グレッグ・ガードマン・インタビュー:脳科学とエンドカンナビノイドシステム

グレッグ・ガードマン教授が、脳科学、ストレスの神経生物学、エンドカンナビノイド科学がどのように大麻を薬物乱用パラダイムから解放したか、について語りました。

プロジェクトCBD:本日は、フロリダ州エッカードカレッジの生物学教授で神経科学社のグレッグ・ガードマンにお越しいただきました。グレッグ・ガードマンは、エンドカンナビノイドシステムなるものについて実際に授業で教えている、私たちが知る数少ない教授の一人です。エンドカンナビノイドシステムとは何でしょうか?なぜエンドカンナビノイドシステムについて授業で教えているのですか?その重要性とは?

ガードマン:エンドカンナビノイドシステムは私が20年以上前から焦点を当てている研究分野です。このシステムは、大麻がどのように作用するか理解する中で発見されました。大麻はエンドカンナビノイドシステムに作用します。それには幅広い作用の仕方があります。しかし部分的にこれが面白いのは、科学者が大麻を理解するためにエンドカンナビノイドシステムを研究するにつれ、私たちは脳や体がどのように作用するかについて膨大な量の知識を学ぶことになったということです。大麻の作用だけでなく人間の作用について学んだのです。私は神経科学者ですから、脳がどのように作用するか、どのように情報を処理するか、脳内でどのように異なる回路が作用するか教えていますが、エンドカンナビノイドはこれに関して不可欠な部分なのです。エンドカンナビノイドは神経科学カリキュラムに取り入れられるべきです。

プロジェクトCBD:エンドカンナビノイドシステムとは特に何を意味しているのでしょう?

ガードマン:エンドカンナビノイドシステムは第一に、THCやその他カンナビノイドが作用する受容体です。大麻がどのように作用するかの標的であり、細胞が放出し、受容体に作用するエンドカンナビノイドと呼ばれる一連の内因性神経修飾物質です。システムは全身に分布していますが、特に脳によって非常に多く利用されています。脳がどのようにエンドカンナビノイドと作用するか例をあげましょう。例えば、さまざまな情報を受け取る脳内の細胞であるニューロンは、自らのシナプス入力の力を微調整するために小さなシグナル伝達分子であるエンドカンナビノイドを放出します。エンドカンナビノイドは体内の酵素によって生成・分解されるシグナル伝達分子なのです。エンドカンナビノイドは細胞の活動を変化させる、細胞表面にある受容体に作用します。そしてシグナル伝達分子、エンドカンナビノイドを生成・分解する酵素、化合物の効果を発揮する受容体、これらすべてがエンドカンナビノイドシステムの中に含まれています。

プロジェクトCBD:エンドカンナビノイドとは体内や脳内に存在する分子なのですね。

ガードマン:その通りです。

プロジェクトCBD:エンドカンナビノイドは大麻のような分子であると表現するのはあっていますか?エンドカンナビノイドはどのようにTHCやCBD、その他大麻の構成成分と関係するのでしょうか?

ガードマン:ある意味そうだと言えます。エンドカンナビノイドは体内の大麻だと言う人もいます。構造化学者はその考え方に異論を唱えるかもしれません。なぜならエンドカンナビノイドの分子構造はそれほど大麻と似ていないからです。しかし生理学者が考えるところの機能的には、例えばアナンダミドがどのように結合し、結合したカンナビノイド受容体の細胞活動を変化させるかを示す生理学は、実際THCによく似ています。

プロジェクト CBD:アナンダミドはエンドカンナビノイドの一種ですね。

ガードマン:その通りです。内因性のエンドカンナビノイドを略して「エンド」と呼びます。エンドカンナビノイドは主にアナンダミドや2-AGと呼ばれる化合物によって代表されます。おそらくさらに複数あります。他にもエンドカンナビノイドのような分子が放出され、アントラージュ効果のように作用したり、かなり多くの細胞機能を強調して調整したりするのを確認しています。かなり変動制がありますが、エンドカンナビノイドシステムは人間の恒常性を促進するシステムであるようで、体を最適な範囲に維持してくれます。エンドカンナビノイドはそのように体を調整しています。

プロジェクトCBD:恒常性や、エンドカンナビノイドシステムが体内で果たしているその他重要な機能についてお話しされましたね。生理系を調整する恒常性がその一つです。他にエンドカンナビノイドシステムが影響する、または相互作用する生理学的・生物学的側面はどんなものがありますか?

