脳のカンナビノイド受容体に忌まわしい記憶を制御する機能か

ヨーロッパで脳のカンナビノイド受容体の研究報告

記憶というのは、実は単純に思い出がひとつの箱に入っている、というわけではない。もっとも重要な記憶の役割、それは生物の安全システムとしての機能である。

「忌まわしい記憶」もまた、安全システムのひとつなのだ。一度すでに立ち向かい、いやな経験をしたという記憶を使って、脅威を避けることができるからである。

今回、脳のカンナビノイド受容体が、こうしたネガティブな記憶を制御するという事実が報告された。研究を行ったのは、フランス国立保健医学研究機構 (Inserm)とボルドー大学の研究員たち。調査は、雑誌「ニューロン」で発表されている。

「いやな記憶」の役割とは

人は危険に直面すると、まずはその場で重要な選択に迫られるわけだが、この選択いかんにより、その個人の運命が決定づけられてしまうこともある。例えば、火災報知器が鳴り出したとしよう。

我々はとっさに判断する。報知器の音に反応し、即座に逃げること。これはその前に、同じ状況に置かれたり、避難訓練を行っていたという記憶が発露になっての行動である。

同様に、過去自分の健康を脅かしたと考えられる食べ物や飲み物は、当然、摂らないなり、避けるなりするだろう。
このように、自分の行動を調節する「記憶」は、体に備えられた神経学的メカニズムなのである。

危機的状況の回避システム

この嫌悪感と強く紐づけされている記憶は、我々にとっては大切な緊急時用のプロセスの鍵となる。そして、潜在的な危険を避け、危機を乗り越えるために、我々の身体を効果的にコントロールしてくれる働きを持つ。

こうして危機的状況から逃げやすくなるよう、記憶は生理的反応を促してくれるのだ。
脳の中心に存在する手綱内側核と呼ばれる部位があり、ここ数年、その機能の研究が大変注目を集めている。この手綱内側核の神経に存在する内因性カンナビノイド・システムを研究するのが、ジョヴァンニ・マルシカーノ率いる研究チームだ。

手綱内側核のCB1受容体にアプローチ

脳の中心にある手綱内側核。この手綱内側核の神経に分布している内因性カンナビノイド・システムにフォーカスし、ジョヴァンニ・マルシカーノを長とする研究チームが研究プロジェクトを進めた。

この手綱内側核の神経に存在する内因性カンナビノイド受容体が、タイプ1と呼ばれレセプターである。この受容体はカンナビノイドによって制御され、主に精神状態に影響する構成要素である。

危険信号に対するマウスの反応を見る

まず、チームはマウスの体調を整えることからスタート。これは、マウスが音やにおいといった、特定の危険信号にきちんと反応するよう、健康状態を良好にするのが目的である。

さらに、そこから手綱内側核のカンナビノイド受容体が不足しているマウスと、きちんと受容体が分布しているマウスの比較実験を始めた。

音やにおいを使った危険信号を発した時の2種類のマウスの様子は、次のような感じであった。まず、健康なマウスが、信号を認識して、恐怖や反発を表明したのに対し、受容体不足のマウスには反応が見られなかったのである。

手綱内側核はふつう、二つの分子、アセチルコリンとグルタミン酸塩を含有している。チームの分析によると、神経伝達のアンバランスは、アセチルコリンの作用に依拠するものだという。

アセチルコリンが鍵となる

フランス国立保健医学研究機構の研究長ジョヴァンニ・マルシカーノ氏が解説する。

「今回の調査により、特に手綱内側核にだけ存在する内因性カンナビノイド・システムが、嫌な記憶の出現をコントロールしているということがわかりました。この場合、ニュートラルな記憶、ポジティブな記憶には作用しません。神経回路にあるアセチルコリンだけを選択的に調節するのです。」

こうした特定の記憶の制御は、感情的なプロセスを伴う障害…鬱や不安症、薬物中毒といった問題の改善には不可欠な要素だ。そのため、結果として、手綱内側核の内因性カンナビノイド・システムが、こうした障害の治療の鍵となるのではないか。今後が注目される。

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