、精神活性化作用のある花穂や葉の部分は、祭事や薬用に用いられてきた。世界でも文化の差こそあるものの、20世紀に入るまで約3000年にわたって、世界の3分の2の地域で医薬品として珍重されてきた。寒暖差にも強く繁殖力が非常に高いため、世界中に繁殖している大麻草は、太古の昔から人類と深い関わりがあった有用な植物であった。

大麻草は上薬に分類されていた!?

太古の昔から人類は身の周りにある天然物の中に、病気を治したり、症状を緩和するものが見つかると、それを子孫に伝えてきた。文字を発明した段階で、人類はその知識を書き残し、より効果のある薬へと発達させることが可能になったのである。古代エジプトの象形文字の文章や、古代中国の甲骨文字の文書中に、すでに薬草の効果や薬の処方が記録されている。中国の薬物書に「神農本草経」がある。多くの薬草を自ら服用してその効能と毒性を確かめ、薬の知識を人々に伝えられている。

大麻草は「神農本草経」では「上薬(上品)」に分類されている。大麻草の花穂の部分を麻賁と言い、その薬効は、「諸臓器の慢性病や障害を治し、内臓機能の働きを良くし、血液循環を良くし体を温める。多く摂取すると鬼を見て狂ったように走り出す。長期に服用すると脳の働きは良くなり体は軽くなる。」と明記されている。

大麻を多く摂取すると精神変容作用(一般的に副作用)があることを指摘した上で、適用であれば体の働きを良くすると記載されている。また、大麻の種子(ヘンプシード)は、「体力や気力を高める。長期に服用すると健康維持を高め、不老長寿の効果がある」と記載されている。麻の種子・ヘンプシードは栄養価が高い食品であり、健康増進作用があることはよく知られています。ヘンプシードを日頃から摂取すと寿命を延ばせることが古代中国の時代に知られている。

日本でも大麻製剤が薬局などで販売されていた

戦前まで日本薬局でも大麻草が薬として使用されていることがわかっている。第二次世界大戦直後まで大麻製剤があり、「印度大麻草チンキ」や「印度大麻草エキス」などの商品名で薬局で販売されていた。チンキ剤とは、生薬をエタノールまたはエタノールと水の混液で浸出して製造された液剤です。1948年に大麻取締法が公布されてから大麻製剤の販売を禁止されています。過去は日本でも医薬品として厚生労働大臣が許可していた。

日本の伝統で活用されてきた大麻繊維

日本でも縄文時代の遺跡から大麻の痕跡が認められていることや、神社でお祓い使用する「幣」や鈴緒も大麻繊維であり、伊勢神宮などのお礼は「神宮大麻」とされている。

最近、伊勢神宮で使用されてる麻を三重県伊勢市内で産業用大麻を栽培し、祭事などに使用される大麻繊維を活用しようと試みがあったが、鳥取県で起きた大麻栽培免許者が産業用大麻を栽培しながら、違法な大麻を使用していたことが判明し、社会的なニュースになったことを受け、懸念材料が多いため三重県側が取り組み自体の取り辞めを決めたのである。この問題は様々な観点から注目を集めたが、個人的な見解を述べさせてもらうと自国の神事に活用するものを自国で栽培・管理することもできない国や県はどうなのか?という点だ。

確かに鳥取県で起きた事件が後を引いているのは理解できるが、神事に使用する大麻繊維を栽培することは伝統そのものであり、日本の文化であるという考えがある。現在は栃木県鹿沼市で産業用大麻を栽培しており、茎から繊維を取り、祭事や神事に活用している。しかし、過疎が進む栃木県鹿沼市でも産業用大麻を栽培する農家は10名以下であり、この現状では10年以内に他国からの輸入に頼る結果になることが予想される。

いま現在でも中国の産業用大麻繊維に頼っている部分は否めないが、国の神事で使用する大麻繊維を他国の輸入に頼ることは文化や伝統に対して匙を投げているようなものだ。日本人が故に今まで他国の色々な文化を取り入れたことは決して悪いことではないが、その一方で自国の伝統や文化など疎かにした結果ではないのだろうか。