ケヴィン・マッカーナン・インタビュー:大麻ゲノムの配列決定

大麻ゲノムの配列決定、ならびそれが大麻産業や「個別化医療」に対して意味することについて、ケヴィン・マッカーナンにインタビューしました。

プロジェクトCBD:本日は数年前、2011年だったと思いますが、大麻ゲノムまたは特定の大麻株の配列を決定したマサチューセッツ州に拠点を置く企業、メディシナル・ゲノミクスの主任技師ケヴィン・マッカーナンにお越しいただいています。

マッカーナン:こんにちは。

プロジェクトCBD:それは大麻業界全体にとって重大な暗示だったでしょう。この件についてお話を伺いたいと思います。まず「大麻ゲノムの配列決定」はどういう意味なのか教えてください。

マッカーナン:はい。あれは2011年のことで、私たちが配列決定に使用していた道具は非常に迅速に進化していましたが、それでもゲノム配列の極めて見取り図的なものは入手することができました。現在はすべての大麻サンプルにおいてそれぞれの記号を読み解いています。多くの人が、母ゲノムと父ゲノムという2つのゲノムがあることをご存知でしょう。大麻は二倍体であることが知られています。ですから大麻には、20種の染色体と父ゲノム、母ゲノムそれぞれから1種、また葉緑体やミトコンドリア・ゲノムもあります。私たちはそのすべての記号を読み解いて、カンナビノイド表現、テルペン表現、フラボノイド表現を予測できる可能性があるすべての遺伝子の地図を作成したいのです。それからヘンプ移れば、遺伝子の一部が種子のサイズやオイルや繊維を管理しているかもしれません。

ゲノム全体を解明するには、10億の塩基、10億の遺伝子コード記号があります。プロセスにおいては、私たちが持っている技術を用いても綺麗に整列した配列のメガ塩基対を400〜500程度しか読み解けませんでした。現在では、全ゲノムの約半分のみです。おそらくそうでしょう。植物ゲノムには多くの反復性があります。植物においては同一のコピーが全体に散らばっています。配列を決定すると最終的に落ち着きます。まるで大きなジグソーパズルをやっているかのようです。すべて同じように見えるカケラなのです。それがどこに当てはまるのか分からないこともあります。なので、データを全て合わせた時、配列の中にありながらも曖昧になってしまうことがあります。とはいえ、皆が注目するような一部の遺伝子の土台はよく分かっています。例えば、関心が高いTHCシンターゼは非常に優れた配列が分かっていますし、CBDAシンターゼやその他カンナビノイドを管理する遺伝子の一部に関してもそうです。

プロジェクトCBD:シンターゼというと、CBDになる前の前駆体遺伝子のようなものですか、それともCBDAやTHCAを生成する酵素をコード化する遺伝子ですか?

マッカーナン:タンパク質に関するDNAコードに関わる酵素のことです。そのタンパク質は前駆体分子をTHCなどに混ぜ入れられる酵素に盛り込まれます。もう一つCBDAシンターゼと呼ばれる遺伝子がありますが、Aとは酸性のことで植物内に含まれています。それはカンナビゲロール前駆体で、カンナビゲロールに注目するとこれは環状構造になっています。またロングテール型で、THCを形成するさらに2つの循環群、またはCBDを形成する1つの循環群にまとめられます。さらにこの前駆体を2つの異なる方法で組むさらに2つの異なる遺伝子があります。これらは前駆体を巡って競争をしているのです。

ですから、私たちより以前にこれらの遺伝子におけるDNA変異体があると実証する作業を実際行ってきた人々は、それがどれくらいTHCを生成するかに関する予測力がありました。遺伝子の重要部位で起こる変異を示す出版物がいくつかあります。またこれは、酵素の触媒コアを意味する専門用語でFAD結合領域と呼ばれており、いくつかの分子を組んでいます。DNA変異体があると、動きが鈍くなります。時には全く作用しないこともあります。したがって私たちは、遺伝子のどこに変異体があるかによってTHCが生成される量が決まる加減抵抗器のようなものだと考えています。これをより深く理解できるようになれば、私たちは成長を観察しなくても幼苗期で植物の化学タイプを予測できるようになります。

環境も必ずこの関わり合いに影響しますが、私たちは植物の能力を理解するために遺伝的特徴の確かな図を得ようとしているだけです。その大麻がCBDを多量に生成すると分かれば、それを別の栽培室に移したり、CBDを取り込みたい別の何か交配したりと他の株とは違うことをしたいと考えるかもしれません。またそれが強力なTHC株になることが分かれば、また違う方向性を考えるでしょう。

プロジェクトCBD:今、品種改良家や、特定の薬効を得るために特定の株を調整しようとする人々など、栽培者に向けた遺伝科学について触れましたね。それについて詳しく教えてください。この類の知識はどのように栽培者や大麻産業全体に適用できるでしょうか?