ガードマン:学習・記憶や、感覚と運動の情報を統合するプロセスに関わっています。ある意味、私は生理学者としてこれらすべてを恒常性と捉えることができます。例えば空腹な人がいたら、その人は食べ物を探すように体から合図を受けますが、これは恒常性の複合過程です。つまり人体は不足を感じ取り、食べ物を食べることによってバランスを取り戻そうとしているのです。そして脂肪組織と脳の視床下部(行動を動機づける脳の快楽中枢)にあるエンドカンナビノイドシステムはすべて、エンドカンナビノイドによって統制され、組織化されているのです。

プロジェクトCBD:あなたは研究の中で、エクササイズや身体的運動がどのようにエンドカンナビノイドシステムまたはカンナビノイド受容体シグナル伝達に影響するか研究していましたね。なぜそのようなテーマに惹かれたのでしょうか?結果的にどのようなことが分かりましたか?

ガードマン:私はカンナビノイドと脳を研究する者として、デヴィッド・レイチランという人類学者と協力してチームを作りました。彼は耐久走行行動が人類の進化における進化力となった要因について長年関心を持っていました。人類学者が、なぜ人は長距離走に従事するのかと考えた時、 それはエネルギー集約であり、体にダメージを与えるリスクがあるという見解にこだわりました。要約すると、私たちはすでに他の人々が見てきたことを調査しました。つまりエアロビクスとアナンダミド(2-AGではなく)の関係を見ると、エアロビクスによって人間の血中のアナンダミドが増加するのです。私たちは同じことを、長距離を走ることのある別の動物グループ、犬においても発見しました。私たちはそれをランナーズハイと呼びますね。私たち幸福感や気分の高揚などを得るとき、エンドカンナビノイドがそれに関わっています。運動とともにアナンダミド量が増加することは、ランニングやその他運動が頑丈で回復力のある生理機能、ストレスや病気からの回復力の維持に非常に大切である、と私たちは考えています。

プロジェクトCBD:まるでフィードバックループのようですね。運動はランナーズハイのように喜びを与え、それが体内のエンドカンナビノイドに関係しているんですね。特にアナンダミドの名前が挙がりました。

ガードマン:アナンダミドです。2-AGは増加しません。そしてその2つの違いは何か、というのがエンドカンナビノイドに関する新たな複雑さです。生物学におけるストレスの神経生物学研究では、少なくとも特定の脳部位における確かなアナンダミドトーンの維持、すなわち健康的なアナンダミド量の維持が、ストレス耐性に非常に重要であるらしいのは興味深いことです。恐怖を感じること・受け止めることの神経生物学は、アナンダミド量が一時的に減少することと関係しています。これはマット・ヒルによる研究です。体が恐怖を感知すると、へんとう体内のアナンダミド量が減少し、それが闘争・逃避免疫反応の引き金になります。またより高いレベルでの恐怖体験の符号化といったものの引き金にもなります。より多いアナンダミド量(単純化しすぎかもしれませんが)または健康的なアナンダミド量は、非常に機構的に明瞭であるようです。これはハイエンドな科学研究であり、ストレス耐性、またストレスや例えば過去のトラウマによる不安を誘発するようなストレス多い合図を克服・忘却することに関係しています。

プロジェクトCBD:この場合「ストレスの多い合図」で意味にすることは何でしょうか?非常に多くのことが体内のストレス因子として作用しますよね。エンドカンナビノイドシステムが何らかの形で仲介するような、例えば身体的ストレスのような特定のタイプのストレスがあるのでしょうか?それとも、エンドカンナビノイドシステムが何らかの形で対処を助けるような、数多くの異なるストレスなのでしょうか?

