CBDとは何か?

初めてカンナビジオール(CBD)が分離されたのは1940年のことです。イリノイ大学ノイス科学研究所で、化学者ロジャー・アダムス、マディソン・ハント、J・H・クラークが成功しました。この実験の前まで、大麻から特定されている唯一のカンナビノイドは、カンナビノール(CBN)だけでした。科学者はインドで調達したハシシの標本からCBNを特定しました。CBNこそ、科学者が ミネソタ州に自生する野生のヘンプに探し求めていた化合物でした。

ヘンプの芽は実験室でエタノールを用いて抽出・蒸留され、赤みを帯びたオイルが生成されました。科学者はCBNが含まれなかったことにショックを受けましたが、定性試験は他の似たような化合物(フェノール)の存在を示しました。さらに、1940年の分析化学は現代ほど発達していなかったので、CBDの構造を明らかにするためにさらなる定性試験が実施されました。アダムスその他は、大麻のなかにはCBNやCBDに構造上似ている化合物が他にも多く存在する、と理論付けました。後にTHCを含む多くの他の化合物が大麻から抽出され、特定され、この理論は事実であったことが分かりました。国際純正・応用化学連合(IUPAC)有機化合物命名法によると、カンナビジオールの化学名は、2-[(1R, 6R)-3-メチル-6-プロップ-1-エン-2-イルシクロヘックス-2-エン-1-イル]-5-ペンチルベンゼン-1, 3-ジオールです。この化学名(少し長くて言いにくいですが)は、正確なカンナビジオールの化学構成を表すもので、カンナビジオール構造に含まれる全ての官能基が挙げられています。

大麻の抗菌作用によって科学者が謎に包まれた分子に気づく

チェコスロバキアのオロモックにあるパラツキー大学でクレイチーとシャンタヴィーが、大麻草のアルコール抽出物に抗菌作用があることを発見しました。さらに、この抗菌作用を持つ分子がCBDの前駆体であるカンナビジオール酸(CBDA)であることを実証しました。このとき初めて大麻草の酸性カンナビノイドが発見され、今日私たちが知っているカンナビノイドの生合成経路の理解へ道を開きました。

CBDの生合成

カンナビノイドは2つの経路の集合から生成されます。ポリケチド経路(オリベトール酸の起源)とプラスチドMEP経路(ゲラニルピロリン酸の起源)です。ゲラニルピロリン:オリベトール・ゲラニル転移酵素と呼ばれる酵素が、ゲラニルピロリン酸とオリベトール酸間の反応に触媒作用を及ぼし、カンナビゲロール酸(CBGA)を作り出します。CBDAシンターゼと呼ばれる酸化シクラーゼが、CBGAからCBDAを形成する立体特異的酸化的環化を行います。その後CBDAは、CBDを形成するために脱炭酸化されます。これが植物内で起こるのは部分的ですが、CBD生成における製造過程の一部でもあります。

重要な化学的特性

CBDにおける2つのヒドロキシル基は、水素結合供与体および受容体として作用する能力を与えますが、水などの極性溶媒でCBDが分解されるには十分な極性がありません。CBDは有機溶媒のエタノール、メタノール、ジメチル・スルホキシドおよびジメチルホルムアミドに溶けやすいです。好都合なことに、CBDは液体二酸化炭素にも溶けやすいです。液体二酸化炭素は、 CBD製造過程で、より環境にやさしい溶剤として広く利用されています。CBDの溶融点は66℃なので、CBDは室温では結晶性個体です。沸点は180℃(一方THCの沸点は157℃)です。結果として、CBDを気態に変換させ肺にいれるために蒸気化を投与方法として使用する人は、蒸発温度を高温(180℃より高温)に保たなければなりません。カンナビジオールは紫外領域で光を吸収し、吸収ピークはそれぞれ209および275ナノメートルです。2つの吸収ピークを持つのはフェノール化合物の特徴で、CBDはテルペンフェノール化合物なので、光の吸収ピークを2つ持ちます。CBDを光に当てると、電子が最高被占軌道(HOMO)を最低空分子軌道(LUMO)へ促します。CBDは紫外領域で2つのピークを示すので、2つの電子遷移が起こります。理論物理学の創始者マックス・プランクが考案した方程式によると、2つの電子遷移のエネルギーは光の波長に比例します。

物体の色は、物体が吸収、伝達、反射する光の波長における決定要因です。純粋なCBDの結晶は白色なので、CBDは全ての可視光スペクトラム(400〜700ナノメートル)の光を反射していると推測することができます。白い光は全ての異なる光の波長の複合だからです。

CBDとCBDAの分解

1974年、熱心なカンナビノイド科学者アーノン・シャニとラファエル・メコーラムが、ハシシからカンナビエルソン酸A(CBEA-A)、カンナビエルソン酸B(CBEA-B)と呼ばれる2つの分子を分離しました。さらなる実験を経た2人は、これらの化合物は光によって活性化される反応であるCBDAの酸化的環化によって形成された、と推定しました。さらに時間の経過とともに、大麻草が強い光に露出されると、CBDAはCBEA-AまたはCBEA-Bに分解されます。これらの分解物が脱炭酸を経るとカンナビエルソン( CBE)を形成します。CBEはCBDの代謝産物であることが、モルモットを使った研究で特定されましたが、これまでCBEに関する重大な薬理活性は分かっていません。

出典:Endoca