CBDの生体利用効率:分析

現在の医療大麻市場には、さまざまな投与方法で摂取することができる広範囲の製品が出回っています。投与手段は「物質が体内に取り込まれる経路(例:口、注射、吸引、直腸、塗布)」と定義されています。いかなる治療化合物(この場合はCBD)の投与手段も非常に重要です。それが、治療薬の摂取、流通、排泄に影響するからです。その結果として、投与手段は治療薬がどれほど効果的なのかを左右するのです。

 

カンナビノイドは、使用者の好みの要望に基づき数多くの方法で摂取することができます。医療行為では、使用者の好み(投与に関していかに安心できるか)が非常に重要な要因となることがあり、時に処方業務の「手法」において大きな役割を果たします。しかし、心地よさは有効性よりも優先されるべきではありません。投与手段は特定の作用部位に対する治療に合わせるからです。これにより、疾患または症状の治療においてより顕著な効果を引き出すことができます。

 

薬またはサプリメントの吸収とは、その投与部位から血流への移動を意味します。この吸収に対する医学用語は、生体利用効率(バイオアベイラビリティ)と呼ばれています。生体利用効率は 「物質(薬など)が生体に吸収される、または生理活動部位で利用可能となる程度と割合」と定義されています。物質の静脈内投与は生体利用効率100%と考えられており、他の投与手段は生体利用効率の割合として静脈内投与と比較されます。下記の表は、4つの投与手段を通じた推定CBD生体利用効率をまとめたものです。

 

主なカンナビジオール(CBD)の投与手段ならびに関連する生体利用効率データが、下記に取り上げられています。

 

経口

 

最も一般的な医療大麻製品の投与手段は、経口経路を通じてです。この方法は最も簡単な方法であり、カンナビノイドをさまざまな食品に取り入れたり、カプセルやオイルを通じて簡単に摂取したりできるために、このような製品が入手できるのです。ある研究で、被験者は40mgのCBDが入ったチョコレートクッキーを摂取し、その生体利用効率は6%(静脈内経路と比較して)であったことが報告されました。犬にCBDを与える薬物動態学的研究では、13〜19%とより高い経口生体利用効率が推定されましたが、動物と人間の経口生体利用効率は必ずしも相互関係にないことを覚えておくことが重要です。

 

ハンチントン病患者において実施された臨床試験では、CBDが経口投与されましたが、生体利用効率は非常に低いことが分かりました。CBD量は血漿内に低濃度で、また比較的狭い範囲で示されました。14人の患者の平均レベルは、5.9ng/mlから11.2ng/mlに及びました。

 

CBDの経口生体利用効率の低さの主な原因は、初回通過代謝です。初回通過代謝は、CBDが循環系に到達する前の胃腸内腔酵素、腸壁酵素、最近酵素、肝酵素による働きによって起こります。CBDは100以上の異なる代謝産物を産出するために、肝臓内のCYP450混合機能オキシダーゼと呼ばれる酵素に作用されます。

 

経口生体利用効率を強化する方法は数多くあります。一つは、CBDを長鎖トリグリセリド(脂肪酸)と一緒に摂取する方法です。CBDと長鎖トリグリセリドの同時投与は肝臓による初回通過代謝を回避できることが、最新研究で示唆されています。これに関する提案機構は腸リンパ系を通じたもので、結果的に左内頸静脈および左鎖骨下静脈を通じて血流に吸収され、肝臓でのプロセスを回避できます。

 

吸引

 

娯楽大麻使用者に起因するものですが、この投与手段はより高い生体利用効率を得るという点において実際有益です。このために、使用者は経口摂取と比べて吸引した方が早くTHCの精神活性効果を感じられるのです。これは臨床研究でも観察されています。この研究において、THCを含むチョコレートクッキーの経口摂取では全身アベイラビリティが6%だったのに対し、吸引後のTHCの生体利用効率は推定18%でした。THCとCBDの親油性が似ていることを考えれば、この生体利用効率データは相関します。

 

この研究から分かる重要な初見は、臨床効果は発現により時間がかかったが、より長時間持続したということです。これ以降、経口経路の遅い吸収は吸引経路に比べて迅速排出を起こしにくく、したがってより長時間持続する効果を得られます。

 