ガードマン:後者の方だと思います。私はこれを脳科学者として見るので、神経回路はストレスの理解・感知・反応ならびに心拍数上昇をするなど体への伝達に関わっています。複雑な神経回路が、エンドカンナビノイドとともにその時々で回路を調整します。つまりエンドカンナビノイドシステムが関わっているのです。ストレスの精査に関する限り、同型ストレスと業界用語で呼ばれるものに関して最適な証拠があります。同型ストレスとは、慢性不安を引き起こすような毎日繰り返すような逃げられないストレスのことです。

プロジェクトCBD: ストレスは数多くの異なる疾患または異常な病状を強調すると理解されています。一般的にエンドカンナビノイドシステム研究による脳科学の理解においてなされた進歩が、病気と健康の理解、私たちの機能に関して意味することは何ですか?エンドカンナビノイドシステムの研究が、日々の生活で直面する根本的な問題に関して明らかにすることは何でしょうか?大半の人々は科学者ではないので、問題について分子などの点から考えたりしませんし、人々はただ健康を改善したいだけです。それに関してエンドカンナビノイドシステムが教えてくれることは何でしょうか?

ガードマン:その問題は注目するのに非常に有望で興味を引くものだと言える程度には十分学んできた、と思います。エンドカンナビノイドは、多くの病態に関わっています。またそれは薬としての大麻全体に適合します。植物性大麻製品がエンドカンナビノイドシステムを微調整または相互作用するメカニズムは、疼痛状態、ストレス状態、慢性病に大きな可能性を持っています。私が神経科学者として興味を引かれる点は、例えばエンドカンナビノイドが細胞に情報を微調整するやり方で、これが運動制御に関係していると思います。エンドカンナビノイドがハンチントン病やパーキンソン病、さまざまなタイプの震えに関係していることを示すハイレベルの研究もあります。これらの電子神経回路と相互作用する同じ分子が、腫瘍の成長を抑制したり、胃腸の内側の細胞間でシグナル伝達を行ったり、治癒と瘢痕化を管理したりします。まだ分かっていないことがたくさんあります。しかしエンドカンナビノイドシステムが健康と幸福に関わる多くの異なる段階で作用するのは素晴らしいことです。

プロジェクトCBD:大麻が非常に巧妙で重要な生理システムであるエンドカンナビノイドシステムと相互作用するならば、健康状態の改善や、生理系に不足が起こった際のシステムのバランス回復に使用できるということを意味するわけですね。また、どういうわけか大麻が人体の整理機能と非常に深く相互作用し、その関係を理解するためにエンドカンナビノイドシステムが重要であるということですね。

ガードマン:その通りです。エンドカンナビノイドシステムはCB1とCB2カンナビノイド受容体によって結晶化していますが、これらの遺伝子の進化は椎骨活樹の根底にあるようです。人間はエンドカンナビノイドを用いて常に自らを微調整する極めて複雑な脳、適応免疫系や、エンドカンナビノイドと作用する内分泌系を持っています。大麻草は非常に多様で巧妙なやり方でエンドカンナビノイドシステムと相互作用します。神経回路とこれほど不可欠なレベルで相互作用する薬を使用すると、深刻な副作用が出ないという考えは素晴らしいです。

プロジェクトCBD:ヒト生物学を医学に対する大きな示唆とともに理解することは、全く新しい展望を切り開きますね。

ガードマン:そうですね。私が研究し始めた時、国立衛生研究所は国立薬物乱用研究所の元でしかエンドカンナビノイド研究の資金提供をしていませんでした。「へんとう体の回路と恐怖・学習・ストレスに関心があるなら、エンドカンナビノイドについてはどう考える?」と訊ねても、科学者から返ってくる答えは「大麻の研究はしていない」「薬物乱用は研究していない」というものばかりでした。今では、エンドカンナビノイドシステムの科学的発見が大麻を数十年間にわたって阻害してきた薬物乱用パラダイムから大麻を解放しました。数十年というのは薬としての大麻の長い歴史から見れば短い期間ですが、その影響は膨大でした。エンドカンナビノイドシステムは大麻を、末期疾患や最終手段としてだけではなく、より生物医学的健康と幸福の世界へ解放しました。エンドカンナビノイドを健康と回復力の薬として研究することにはそれだけの価値があるのです。

プロジェクトCBD: 薬物乱用パラダイムで機能するだけでなく、健康と病気に関する理解を深めるために最先端の研究を行うガードマン教授のような科学者がいるのは幸いなことです。これがより良い生活のために利用されるといいですね。本日はプロジェクトCBDにお越しいただき、ありがとうございました。

ガードマン:ありがとうございました。

参考:ProjectCBD