内因性カンナビノイドの最新研究調査
オーストリアのウイーン医科大学による最新の研究報告で、内因性カンナビノイドが乳児の膵臓に影響を及ぼしていることが発表されました。
内因性カンナビノイドとは、ヒトおよびほとんどの哺乳類の生体内で生成されるカンナビノイドです。ちなみに、CBDオイルに見られるカンナビノイドは植物性カンナビノイドであり、生体内のカンナビノイドが内因性であるならば、さしずめCBDが含有するのは外因性カンナビノイドと呼べます。
さて、今回のニュースは”Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)”(合衆国科学アカデミー論文集)に掲載された調査報告を取り上げることにします。
胎児の内臓発達過程に関与
ポーランド、アメリカ、イタリア、そしてスウェーデンから研究者を招き、チームが組まれた。率いるのはウイーンの脳研究センターのティボー・ハルカニー。まだ生まれていない胎児の膵臓の発達過程において、内因性カンナビノイドが直接的に関与していることを裏付けることに成功した。
この内因性伝達物質は、内因性カンナビノイド・システムを構成する一部であり、胎児の各器官の成長プロセスにおいて、分子を決定する要素であることが認識されている。
内因性カンナビノイドレベルと糖処理の関係性
仮に内因性カンナビノイドのバランスが崩れると、子供への影響として、ブドウ糖の処理に困難が生じることが予測される。そうなると、糖尿病のリスクが大きくなる恐れが出るのだ。
これは膵臓の発達過程において、内因性カンナビノイドがランゲルハンス島の構成と大きさに影響を与えることが理由である。肥大したランゲルハンス島は、インスリンとグルカゴンを生産するのだ。
胎児がこのようなリスクを負わないために母親ができることとして、妊婦が不飽和オメガ3脂肪酸を摂ることが推奨される。魚の脂肪に多く見られるオメガ3を積極的に摂取することで、胎児の内因性カンナビノイドのレベルを下げるのに期待が持てる。
膵臓の構成分子を決定する内因性カンナビノイド
内因性カンナビノイド・システムの構成要素である伝達物質が、胎児の成長過程で、器官の分子内容を決定する要素となることがわかったのである。
内因性カンナビノイドのバランスが崩れると、ブドウ糖の処理に困難が生じる可能性が生まれ、糖尿病のリスクが大きくなるという。
その理由は、膵臓の発達段階で、内因性カンナビノイドがランゲルハンス島の発達にも作用するからだ。ランゲルハンス島が肥大化すれば、インスリンとグルカゴンが分泌されてしまう。
こうした胎児への影響を考慮し、妊婦にオメガ3を積極的に摂取することを推奨した。
ランゲルハンス島の肥大が糖尿病を誘発
カンナビノイドが発見されて20年以上。ことに生体が自然に生成する内因性カンナビノイドは、ヒトや動物の健康を維持する優秀な成分であると認識されてきた。
中枢神経系の発達や、痛みへの認識、食欲、免疫反応、エネルギー代謝など、生理機能の多くを制御することができるからである。
こうした従来の発見に加え、今回、カンナビノイドは胎児の膵臓を「プログラムする」ために活動することもわかった。
研究報告の著述を手掛けた一人であるカタジナ・マレンシク氏が記している。
「今回の研究調査では、カンナビノイドの信号伝達を管理する分子が加わることで、自由にランゲルハンス島の構成細胞の位置をコントロールすることができた。」
新薬開発に可能性
今回、研究を行ったチームは、ウイーンのメディカル・スクールMedUniで構成され、臨床研究を行っている。
フォーカスする分野は、医学画像、がん研究(腫瘍学)、心血管医療、医学神経科学そして免疫学などである。医学神経科学を研究するチームは、センターで脳研究を行っている。
チームリーダーのハルカニー博士は、今回の研究結果に喜びを表している。
「今回の発見によって、発達不全な膵臓の治療にも可能性が生まれましたし、そのための新薬開発にも期待が持てるでしょう」