医療大麻の使用を禁止する行為自体はアメリカ憲法違反?

2015年の段階で23州とワシントンD.Cでは医療大麻の使用が許可になっています。しかし、アメリカ合衆国の連邦法では、いまでも大麻の所持も医療目的での使用も認めていません。米国の規制物質法では、大麻はヘロインと同じスケジュールⅠに分類されているからです。スケジュールⅠは「濫用の危険があり、医学的用途がない物質」です。どのような理由でも使用できない物質に分類されているのです。

しかし、州法で使用が認められた州では、「医師による適切な医療大麻の使用を麻薬取締局など連邦政府は禁止できない」、「禁止する行為は憲法違反」という判決が出ており、医療大麻の使用が可能になっています。

1996年にカリフォルニア州で住民投票によって、州内で医師が医療目的で大麻を使用することを許可する法案(医療大麻に関する新法案)が可決された直後から、大統領や連邦厚生省長官を含む連邦政府の職員が直ぐさま行動を開始し、医療大麻の処方を妨害しようとしました。

例えば、司法長官ジャネット・リノ(Janet Reno)は、どの州の医師でも大麻を処方した医師は、処方箋を発行する権利を剥奪される可能性があり、メディケアとメディケイドからの償還を受けることができなくなり、連邦犯罪で起訴されることもあると発表し、医師に大麻の処方を行わないように圧力をかけています。
(注:メディケアとメディケイドは米国の公的医療保険制度)

このような連邦政府の行動に対して、臨床医学で最もレベルの高い学術雑誌のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの編集長だったジェローム・カシラー博士は、『連邦同局は重病の患者にマリファナの医療目的での使用を禁止する政策を撤廃し、マリファナの使用の判断を医師に任せるべきである。』『連邦政府はマリファナの薬物分類をスケジュールⅠ(医学的用途がなく、濫用の危険がある)からスケジュールⅡ(依存性の可能性はあるが医学的用途がある)に変更するべきである』と1997年に提言しています。

くした医学権威の意見をも無視して、連邦政府は大麻をスケジュールⅠからⅡへ変更しようとせず、大麻の所持や販売も禁止しており、医療大麻を処方する医師への弾圧は長く続きました。

医療大麻の使用を禁止しようとする連邦政府の行為に対して医師たちは訴訟を起こすことで対抗しました。2002年には、第9巡回区控訴裁判所は医師と患者が大麻の医学的有用性を話し合うことに対して連邦政府が医師を処罰することは米国憲法修正第一条に違反するという判決を出しました。

米国憲法修正第一条は信教・言論・報道などの基本的人権を侵害する法律を制定してはいけないという米国憲法の条文です。第9巡回区控訴裁判所は米国における11区域に分けられている控訴裁判所の一つで、日本における地方裁判所のような位置にあります。

この判決は、第9巡回区に含まれる州(アラスカ、アリゾナ、カリファルニア、ハワイ、アイダホ、モンタナ、ネバダ、オレゴン、ワシントン)のみに適用されますが、米国憲法修正第一条に基づけば全ての州で適用されることになります。

マサチューセッツ州では2012年に医療大麻の使用を許可する法律が可決されています。州法で医療大麻が許可になっても連邦法は医療大麻の使用を認めていません。マサチューセッツ州が「医療大麻に関する新法案」を施行しようとしたとき、アメリカ麻薬取締局の取締官がマサチューセッツ州の医師を、彼らの自宅やクリニックに訪問して、「麻薬処方のライセンスを放棄するか、医療大麻を取り扱う薬局との関係を断つか」どちらかを選択するようにと脅してきました。

医師たちを威嚇して、医療大麻の使用に積極的にならないように仕向けることが目的でした。

しかし、2013年に司法省は、大麻は連邦法では未だスケジュールⅠの規制薬物に分類されていることを再確認しながら、州の合法化の動きや、免許を受けて大麻の栽培と販売に従事している人々に干渉しないように、全米50の州の連邦検事らに指示しました。

さらに、2014年、米国議会の下院は医療大麻が合法化されている州に対して、司法省(麻薬取締局を所轄している)が「医療大麻の使用や流通や所持や栽培を許可した州法」の実施を邪魔するような行為にいかなる予算も使用してはならないという法案を可決しました。

つまり、連邦法は利用大麻の使用を認めていません。州法で使用が認められた州では、医師による適切な医療大麻の使用を麻薬取締局など連邦政府は禁止できない(禁止する行為は憲法違反)ということになったのです。

 

 

日本では、故山本正光さんが医療大麻によってご自身の患っている癌疾患に対して効果があったにも関わらず、大麻所持で逮捕されるという事例がありました。担当医からも施す治療がないと言われ、途方に暮れている中海外の医療大麻ニュースを知ったのがきっかけだったそうです。厚生労働省などにも問い合わせをしたそうですが、医療目的での大麻使用は断じて禁じられていると告げられたそうです。

日本の大麻取締法は、大麻の薬理作用研究もしないまま規制していることが一番の問題だと思います。誰もが口を揃えて「医療で大麻使用なんて!言語道断」とヒステリックになる傾向にある国民性ですが、大麻の有効性を知った上で相対的に判断する必要があると思います。有効性を判断できる基準が設けられていない。しかも大麻研究ができないお国柄ときたら……一体なんの根拠があって規制されているのか理不尽極まりありません。

お茶の間ワイドショーなんかでは勝手がいいタレント医師が、医療大麻なんて言葉にすること自体嫌!なんて発言してましたが、いかがなものなのでしょう。人の命を尊重しなければいけない立場や地位の人がそんな安易な発言はダメです。

私は世界で発表されている大麻に関する研究論文や医学誌を読みましたが!という前置きがあった上での発言なら別です。しかし、世界では連日大麻に関する研究報告が無数に発表されています。医療目的での大麻使用の有効性について少しでも知ってもらえたらと思います。

出典:医療大麻の真実