マッカーナン:この知識が他の市場で足がかりを見つけたのは、「マーカー利用選抜」として知られるプロセスに関するものです。ゲノム全体を理解していないので、遺伝子をいじくり回すよりもこういったタイプの交配の方が好きです。ゲノムに関しては今、どこまでゲノムについて知れるかによって少し傲慢になっています。しかし、人々が交配における配列情報に関して行う傾向にあることは、DNAマーカーを使用して形質を追跡することです。単なる測定方法なのです。自分たちが栽培する化学タイプを測定する代わりに。もし最初にはができる兆候がある時にどんな化学タイプか測定したい場合、それが分かる情報があります。それで例えば、どんなテルペン・プロフィールになるか分かるのです。

現時点でそれができるマーカーはありませんが、これが他の非常に高価な作物に対して行われたことであり、これがゲノム内の異なる一文字の変化を10万〜100万程度理解すること、それをすべての植物において追跡することです。人々はこれらを追跡するための代用品として使用します。例えばここの変化はテルピノレンを追跡する傾向にあり、こっちはβカリオフェレンを追跡する傾向にあり、またこっちはピネンという風に。これらのマーカーは大麻がミルセンの優勢なインディカになるか、ピネンが豊富になるか、ジャック・ヘラーっぽい株になるかを予測できるのです。

これらのマーカーは穴あけ器のように考えています。必要なのは、葉に穴を開け、DNAを30ナノグラム得るだけです。DNA1グラムの300億個目に欲しい情報を得られるでしょう。そしてそれは10万から100万の株上の異なるデータ点となるでしょう。最終的には、このパターンは系統樹のこの部位にある植物からのものだからこの種のテルペンを生成する傾向にある、というように相互関係を示すに役立つデータベースができるでしょう。そして私たちはこれらの一塩基多型を追跡します。これらは単一ヌクレオチド多型と呼ばれます。一塩基多型と呼ばれるものに関する専門用語です。それがあれば、より詳細な情報を得た上での決断ができます。例えばカンナビゲロールとカンナビクロメンを生成する素晴らしい大麻があって、これにリモネンを追加したい時、出来るだけ早くそれを実現するために交配させます。ですからこれは品種改良の誘導に役立つツールになると思います。この「マーカー利用選抜」と呼ばれるプロセスは単に、品種改良を誘導するための写真撮影ではない測定法の聞こえの良い専門用語なだけです。

プロジェクト CBD:メディシナル・ゲノミクス社は複数の異なる株、多くのサンプルの遺伝子の配列を決定したんですよね?

マッカーナン:その通りです。

プロジェクトCBD:多様性またはその欠如の点でどんなことがわかりましたか?大麻禁止という状況にはどのような影響を受けましたか?

マッカーナン:素晴らしい質問です。高濃度THC株に向けた遺伝的ボトルネッの兆しがあります。しかしそれと同時に膨大な数の近親交配も行われています。薬物タイプの大麻に見られる変異体とヘンプ草などあまり禁止されていない(ヘンプ草は登録されており、一部の国は合法的に栽培するためのプロセスにあります)タイプのものと比較した場合、薬物タイプの方がはるか多くの遺伝的多様性を持つことが分かるでしょう。薬物タイプの方がより多くのTHCが含まれるかもしれませんが、こちらの方がさまざまなテルペンを見つけるための、または異なる形質を交配させるための交換が多いでしょう。私はそれが極めて興味深いことだといつも思います。なぜなら、より公正明大で登録制や特許制度を受けているタイプの方が、薬物タイプよりも遺伝的多様性が少ないからです。

プロジェクトCBD:大麻の医療用途に対する影響について話しましょう。現在、個別化医療は大麻治療界にける流行語になっています。個別化医療が患者にとって現場で意味することに関して、患者はどの株が自分にとって最適か、最も役立つCBDとTHCの割合はどれか手探りで探しています。これは必ず、個人がどのように特定の株、または大麻全般と関係するかによって決まります。すべて個人に帰するのです。とはいえ、あなたが遺伝子科学に関しておっしゃっていることは、個別化医療のアイデアを全く異なるレベルまで引き上げてくれると思います。またあなたの姉妹企業コータジェンは人間の方のゲノムに関して調べています。この2つはどのようにどのように歩み寄りますか?またこの2つが個別化大麻医療にとって意味することは何でしょうか?

