あなたは医療大麻のデメリット(副作用)をどう考えるか?

日本では医療大麻というワードと嗜好品での大麻を混合して考えるので薬物というイメージから抜け出せないのではないだろうか。

16世紀、スイスの医師パラケルスス氏は、「すべての化学物質は有害である。人に有害であるか無害・有益であるかは、その量による」言った。カンナビノイドのこの世に存在する化学物質の1つと考えられているため、リスク・コミュケーションを促進するために科学ベースのリスク評価をする必要性がある。リスク評価は、毒性(ハザード)×摂取量(暴露量)という式で形成させる。リスク検証するためには、リスク管理(ルールを作る)とリスク・コミュニテーション(答弁)をし、区分に分けて使用用途が決まってくるものである。

医薬品は、主要な作用で投与した目的の薬効を主作用と言う。これに対して2次的な副次的な作用を副作用と言う。これには良し悪しの概念ではなく、良い副作用も悪い副作用もある。医療上は、投与された患者に生じたあらゆる好ましくない医療上の出来事を有害事象と言う。日本では有害事象=副作用の疑いとして義務付けられている。その有害事象の中でも、患者の生命や機能を危険にさらす事象は、重篤な有害事象と呼ばれている。重篤度には次のような国際的に標準化された基準がある。

1. 死に至るもの
2. 生命を脅かすもの
3. 治療のため入院または入院期間の延長が必要となるもの
4. 永続的または顕著な障害・機能不全に陥るもの
5. 先天異常を来すもの

※その他の状況、すなわち即座に生命を脅かしたり死や入院には至らなくとも、患者を危機にさらしたり、上記のような結果に至らぬように処置を必要とするような重大な事象の場合には、緊急方向を飛鳥とするか否かを医学的及び科学的根拠に基づいて判断する必要があり、通常、それらも重篤とみなすべきである。

この基準では、その他の医学的に重要な状態と判断される事象または反応を事例として薬物依存症または薬物乱用が危篤な有害事象となっている。カンナビノイドを治療に用いたとき、重篤な有害事象がどれだけ発生したのかという疑問に答えた論文がある。それは、2008年にカナダ医療協会のジャーナルで発表された、治療目的とした臨床実験をまとめてシステマティック・レビューという最も信頼性の高い手法を使って評価した研究である。

約97%で有害事象が起きなかったカンナビノイド

研究方法は、MEDLINE、PsychINFO、EMBASEという学術論文のデータべースから321論文を選び、娯楽利用の290論文を覗いて、23論文のランダム化比較試験(RCT)ト8論文の観察研究を評価した。選ばれた論文のカンナビノイドの摂取期間は、平均して2週間、8時間から12か月の範囲、摂取したカンナビノイドの種類は、大麻抽出物とコントラールが9論文、THC・CBDの両方とコントラールが6論文、THCとコントロールが14論文であった。
コントロールとは、結果を検証するためにカンナビノイドを摂取しなかった対象実験である。

その結果、4779件の有害事象の中、4615件(96.6%)で重篤な有害事象がなかったのである。ごくわずかな164件(3.4%)の重篤な有害事象は、ほとんどが多発性硬化症の悪化にともなうものであった。治療目的でカンナビノイドを用いたとき、生命に関わるような重篤な有害事象はほとんどないが、プラセボのコントロールと比較して、わずかに神経、消化管、神経症状の有害事象が発生することが明らかとなっている。この有害事象を持って、法律的に使用禁止にするのであれば、現在流通しているすべての医薬品は明日から全面禁止となる。
重篤な有害事象がほとんどない時点で、カンナビノイドの中で最もリスクが大きいTHCであっても、有害な副作用が少ない非常に優秀な化学物質という評価になる。

嗜好品で使用する大麻成分(THC)も医療で使用する大麻成分(THC)も同じことから大麻は何が何でもダメだ!という見解が多いように見受けられる。しかし、医療で大麻を使用することにより様々な疾患に効果的だとされている以上はセパレートして考えていかなくてはいけないのだろうか。大麻は薬物であるから使用禁止である!という頑な見解こそが我々一人一人の選択の自由が狭まれてしまっているように思えるのである。特に難治性に苦しむ方にとっては特効薬になりつつあるのだから。薬物だからダメだという見解が全てであるならば、モルヒネ成分が利用が可能であるのか?と考えいただければいいと思う。

しかし、大麻は絶対的に有効であるという訳ではなく、人によっては全く効果がない場合があるという点も認識しなければならない。何も大麻が全てであると言っているわけではなく、選択肢の一つとして有効であるとされている疾患者に対しては選択する自由があってもいいのではないだろうか。嗜好品の解禁を望んでいるわけでもなく、医療で大麻を使用することにより苦しんでいる方の可能性が広がることを望んでいるわけである。

一部抜粋 : カンナビノイドの科学