若者の合成カンナビノイド使用の危険因子とは

若者の合成薬物使用を調査する国家プロジェクト

スパイス、K2、スクービードゥーなど様々な名称で呼ばれている「合成カンナビノイド」。法の抜け道として、昨今ではしばしば嗜好されている。違法薬物に代わり、法律に触れないため、流通しているこの合成カンナビノイドだが、2009年1月から2012年4月まで合衆国で中毒症状が実に11561件も報告されている。

とりわけティーンエージャーにもてはやされているこの合成カンナビノイドは、2011年には重大の10人に1人以上が使った計算になった(ティーンズ全体の11.4%)。

本物の大麻草の次にもてはやされているというこの合成カンナビノイド。このたびニューヨーク大学の薬物使用およびHIVリサーチセンター(CDUHR)の新たな研究対象となった。ティーンズの合成カンナビノイドしようによるリスク因子について調査が行われたのである。

若者のカンナビノイド使用傾向を把握するために

今回の大規模な研究を率いるのはCDUHRのジョセフ・J・パラマー博士。ニューヨーク大学のランゴーン医療センターで助教授も務めている専門家だ。

国家的なプロジェクトである本研究に関し、パラマー博士はその意義について次のように言及した。

「合成カンナビノイドの使用率は、昨年から減少し始めていますが、薬物というのはまだまだかなりの脅威をもたらすものです。どのような十代の若者が、使用に際して高いリスク因子を背負っているのかをはっきりさせることが先決でした。」

この「合衆国高等学校における合成カンナビノイド使用のサンプル調査」研究は、「将来的モニタリング(MTF)」のデータを用いており、国家規模で、アメリカ国内の高校生全校内の行動や姿勢、価値観を1年にわたって調べるものである。

全米48州の約130もの私立・公立高校で実施され、およそ15000人の高校生を年毎に調査した。11863名の学生から集められたデータは、2011年から2013年にわたる天然および合成カンナビノイドの使用に関する様々な質問事項から抽出されたものである。

人種や性別との相関関係

こうした大規模な調査研究により、興味深い結果が引き出された。
まず、研究者らが指摘するのが、人種や性別による特徴だ。女子と比較して、男子は合成カンナビノイドの使用により、常時より高いリスクを有していることがわかった。さらに、男子は女子よりも、合成カンナビノイドの使用が頻繁である。

また人種別に見ても、注目すべき相関関係が浮き彫りになっている。アフリカ系学生はヨーロッパ系学生に比べると、合成カンナビノイド使用率が42%低い。天然・合成関係なく、カンナビノイド使用の割合についてはアフリカ系がヨーロッパ系より36%低いということである。

10代の合成カンナビノイド使用調査で興味深い結果

ニューヨーク大学の薬物使用およびHIVリサーチセンター(CDUHR)による、ティーンズの合成カンナビノイドしようによるリスク因子についての調査では、人種や性別との相関関係が浮き彫りとなった。

女子よりも男子が、合成カンナビノイドの使用により、常時より高いリスクを有しており、男子は女子よりも、合成カンナビノイドの使用が頻繁であるということだ。

また、アフリカ系人種の学生はヨーロッパ系人種の学生に比べ、合成カンナビノイド使用率が低い。

他の嗜好品常習もデータと相関

この結果について、パラマー博士は次のように言及する。

「ただ、ほかの薬物を使用するケースも考慮すると、マイノリティ人種であることが要因なわけではありません。このデータは、週に4日から7日、遊ぶために夜間外出するような学生が、興味本位で薬物に手を出し、継続使用に染まっていくリスクを表すものでもあります。これについては、より突っ込んだ研究が必要ですが、毎晩遊び歩いていて薬物を使う若者が増えていることがわかりました」

今回の結果を受けて、合成カンナビノイドを使用者の多くが、もともと他の物質を試していた若者であることがわかった。ことにアルコール常飲者は、使用率が実に2倍となる。

喫煙は合成カンナビノイド使用のリスクを増やす要因だ。特に過去・現行にわたる習慣的喫煙は、合成カンナビノイドのリスクを倍にする。

ゲートウェイドラッグとしての合成カンナビノイド

重要なのは、大麻使用の頻度こそが、合成カンナビノイド使用率を増やす一番の要因となっている点である。

「一番の発見は、天然大麻草の未経験者は合成カンナビノイドに手を出すことがほとんどないというデータで、その数たったの0.5%でした。天然か合成かの詳細は別としても、大麻使用者がリスク要因を有していることは間違いありません」

合成カンナビノイド使用者の多くが、逮捕される危険性がある薬物に手を出しやすく、違法薬物使用者との結びつきを生みやすいと、パラマー博士は指摘する。

今回の研究結果は、薬物使用を妨げようと尽力する国や地域にも通達された。合成カンナビノイド使用が、天然大麻やその他の違法薬物使用への入り口となっているのか否かを調べるには、さらなる調査が必要だと研究者は言う。

嗜好品としての大麻使用が合法とされる州で、ティーンエージャーはリスク面を認識しているのかどうか。その点も含め、今後もより詳細なデータ収集が必要だ。