医療大麻は神経痛に効くことを退役軍人局が認める

医療大麻が神経障害痛として知られる慢性神経痛の緩和に有効である可能性が、最新研究レビューによって明らかとなりました。神経障害痛は糖尿病患者によくみられる症状です。

ナッシュビル市ヴァンダービルト精神病院のサチン・パテル医師は、医療大麻と神経障害痛に関する調査結果に関して「我々が知っていたことと概して辻褄が合う」と話しました。

米退役軍人局が依頼した2回の研究レビューのうち2回目では、大麻が別のタイプの疼痛または心的外傷後ストレス障害(PTSD)の影響の治療に役立つことを示す証拠は多く見つかりませんでした。

「だからと言って役に立たないというわけではありません。ただ現時点で証拠が少ないというだけです」とパテル医師は言います。

また研究著者らは、疼痛またはPTSDに関する大麻の効果または害を示す決定的な証拠を生み出すための質の高い研究が十分にされていないという事実を非難しました。

現在までに実施された数少ない研究を元にして結論を出すのは不可能です。しかし研究著者らは「まもなく複数の研究から重要な結果が提供されるだろう」と書いています。

「現在行われている研究は、この両方の分野における質の高い臨床試験に対する差し迫ったニーズを強調しています。もし大麻の医療用途が考慮されるなら、それは結局、確立された治療法がうまくいかなかった時ですから」パテル医師は言いました。

今年のはじめ全米科学アカデミーは、大麻が慢性痛の治療、多発性硬化症による筋肉けいれんの緩和、化学療法による吐き気の軽減に効果的であることを示す「決定的な」または「実質的な科学的証拠」があるという報告書を発表しました。

退役軍人局長官デイヴィッド・シュルキンは5月にホワイトハウスで、大麻が治療法として利用できることを示す証拠から学ぶことにオープンであると話し、また「大麻が有益であることを示す証拠があるかもしれない」と発言しました。

「我々は大麻に注目し、大麻に関する証拠から学ぶことに関心があります。しかし、連邦法が改正されるまでは、医療大麻が役に立つかもしれない疾患に医療大麻を処方することはできません」シュルキンはこう述べました。

退役軍人局が依頼した2つの研究はアンナルス・オブ・インターナル・メディシン誌に発表されましたが、退役軍人局のカート・キャッシャー報道長官は、筆頭研究著者は研究に関してコメントできない、と拒否したことをビジネス・インサイダーが伝えています。

NORML(大麻法改革を求める全米機関)のポール・アーメンタノ副所長は次のように述べています。「最近の調査結果は、致死性のあるオピオイド鎮痛剤のより安全な代替役を求めてきた患者の事例報告と一致します。また、大麻は『医学的用途が認められない』とする連邦政府によるスケジュールI規制薬物指定とは矛盾します」

正確には大麻は危険薬物であるという麻薬取締局(DEA)の非妥協的で明らかに馬鹿げているレッテルこそが、政府を納得させるために切に必要とされる科学的研究を妨げているのです。

大麻による鎮痛効果

大麻に鎮痛効果があることは、すでに数多くの研究で明らかになっています。また大麻に含まれる成分THCとCBDを調合した薬サティベックスは、多発性硬化症による神経障害痛やがんによる難治性疼痛、リウマチ性関節痛などに有効であるとしてすでに複数の国で使用されています。大麻による鎮痛効果はすでに広く立証されていますが、この記事ではアメリカの政府機関である退役軍人局が依頼した調査で分かったということが重要です。

アメリカでは州レベルで医療大麻の合法化が進んでいるものの、連邦政府によっては未だに禁止されているため、退役軍人局は元または現役の軍人に対して医療大麻を正式に勧めることができません。しかし、退役軍人におけるPTSD罹患率の高さやそれに伴う自殺率の高さから、一刻も早く効果的な治療法を見つけることが求められています。現在PTSDに関して有効な治療法はありませんが、自発的に医療大麻を利用した患者から大麻によって症状が緩和されたという報告が相次いでいます。また、激しい訓練や現場での重労働が伴う兵役は怪我などと切っても切れない関係にあり、何らかの身体的痛みが発生しやすい職務です。そこで、大麻による鎮痛効果やPTSDに対する好影響を示す傾向を無視できず、退役軍人局が調査を依頼したという流れなのだろうと思います。

大麻研究を進めるためにも、妨げとなっている連邦法による規制が少しでも緩和されるといいですね。

参考:HighTimes