マッカーナン:私はこのテーマに関して非常に楽しみにしています。なぜなら私たちの事業の裏側で、私たちは さまざまな薬剤の投与量を決めるのに役立つ変異体を見つけようと1ヶ月に700〜800名の患者の配列を決定しています。すなわち時には、CBDのみを求めた方が有益であることを示すものもあります。典型的な例はナトリウム・チャネル1変異体またはドラベ症候群です。これらの患者群は非常に反応がいいです。これはインターネット上にある事例的なものだけでなく、FDAを元にした臨床試験でも否定できません。FDAが検査しているエピディオレックス(GWファーマシューティカルズ社)でもまさに好反応が得られ得ています。

プロジェクトCBD:今、ドラベ症候群の子供に有益なCBDまたはCBDが豊富な製品についてお話しなさいましたが、他にもさまざまなタイプのてんかんがあります。

マッカーナン:私たちはてんかん患者に対して500の遺伝子を配列することが多いです。なぜならこれはロングテール型ですし、個別化医療の学びだからです。FDAの学びでもあります。FDAは個別化医療のために設計されていないからです。FDAは万人に効く治療薬のために設計されています。アスピリンなどが全ての人に同じ効果をもたらすようなことです。これはもう過去のことです。こういった薬はもうわずかしかありません。薬剤がFDAで認可されず、費用が高くなっている理由は、FDAが FDAで通過させるために超大型新薬モデルを適用しようとしているからだというのは明らかです。がんやその他の分野で分かることは、人間のゲノムはそれぞれゲノム内の400万もの変異体によって異なるということです。ですから慢性痛と表現するものは、全く異なる分子メカニズムかもしれないのです。私たちはヒトゲノムを調べ配列する際に、そのことを理解し始めています。この人はTRP受容体がオフになっているから慢性痛がある、こちらの人はTRAP1変異体があるから慢性痛がある、という風に。原因が違えば、投薬メカニズムも異なる可能性があります。異なるカンナビノイドが必要になる場合もあるでしょう。

ですから私はこの2つの分野を融合することに非常に興奮しています。なぜなら国内で個別化医療よりも急速に成長した唯一の市場は大麻だからです。大麻市場は、ある物質が高濃度の大麻を栽培できる一連の調合薬に関する最大のオープン・ソースになりつつあります。大麻薬が医師にとって店頭で入手できるようになれば、完全に医療における革命だと思います。そして私たちが適切な患者変異体と適切なカンナビノイドやテルペン特性を並べることができれば、医療費は下がるでしょう。これはほとんど技術的リープフロッギングな出来事と言えると思います。2つの異なる技術が融合すれば、完璧な大波を作れるでしょう。

プロジェクトCBD:2つの異なる技術というのは?

マッカーナン:これは個別化医療の洞察力だと思います。患者のゲノムをシリ、これら大麻の完全なカンナビノイド・プロフィールを知るという。私がカンナビノイドに焦点を当て、またそればかり考えている理由は、これが先見の明がないことではないからです! これらの全体的なポートフォリオがあり、全て想像しうる最高の工場で栽培されています。これらの遺伝子を引き抜き、イーストに乗せ、植物の成長に追いつけるかについては大きな関心があります。

プロジェクトCBD:しかしそれはあなたの焦点ではないですよね。

マッカーナン:いいえ。こっちの方がより難しいでしょう。私たちは皆この植物を育てるインフラを持っています。製薬業界では、植物を医薬品工場にするために大麻のような植物への経路を見つけたいのです。私たちには、成熟し、多くの薬効を生み出す大麻の栽培科学を知っています。私は現在、完璧に平均化されていく側面に関しては楽観的です。しかし2つを融合させるとなると、一方の市場には打撃が起こるということについてはいつも懸念しています。例えば電気スクーターやテスラ社の自動車などを走らせることのできる新しいバッテリーが出てきたり、太陽光パネル技術などもあります。これらを組み合わせたとき、第三世界は今、通信サービスをすっ飛ばしていルノです。暗号通貨やM-Pesaがあるので中央銀行を作らない、ということがケニヤでは起こっています。

同じことがFDAと医療においても起こると思います。FDAは医療を行う一つの形式ですが、現在起こっている革新に対応できません。今まさに医療で起こっている革新は、適切な患者にカンナビノイドを提供しようとするレベルにあります。このモデルはFDAよりもはるかに民主的で、より個人主義的で、患者一人一人が固有の存在であることに焦点を当て、また敬意を払っています。それが医療システムにはないのです。医療システムは非常に万人向けになっています。

プロジェクトCBD:あなたがおっしゃっていることはある意味、「予期できない結末」が除外されています。ある遺伝子構成を持つ人と薬があった場合、てんかんの子供にCBDを与えて、一部の子供には素晴らしく効果的で、もう一方の子供にはあまり効かないのか説明できるのですか?これが前もって決定できるようになるのでしょうか?