この臨床観察は、医学的応用(CBD製品でも)に関して非常に関連性があります。特に、吸引経路を通じた際の生体利用効率の激増によります。吸引後のCBD生体利用効率は、経口経路投与よりも極めて高い、平均31%であったことが分かりました。

 

吸引経路で高い生体利用効率が見られたのは、 肺が高透磁率ならびにCBDが体循環に入るための大きな吸収面と優れた血液供給を持つからです。これは初回通過代謝を回避するもう一つの手段です。

 

舌下

 

舌下経路による投与手段は、おそらく快適さに関しては経口経路と同じレベルでしょう。一般的な舌下投与手段には、舌下錠剤、舌下ストリップ、トローチ剤、スプレーがあります。

 

ウサギにおいて実施された研究で、経口および舌下のCBD溶液の生体利用効率を比較しました。研究の結果、舌下投与されたCBDは経口投与のCBDより極めて高い生体利用効率を持つことが分かりました。

 

舌下経路による投与は初回通過代謝も回避します。舌下にある多量の毛細血管が、この経路を通じてCBDが血流に入ることを可能にするからです。

 

直腸

 

直腸経路の投与は一般的に経口経路が不可能な状況で支持されます。例えば、患者が吐き気・嘔吐(病気の副作用)に苦しんでいたり、飲み込むのが困難だったりする場合です。

 

現在、CBDの直腸投与による生体利用効率を特に算出するデータは不足しています。THCを評価する薬物動態学的研究から得られた生体利用効率データは、直腸経路の投与では経口経路と比べて生体利用効率が約2倍になることを示しました。別の研究では、THCの直腸製剤による生体利用効率は13.5%だったことが分かっています。直腸の静脈排出路にある3つの血管のうち、たった一つ(上直腸静脈)だけが肝臓へ流れます。つまり、直腸投与の場合、部分的にのみ初回通過代謝が起こるので、結果としてより高い生体利用効率が報告されています(より多くのCBDが血液循環に残るため)。結果的に、座薬は他の経口投与方法(オイル、カプセル)と比較して、より早いCBD作用の出現が得られます。

 

非常に関連性のある研究で、結腸炎症を誘発されたマウスにおいて経口および直腸経路で投与されたCBDの効果を比較しました。研究結果では、経口投与されたCBDは効果を示さなかったのに対し、直腸投与されたCBDは結腸の炎症を大幅に軽減したことが分かりました。この研究の著者は、CBDが大腸炎から直腸経路を通じて局部的に保護できる可能性を示唆しましたが、さらなる研究が必要です。

 

吸引VS経口:どちらの方が効果的か?

 

ホリスターその他による研究においてはカンナビノイドの3つの投与経路(経口、吸引、静脈内注射)を比較し、経口投与が最も長時間の「臨床効果」をもたらすことが分かりました。この結果は、経口経路が3つの中で最も低い血漿濃度を作り出すという事実に反しています。下の2つのグラフは、THCの薬物動態と時間との比較を示しています(ホリスターその他より)。

 

吸引経口経路の方がより迅速な発現をもたらすますが、迅速に消えるので臨床効果はより短くなります(推定1〜3時間)。これは、血漿濃度が非常に早く最大となり、CBDが一次排出速度(排出率は体内の薬物量に比例する)に従って血流から排出されるからです。

 

一方で、経口経路の投与ではゆっくり血流に放出されます。この投与手段では、より長時間血中濃度を低く維持するので、遅い確率で排出されるので(遅い排出)。したがって、経口経路はより長く効果が持続します(推定7時間)。

 

最適な投与経路とは?

 

生体利用効率に関して言えば、舌下経路および吸引経路がCBDを最も効率的に血流に運搬します。これは、迅速な改善や血流内のCBDの高濃度を必要とする症状に関して重要になることがあります。

 

とは言え、1つの方法が他をしのぐ「1サイズが全てに合う」という解決策はありません。

 

経口投与は、使いやすさと快適さに関して、また長時間にわたって体循環にCBDが低濃度含まれることだけを必要とする症状の治療に関して有効である可能性があります。直腸経路の投与は、高い生体利用効率が体の標的領域により高濃度のCBDを提供するのと同様に、局所的な抗炎症効果を提供できるので、さまざまな結腸疾患の治療において極めて重要となるでしょう。