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カンナビノイドが神経細胞に効果的 PART1

      2017/11/10

神経組織は神経細胞とグリア細胞から構成される

脳や脊髄など神経組織には大きく分けて2種類の細胞が含まれています。神経細胞(ニューロン)とそれを支える神経膠細胞(グリア細胞)です。その他に血管を構成する細胞もあります。

神経細胞は感覚や運動などの情報を処理する主体で、その神経細胞を支え栄養を与えるのがグリア細胞です。グリア細胞は主に3種類あり、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリアと呼ばれています。

アストロサイト(星状膠細胞)は、多数の突起があり星のように見えるところからこの名があります。神経組織の形態維持、血液脳関門、神経伝達物質の輸送などの役割を担っています。オリゴデンドロサイト(乏突起膠細胞)は神経細胞の軸索に巻き付いて髄鞘の形成や栄養補給の機能を持っています。

神経細胞とアストロサイトとオリゴデンドロサイトは外胚葉(胎児発生初期の胚の外表面の細胞層で、神経系や表皮や感覚器などに発達する)に由来するのに対し、ミクログリア(小膠細胞)だけは骨髄系の白血球のマクロファージに由来します。

ミクログリアは脳内で何か異常が起これば直ちにその部位に移動し、病原体などの敵だと認識すれば排除しようと戦い、細胞が死んでしまえばそれを食べて組織をきれいに保つ働きをします。

ミクログリアは病原体などの敵と戦うときに様々な毒性物質(活性酸素や炎症性サイトカイン)を出しますが、うまく制御できないとそれが味方の細胞(特に健康な神経細胞)にも作用して、余計に神経細胞を殺してしまうことになります。つまり、ミクログリアはマクロファージと同様に、傷害を受けた神経組織を修復する目的で活性化されるのですが、このミクログリアの活性化が何らかの原因で慢性化すると神経細胞の死滅が促進されることになります。様々な神経変性疾患で、ミクログリアの過剰な活性化が起こっていることが明らかになっています。

神経細胞の保護作用とミクログリアの活性制御にカンナビノイド受容体のCB1とCB2が連携して動くことが明らかになっています。すなわち、神経細胞(ニューロン)に発現しているCB1受容体は興奮性シグナルを抑制し神経細胞死を抑制する働きがあります。ミクログリアのような炎症細胞にはCB2受容体が発現しており、CB2受容体の活性化は炎症細胞の活性を制御して、抗症作用を示します。

カンナビジオールは脳虚血による神経細胞死を抑制する

成人男性の脳の重さは 1.2から1.5kg 程度で体重の約2%しかありませんが、酸素の消費量は全身の20%程度、グルコース(ブドウ糖)の消費量は全身の25%程度と、重量の割に酸素とグルコースの消費が高い臓器です。したがって、酸素やグルコースの供給が減ると神経細胞は機能が低下し、高度になると神経細胞は死滅します。

例えば、一酸化炭素中毒は酸素を運ぶヘモグロビンに一酸化炭素が結合して、酸素の運搬を阻害することによる脳障害です。脳梗塞では脳血管が閉塞することによって神経細胞が死滅していきます。つまり、脳組織の低酸素や虚血は神経細胞を死滅させる最も一般的な原因となっています。

神経組織が虚血になってグルコースや酸素の供給が止まると、グリア細胞のアストロサイトに乳酸が蓄積して酸性になり、興奮性アミノ酸のグルタミン酸を放出します。グルタミン酸はグルタミン酸受容体を介して興奮性の刺激を伝達する物質ですが、細胞外に放出されると神経細胞に非常に危険な毒性を示します。グルタミン酸受容体が活性化されると細胞内のカルシウム濃度が上昇し、細胞死が誘導されます。

大麻成分のカンナビジオールはグリア細胞の活性化を制御し、グルタミン酸による神経細胞のダメージを抑制するという作用が報告されています。

カンナビジオールはカンナビノイド受容体のCB1とCB2には作用しません。カンナビジオールが作用する受容体やタンパク質が多数報告されていますが、その中には細胞内への電解質などの物質の出入りを調節する様々な種類のイオンチャネルやトランスポーター、細胞のシグナル伝達に関与する受容体や酸素などが含まれ、これらの物質を活性化したり抑制する作用が報告されています。

遺伝子発現にも作用します。例えば、炎症反応の過程で活性化される転写因子(MF-κB)の活性を阻害して、一酸化炭素の産生を抑制する効果が報告されています。細胞内の抗酸化酵素や解毒酵素の発現量を増やす作用も報告されています。

このように、抗酸化作用、抗炎症作用。グリア細胞の活性化の抑制作用、グルタミン酸の代謝の調節など多彩な作用によって神経細胞をダメージから保護すると考えられています。

その結果、カンナビジオールは脳卒中だけでなく、筋委縮性側索硬化症や多発性硬化症やハンチントン病やパーキンソン病など、様々な神経変性疾患の治療にも効果が期待されています。

