今の大麻の効力が最新調査で明らかに

米国麻薬取締局(DEA)が2017年全国薬物脅威評価書を10月に発表し、その中で大麻製品のTHC含有量やその他薬物の高まる効力や純度が調査されました。医療用や娯楽用の合法化が進む大麻は、品種改良によってTHC濃度またはCBD濃度の高い品種が開発されていることを受け、過去に比べて効力が高まっています。この他、違法薬物として取引されるヘロイン、コカイン、覚せい剤や、近年のオピオイド危機の一因を担っている鎮痛剤フェンタニルなどについてもレポートされていたので紹介します。

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違法薬物市場(一部のケースでは合法)の純度および効力は新たなレベルに到達しているようです。前代未聞の人口数、そしてあらゆる職業および社会的地位の人々に影響を与えている新たなオピオイド危機の背景でこの流行が展開していることは、政府当局にとって特に憂慮すべき事態です。

アメリカにおける薬物中毒死は、自動車事故、自殺、殺人、銃事件を抑えて傷害死亡要因の第1位です。

一体、薬物はどこまで強力になれるのでしょうか?

それは、オピオイド危機がどのように広がってきたかによって決まります。処方薬によってハイになることへの渇望と違法市場へのフェンタニルの導入が流れを変えた可能性があります。

ビング医療経済センター長でランド研究所の薬物政策専門家のロザリー・リッカード・パキュラは次のように述べました。「効力が上がったのは、市場に出回る他の薬物の高い効力と競合するためだと考えています」

過去にないほど危険が高まる今、サンディエゴにある米国麻薬取締局の広報担当エイミー・ロデリックは、民衆が気付いていることを願っています。「人々が自ら学び、薬物を遠ざけたほうが安全だと気がついていることを願っています。家族の誰かがこれら薬物の中毒になると破滅的です。私たちは『ウォーキング・デッド』のような社会を作ってはなりません」

各薬物別に効力の過去と現在について詳しく見ていきます。

大麻

デザイナー作物に対する需要が増加したため、大麻は過去10年で極めて強力になってきました。大麻は全国的に非犯罪化され、革新が盛んになっています。この現象を調査したのは、ミシシッピ大学の効力監視プログラムで、全国で警察に押収された薬物を調べました。
(アメリカ国内で研究を許されているのは実はミシシッピ大学のみなのです。)

メキシコが主な大麻の国外供給源ですが、大麻が多くの州で合法化されたのに伴い、アメリカでも栽培数が急増しています。DEAによると、メキシコ産大麻の品質はアメリカよりも低いですが、麻薬カルテルは競合できるように品質を向上させていることが報告書に示唆されています。

2015年、通常の大麻の花が持つ平均的なTHC濃度は11%でしたが、押収データによるとこれは1995年の3倍です(効力とは使用者に作用するのに必要な投与量です。一方、純度はサンプル内の薬物量のことです)。検査された中で最も高いTHC濃度は37%でした。

ブタン・ハッシ・オイル(BHO)、シャッター、バター、ロジンなどの名前で知られる大麻濃縮物はさらに強力で、大学の押収データによると2015年の平均純度は56%でした。大麻濃縮物はヴェポライザー、食用品、錠剤、ローションに含まれており、合法化された娯楽用大麻を体験する新しい、または実験的な使用方法です。一部のハッシ・オイルは90%以上の濃度があった、と報告されています。

合法市場は通常の効力レベルよりさらに高く、2017年のランド研究所の調査によると従来の大麻では20%、ワシントン州で一般的な濃縮物では60%でした。

大麻が合法の州で今後大麻の使用を考えている人は、過去に吸ったことのある大麻と今の大麻は違うことを覚えておく必要がある、と専門家は述べています。「純度が非常に高くなっているので、ダメージとなるリスクがあります」ロデリックは言います。

ランド研究所のパキュラは、さまざまな形態で勧めることのできる大麻の標準的投与量を特定するために働いている専門家グループの一員です。大麻が未だに連邦法によって違法とされているため、この分野に関する研究は不足しています。

メタンフェタミン(覚せい剤)

10年前、アメリカで入手可能だった覚せい剤1グラムの純度は39%でした。米国法がメタンフェタミンを生成するのに必要な前駆的化学物質の販売を規制したとき、メタンフェタミン生産は国内の自宅ラボから麻薬カルテルが運営するメキシコの巨大ラボに移りました。しかしその消費は、全国ならびにサンディエゴ郡で根強い基盤を持っています。

メタンフェタミンは最近ではほとんどピュアな形態で販売されています。2016年の純度は93〜96%で、価格も低く安定していることから、供給過剰になっていることがDEAによる2017年全国薬物脅威評価書から分かります。2016年、93%の純度を持つメタンフェタミンは1グラム58ドルで販売されていました。