マッカーナン:私たちはそれに関する信号を見つけ始めています。これは必ずしもFDAやGWファーマ社との組織的な取り組みではありません。私たちはコータジェン社で数多くの患者のゲノムを配列しており、それらの臨床試験に参加している患者を多く見ているので、彼らが教えてくれるのです。患者のデータを見て応答者と非応答者を比較したとき、パターンがあるのが分かります。応答者に変異体があるというパターンが見え始めています。これまでに4種の特定の変異体があるのを見てきました。興味深いことに、これらの変異体はCYP2C9遺伝子として知られる薬物代謝遺伝子の中にあります。この遺伝子はCBDの代謝にも関わっています。予測力を示すその他3つに電子は、アナンダミドが相互作用することが分かっているナトリウム・チャネル遺伝子です。つまり理にかなう命題があります。 それが大事な理由は、CBDが一部の患者において効かないからです。2〜4000%を摂取すると、15%の子供は悪化します。ドラベ症候群のような発作を持つ患者が悪化すると、それは極めて悪い状態です。患者は挿管され、緊急治療室に運び込まれることになります。 てんかん重積状態になることもあります。事例を聞いていると多くの場合、CBDからTHCまたはTHCAに切り替えると状態は改善します。

発作を引き起こすメカニズムは複数あります。遺伝子レベルからこれらのメカニズムを理解するとき、患者にカンナビノイドを提供することに関して能力を試されることになります。私たちは現段階ではまだ、完璧にこれらを合わせる方法を知りません。これは構想の類であり、私たちの目標です。しかし、私たちがいずれ目にするようになるのは、パズルは一つ一つゆっくりとこれらの変異体にはまり始めることです。この患者群が実際に必要とするのはTHCAかもしれません。THCAは全く異なる分子経路を持っているのです。

プロジェクトCBD:それは興味深いですね。おそらくは、てんかんだけでなく他の疾患にも適用できそうです。

マッカーナン:そう思います。その一つは慢性痛です。私たちは慢性痛分野に関する論文を発表しました。慢性痛患者の一部は抗酸化剤に非常によく反応します。そして世界で最高の脂溶性の抗酸化剤の一つはカンナビノイドであることは周知の通りです。ですから、これらの患者はたまたまそうだったわけではありません。しかし一部の患者がそれほど脂溶性の抗酸化剤ではないN-アセチルシステインに反応するという事実もあるので、この点では改善が必要です。この変異体は人口の1〜2%に存在するので、私たちはとても興奮しています。TRAP1として知られる遺伝子に含まれます。TRAP1はがんと関係がありますが、これまで慢性痛や慢性疲労に結び付けられてきませんでした。1000人の患者を診て、慢性痛および慢性疲労を持つ全ての患者をまとめてみたら、TRAP1を示す大きなサインが浮かび上がったのです。この遺伝子が壊れると、仮定では多くの活性酵素種(ROS)を生み出されます。体はエネルギーによって激しく動き、エネルギー消費による副産物を生み出しますが、実はこれは機能的ではありません。これが痛みや疲労を作り出していると私たちは考えています。この酵素が壊れることで、全てのSTP(アデノシン三リン酸)を使い果たしてしまうという考えです。

私たちはこの仮説をオピオイド問題にも転換できるよう願っています。慢性痛患者はオピオイドを処方されているだけで、おそらくROS生成という問題の核に対処していません。そこから来る痛みを鈍化させているだけです。その結果どうなるか、私たちはみてきました。結果として今、完全なオピオイド中毒のまん延が起こっているのです。

ゲノム配列決定の一部が、医師にとっての主観的な問題が何か具体化してくれることを願っています。患者が来て痛みを訴えたら、医師はどれくらいの投与量を与えるのか、慢性的なのかどうか、オピオイドによって胃腸障害が起こるかどうか等を慎重に監視しなければなりません。しかし、これらの患者は抗酸化剤に反応する壊れた遺伝子を持っていることを示す分子マーカーがあったら、「あなたの治療にはカンナビノイドを考慮すべきです」と対処法を変えることができます。私は同じことが自閉症やミトコンドリア病にも起こることを期待しています。プロジェクトCBDのウェブサイトで確認できるすべての疾患に関係しています。これらの疾患はおそらくすべて、CBDが効果をもたらすことに関して、異なる分子メカニズムを持っているはずです。

プロジェクトCBD:メディシナル・ゲノミクス社は流れを変えますね。素晴らしいお仕事を為さっています。本日はお越しいただき、ありがとうございました。

マッカーナン:ありがとうございました。

参考:ProjectCBD