神経変性疾患とは

神経変性疾患というのは、中枢神経系(脳や脊髄)の神経細胞が死滅していく病気です。多くは原因不明で、有効な治療法が無いので「神経難病」と呼ばれている疾患群です。どの部位の神経細胞が死滅するかで、症状が違っていきます。

筋肉運動を起こす指令は、中枢神経系(脳や脊髄)から延びた神経線維を伝って筋肉まで届きます。したがって、神経細胞が死んだり、神経線維が途中で切れると、脳からの命令が筋肉に伝わらないので、麻痺が生じます。

筋委縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経(大脳からの運動の命令を筋肉まで伝える神経)が選択的に障害される神経変性疾患です。全身の筋肉を動かしにくくなり、筋肉が痩せていきます。喉の筋の力が入らなくなると声が出しにくくなり、水や食べ物の飲み込みもできなくなります。最後は呼吸の筋肉も動かなくなって人工呼吸器が必要になります。

運動神経以外(感覚神経や自律神経、脳の高度な機能)はほとんど障害されないため、体の感覚、視力や張力、内臓機能や思考力などは全て正常に保たれます。

ALSのマウスの実験モデルを用いた研究では、カンナビノイドの投与によって病気の進行が遅らせることができ、生存期間を延ばす効果が報告されています。米国の報告では、ALS患者の10%くらいが症状の緩和の目的で大麻の喫煙や大麻茶の飲用を行っているという報告があります。

運動神経の経路は、脳から筋肉へ直接命令を伝える経路(錐体路という)の他に、運動が円滑に行えるよう、無意識のうちに筋肉の緊張を調節する経路(錐体外路)もあります。

筋緊張を調節したり運動が円滑に行えるよう調節しているのは、大脳の底辺部にある大脳基底核や小脳です。これらの部位の神経細胞が死滅すると、麻痺は無くても運動が円滑に行えなくなります。

医療大麻が、筋委縮性側索硬化症や多発性硬化症やパーキンソン病やハンチントン病など多くの神経変性疾患に効果があることを示す臨床実験の結果が増えています。

多発性硬化症は中枢神経の脱髄によって発症する

多発性硬化症は、脳や脊髄などの中枢神経が炎症によって損傷し、手足の麻痺や視力の低下などの重篤な症状が現れる難病です。

脳や脊髄の神経細胞には軸索と呼ばれる突起があり、この突起が他の神経細胞につながって神経細胞間の情報伝達を行っています。軸索には、それを包む鞘のようなものがあり、「髄鞘」と呼ばれます。髄鞘は、神経細胞の突起(軸索)を保護したり、電気的な情報の伝達をスムーズに行うような働きをしています。家庭の電線がショートしないようにビニールのカバーからなる絶縁体によって被われているようなイメージです。

この髄鞘が、炎症などによって壊されることを脱髄と言い、脱髄が生じると神経細胞の情報伝達がうまくいかず、運動失調やしびれや痛みを引き起します。

多発性硬化症は、脳や脊髄などの中枢神経に脱髄をきたす疾患で、「脳や脊髄に多数の硬い病変が見つかる病気」という意味から「多発性硬化症」という病名になっています。

脱髄が生じる詳しいメカニズムはまだわかっていませんが、自己免疫機序が想定されています。自己免疫機序というのは、自分の免疫細胞が自分の細胞を攻撃することです。リンパ球などの免疫細胞は、細菌やウイルスなどの外敵から守る働きがありますが、この免疫細胞が自分の細胞成分を異物と勘違いして攻撃するのが自己免疫疾患です。多発性硬化症は、神経の髄鞘の成分に対してリンパ球が攻撃する自己免疫疾患の一種だと考えられています。

多発性硬化症は欧米の白人に多く、北ヨーロッパでは人口10万人当たり50人から100人くらいの患者さんがいます。

日本では欧米より少なく、人口10万人当たり8~9人程度と考えられており、1万人以上の患者さんがいます。発症する年齢は若年成人と言われる20~30代が多く、また男性に比べて女性に多く発症します。多発性硬化症は、厚生労働省の特定疾患(いわゆる神経難病)に指定されています。

症状は損傷を受ける神経領域の部位によって様々に変化しますが、よく見られる症状として、耐えがたい疼痛や痙縮や膀胱機能の障害があります。痙縮というのは、筋肉の緊張が更新した状態で、手足が突っ張ったような症状を呈します。

治療としては、自己免疫機序を抑制するために副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤などが使用されます。症状を和らげる目的では、筋肉のけいれんを抑制する抗てんかん薬や鎮静剤、痛みを軽減するモルヒネなどが使用されています。しかし、いずれも効果は弱く、副作用が強いのが問題になっています。

