大麻禁止支持者が主張する5つの“事実”を解明

大麻にまつわる論争は、感情によって遮られがちです。この件に関する双方で一致するのは、客観的事実よりも感情に基づいた議論をする傾向にあることです。大麻支援派に関しては事例証拠および個人的経験に基づくことが多く、一方で反対派は時代遅れの定説や事実の選択的解釈を土台にしがちです。これら2つの信条が衝突するとき、現実を決めるのは難しい可能性があります。しかし合法的大麻に反して禁止支援派が指摘する点の一部は、一見科学を基にしているように見えますが、真実ではありません。

1.ゲートウェイ理論

大麻使用がよりハードな薬物の使用を誘導するというこの考えは、多くの禁止支持者が深く信じているものです。これは十数年前から存在しているD.A.R.E.の授業や同様の「薬物ダメ絶対!」計画とは切り離せない部分です。この理論は、多くの薬物乱用者がハードドラッグを使用する以前に大麻を使用していたと報告されているため、大麻は問題的な薬物使用に向かう最初の足がかりに違いない、と強く主張します。

さらにゲートウェイ理論は、初期の大麻使用が、使用者を他の薬物使用を通じて恩恵を得ようという気持ちにさせる考えの転換を脳に引き起こす、という仮説によって深められています。この考えにおける問題は、初期の大麻使用とその後の薬物乱用間に相互関係がある可能性はあるが、それは原因と一致しないという点です。実際のところ、よりハードな薬物乱用の主な要因として貧困、精神疾患およびその他社会的要因が指摘されている科学的証拠がたくさんあります。大麻を試した人の大半が大麻を使用し続けすらしない、というのが事実なのです。

2.脳への損傷

大麻は発育中の脳に変化を起こしうるというこの考えには、いくつかの科学的根拠があります。特に発育中に使用し始めた場合、大麻の乱用が記憶・注意に関連する脳部位の密度における変化と相互関係することが、研究で示されています。しかし、他の研究では、そうではないか、あるいは他の要因が脳構造における変化を起こしている、とすることが示されています。

2015年にJournal of Neuroscience誌に発表された研究は、年齢、性別、アルコール使用およびその他要因などの要因を調整したとき、青少年においてさえ、大麻使用と脳体積の減少につながりは見つからなかったと結論付けています。この件に関して正反対の見解を支持する証拠がありますが、間違いなくさらなる研究が必要です。事実と言えるのは、大麻使用が脳に損傷を与えると主張する人は、自分たちにとって不適切な見解を支持する別の証拠に有利な一部の研究を無視している、ということです。

3.道路が危険になる

大麻が危険な運転の原因となるというこの議論は、合法化に反対する比較的最近の議論における新たな礎となってきました。大麻の合法化は使用を増加させ、その延長線で大麻の影響下で運転する人数も増加する、というのが論点です。

ロッキー山脈薬物取引集中地域(RMHIDTA)によって2016年に発表された研究でも2013年の合法化後、大麻に関連する交通事故死数が48%増加したと主張しています。合法化の影響からワシントン州で出た同様の主張も、 致命的な衝突事故に起こし、大麻陽性の検査結果が出る運転者数の増加を示すデータによって裏付けられています。

しかし、全体で見たとき、大麻が合法化されて以降どちらの州でも、交通事故死亡者数の総数における劇的な増加は見られないようです。禁止支持者が引用したデータが正確に示唆しているのは、致命的事故後の大麻検査数の増加であるようです。

4.若者へのアクセスの増加

大麻に対する現代的な反論においてよく知られている論点は、合法化によって十代の若者における大麻の入手可能性が増加し、また汚名が払拭されることによってさらに使用が増加するという考えです。これも一見データに裏付けられているようです。前述のRMHIDTAによる研究が、最も進歩的な大麻法を持つ州では12〜17歳の若者の大麻使用率が最も高かったのに対して、医療大麻も認可していない州ではその使用率が最も低かった、と示唆する薬物使用と健康に関する全国調査を引用しています。

しかし、国立薬物乱用研究所(NIDA)が毎年実施している未来観察調査によると、医療大麻および成人使用合法化が拡散しているにもかかわらず、若年者における大麻へのアクセスおよび使用は全国的に低下し続けています。この新事実はNIDA所長にとって驚きでした。所長はその逆の結果が出ると予測し、U.S.NEWSやWorld Reportに対してそのように話していたからです。最新の薬物使用と健康に関する全国調査もこの低下を裏付けているようです。

5.中毒

大麻の犯罪化は常に、大麻草は中毒性の化学成分を含むという考えを基礎に置いてきました。そしてこの議論は今日まで続いています。現代の禁止支持者の一部は今でもこの見解に固執し、大麻合法化は中毒性物質を公共で入手可能にするだろうと主張しています。大麻の常習的な使用は中毒または疾患の定義を満たす症状の原因となることがあるため、この見解には現実的な根拠があります。

しかし、NIDAが引用した研究によると、大麻使用者のうちたった9%しか中毒または使用障害の兆候を見せません。これはタバコやアルコールなど他の薬物よりもずっと少ない数値です。この中毒の性質も概して比較的軽度で、アルコールやアヘン中毒に付随する生命をおびやかす可能性を持つ症状はありません。さらに、大麻の可用性はアルコールやアヘン使用の低下をもたらすという有力な証拠があります。大麻が中毒者人口の増加をもたらすという議論は、差別的な事実の解釈のように見えてきます。

出典:The Hemp Connoisseur 2016/2017冬号