規制当局によると、価格の下落に対抗するために、組織は東海岸に向けて、また新たな使用者に向けて販売しようとしています。メキシコのラボもまた、中国からの前駆的化学物質の輸入に頼らなくて済むように、新たな製造方法を考案しています。中国とメキシコは綿密に精査されている供給プロセスである、とDEAは報告しています。

調査・処理データは、覚せい剤への需要が高まっている可能性を示しています。メタンフェタミン攻撃部隊の2016年報告書によると、サンディエゴでは過去5年間で、メタンフェタミンによる死、報告されている使用量や供給力が増加しています。

フェンタニル

フェンタニルは数十年間にわたり、臨床現場で鎮痛剤や麻酔薬として使用されてきた処方薬で、ヘロインの50倍強い合成オピオイドです。

アメリカ違法市場のフェンタニルの大半は、メキシコのカルテル・ラボで製造されるか、中国から比較的少量が郵送されています。フェンタニルを他の薬物に混ぜたり錠剤にしたりするのは複雑ではありませんが、アマチュアのミクソロジストが行うことでより使用者に対する致死性が高まります。ケシから生成されるヘロインより製造が安く、また簡単です。フェンタニルは、路上ではオピオイド中毒者に向けてヘロインまたはオキシコドン剤と偽って販売されることが多いです。

サンディエゴのアメリカとメキシコの国境で欧州されるフェンタニルの純度は通常4〜6%で、すでにカルテルによってかなり希釈されている、とロデリックは言います。中国から郵送される少量の方が純度は高く、時には90%以上になることもあるとDEAは報告しています。

サンディエゴ郡におけるフェンタニル1キログラムあたりの卸売価格は約3万1000ドルだ、とロデリックは述べました。国境から遠ざかれば遠ざかるほど価格は高くなります。「サンディエゴでは、全国の他のどのDEAラボよりも多くフェンタニルを押収しています」

ヘロイン

サンディエゴ郡のヘロインはもっぱらメキシコ産です。メキシコにおける農業生産が急増しているため、メキシコはアメリカに対する主なヘロイン供給源です。

メキシコ産の粉末ヘロインは極めて純度が高く、特に東海岸では通常の40〜50%希釈されたものよりも純度が高いことが検査で明らかになっている、とDEAは報告しました。2015年時点で、サンディエゴのヘロインの純度は35%で、過去数年かけて純度が高くなり続けています。

メキシコ産の黒いタール状のヘロインはサンディエゴで従来使用されてきたヘロインでしたが、最近ではオピオイド蔓延の結果として精製された白または茶色い粉末ヘロインに取って代わられています。「処方薬使用者は黒いタール状のヘロインは欲しくないのです。黒いものは不快に見えますから、もっと見た目が良いものが欲しいのです」とロデリックは言いました。

「チャイナ・ホワイト」として販売されるデザイナーズドラッグは、以前はヘロインを意味していましたが、現在ではフェンタニルかそれ以上に強力なフェンタニル派生物を意味するようになりました。

「違法フェンタニルおよびヘロイン市場はとても絡み合っているので、フェンタニルがどれくらいヘロイン市場占有率を得ているのか判断するのは難しい」DEAは2017年の評価書でそう述べています。

コカイン

コカインは1970~1980年代の全盛期以降、再びファッション業界に戻ってきているようです。

「コカインは本当に大きく復活しています。純度も価格も高騰するでしょう」とロデリック。オピオイド中毒者は最近コカインに惹かれており、ヘロインとコカインを混ぜて薬物の刺激効果と鎮静効果を調整した「スピードボール」が再び人気を集めていると言います。

違法な作物を合法的な作物に変更すれば農家に支払うことを約束した空中燻蒸・報奨金計画の終焉とともに、コロンビアにおけるコカ生産は近年増加しています。

アメリカにおけるコカイン1グラムの平均的純度は45〜49%と過去数年間にわたって比較的安定していますが、昨年は56%まで上がりました。それ以来、価格は1グラム165ドルに下がっています。

「コカイン生産と国内価格の関係は弱いにもかかわらず、2007年以来、アメリカにおける平均年間コカイン純度はコロンビアのコカイン生産と比較的強い結びつきを保ってきました。薬物市場内の競争や利用人口の変化を含む他の要因が、過去に認知されていたよりも大きな影響を国内価格に与えている可能性があることを意味しています」とDEAは報告しています。

こういった情報が公開されるのもアメリカが薬物の消費大国であるからですが、絶対に薬物を摂取してはいけません。ヘンプや大麻草は植物であることや薬理効果が研究で立証されていますが、その他の薬物認定をされているものは、人生を確実に破滅させてしまいます。

日本人でも薬物の再犯率は他の犯罪と比べて非常に高いこと、自身を含め周りの人にとっても悪影響を及ぼします。現実を直視し、誘惑があってもNOと言える、正しい姿勢を持ってください。

参考:SanDiegoUnionTribune