大麻は多発性硬化症の痙縮を抑制する

多発性硬化症の疼痛と筋肉緊張に大麻が有効であることが1980年代ころから経験的に知られるようになりました。すなわち、米国や英国において、多発性硬化症の患者さんたちが大麻を使った非合法の自己治療を行い、筋けいれんや痛みが軽減し、膀胱の機能が向上することが知られるようになったのです。その後、大麻やその成分のカンナビノイドを使った臨床試験が行われ、有効性を示す結果が得られています。

カンナビノイド受容体タイプ1(CBD1)は筋機能の制御に関わる大脳基底核と小脳に特に高い密度で分布しています。このCB1受容体が活性化すると運動を抑制することが知られています。

CB1を活性化する大麻やその成分のΔ9-デトラヒドロカンナビジオール(THC)の副作用に「カタレプシー(強硬症)」があります。カタレプシーというのは、意識はあるものの、人間や動物がしばらくの間、不動の状態になる症状です。動物に大麻を過剰に投与すると、動かなくなり、不自然な形に固まってしまいます。

この作用が、多発性硬化症の筋肉緊張による痙縮の軽減に有効に作用することになります。正常な人には都合の悪い症状を引き起す効果を、病気の治療法として利用できるということです。

米国では現在、医療大麻の使用を許可している州のほとんどが多発性硬化症を適用疾患に含めています。多発性硬化症の他にも脊髄損傷や脳性麻痺など、筋けいれんを伴う疾患があります。このような疾患にも大麻の効果が報告されています。多発性硬化症の症状の軽減に医療大麻が有効であることは多くの臨床試験で示されています。

ナビキシモルス(Nabiximols)はΔ9-デトラヒドロカンナビノール(THC)とカンナビジオール(CBD)をほぼ同量含む大麻抽出エキスを製剤化したもので、スプレーで口腔内粘膜から体内に取り込みます。1回のスプレー(0.1ml)中にTHCが2.7mg、CBDが2.5mg含まれています。商品名サティベックス(Sativex)として多くの国で許可されています。 
 
ナビキシモルスは多発性硬化症の痙縮、疼痛、過活動膀胱などの症状の改善の目的で使用され、カナダではがん性疼痛の緩和でも使用が許可されています。THCやCBDやその他の成分の相乗効果によって、疼痛と痙縮を軽減すると考えられています。

他の治療で十分に改善しない疼痛や痙縮に対して、ナビキシモルスを追加することによって症状が改善することが確かめられています。副作用も軽微であると報告されています。

ナビキシモルス(サティベックス)を長期間(平均3.6年間)服用中の36人の多発性硬化症患者をランダムに2群に分け、一方の群にはナビキシモルスの代わりにプラセボ(偽薬)を投与し、もう一方の群はナビキシモルスを継続して4週間後の変化を二重盲検で比較した臨床試験が行われています。

プラセボに変更した群は痙縮が悪化することが確かめられました。また。ナビキシモルスを中止することによる離脱症状は見られていません。

つまり、大麻の抽出エキス製剤であるナビキシモルスは多発性硬化症の症状に有効で、副作用は極めて少なく、中断しても離脱症状は見られないことが臨床試験で証明されています。長期服用中の患者が急に大麻製剤を中止しても離脱症状(禁断症状)が見られないことは、大麻には身体依存がないことを意味しています。

大麻は多発性硬化症の痛みを軽減する

多発性硬化症における神経障害性疼痛に対する医療大麻の有効性と安全性を検討したランダム化比較試験が複数報告されています。そして、オピオイド系鎮痛薬が効かない患者にも、医療大麻で疼痛軽減効果が現われることが報告されています。

なぜ、多発性硬化症の痛みに大麻が効くかという作用メカニズムはまだ十分に分かっていません。多発性硬化症は免疫異常によって神経細胞の脱髄が起こっていますが、大麻には抗炎症作用や免疫調節作用があり、脱髄自体を抑制する作用も指摘されています。

すなわち、カンナビノイド受容体タイプ2(CB2)は炎症細胞や免疫細胞の働きを抑制するので、自己免疫機序での症状の進行を抑える効果があります。さらに、カンナビノイドやその他の大麻成分にはダメージを受けた髄鞘の修復を促進する効果も報告されています。つまり、単なる鎮痛作用だけでなく、痛みを引き起す原因を抑え、傷を修復させる効果も関与しているようです。

大麻成分の免疫系や神経系に対する作用は極めて複雑で、まだ十分に解明されていません。内因性カンナビノイドシステムは、内因性オピオイド系やシグナル伝達系とクロストーク(個々のシグナル伝達系のネットワークが干渉する状態)することが明らかになっています。また、カンナビノイド成分だけでなく、その他の成分(テルペン類など)の薬効や相互作用も報告されています。

その作用メカニズムの解明は複雑すぎてまだ不明でも、臨床的に効果が証明されていることが重要です。多発性硬化症のような難病に苦しむ患者さんの症状緩和に医療大麻が有望であることは、多くの臨床研究で示されています。

銀座東京クリニック

出典:医療大麻の真実

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