CBDオイルとテルペン

カンナビノイド成分とテルペン成分の重要性が見出されつつあります。イーサン・ルッソ博士が提唱しているように世界ではカンナビノイドの効果と深い関わりがあるテルペン成分の研究が進んでいます。そこでCBDオイルとテルペンの効果について解説します。

CBDオイルとは

CBDはカンナビジオールの略称で、カンナビス植物(大麻草)に含まれる、生理活性物質のカンナビノールの一つです。

カンナビス植物含まれる成分として最もよく知られている違法ドラッグのテトラヒドロカンナビノール(THC)とは違い、向精神性がなく、日本をはじめとする多くの国で合法です。

近年、CBDはてんかんの発作の制御(抗けいれん薬)、吐き気の抑制(制吐剤)、腫瘍および癌細胞の増殖抑制(抗腫瘍性)、不安や抑うつの軽減(抗不安薬)、精神病性障害の軽減(抗精神病薬)、炎症性疾患の抑制(抗炎症性)、慢性疼痛の軽減(鎮痛剤)などのさまざまな効果があることが明らかになってきており、医療分野での利用の可能性が期待されている注目の成分です。

CBDオイルは、THCをほとんど含まず、CBDを豊富に含むカンナビス植物の系統から、主に超臨界二酸化炭素抽出法で抽出されたオイルで、CBDを豊富に含むほか、ミネラル、ビタミン、脂肪酸、アミノ酸、その他の生理活性物質など、さまざまな成分が含まれています。

その中でも、テルペン類はCBDオイルの効果に影響を及ぼす重要な成分です。ここでは、そのテルペン類とCBDオイルとの関係について詳しく調べてみましょう。

テルペンとは

テルペン類は植物、昆虫、菌類などに含まれる脂溶性の有機化合物の総称です。よく知られているものでは、緑黄色野菜に含まれているカロテンや、レモンなどのかんきつ類の清涼な香りのリモネンもテルペンの一種です。

テルペンの多くは、香り、色、味に寄与しており、エッセンシャルオイルや香料などの重要な成分となっています。また、昆虫や植物のホルモンなどをはじめとして、その多くが生理活性を持っており、さまざまなサプリメントなどにも有効成分として含まれています。

アントラージュ効果

テルペンは、生理活性を持っており、単独でも様々な効果が期待できますが、CBDオイルにおいては、テルペンの単独での効果だけでなく、CBDの作用を高める効果が注目されています。

これまでの研究により、同じ量のCBDを摂取しても、合成された単分子のCBDを摂取した場合と比べて、天然の抽出エキスで摂取した場合の方が、より効果が高いことが明らかとなっています。

さらに、単分子のCBDの場合は、摂取量がある量を超えると、逆に効果が低下することが知られていますが、抽出エキスの場合は、CBDの摂取量が増加するにつれてその効果も強くなることも明らかになっています。

これは、天然の抽出エキスには、CBDだけでなく、他のカンナビノイドやテルペン類、ミネラルやビタミンなどが豊富に含まれており、これらの成分との相互作用によるものと考えられています。

この効果を、アントラージュ効果といい、特にテルペン類が重要な役割を果たしていると考えられています。

内因性カンナビノイドシステムとテルペン

体の中には、アナンダミドと2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)など、カンナビス植物に含まれるカンナビノイドと構造がよく似た、内因性カンナビノイドと呼ばれる化合物が存在しています。

これらの化合物は、脳などの中枢神経系に多く存在するカンナビノイド受容体1および体全体に存在するカンナビノイド受容体2に結合し、体の調節に関与しており、これらの調節機能が関与する疾患として、多発性硬化症、神経性疼痛、がん、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、メタボリック症候群、うつ病などさまざまなものが知られています。

CBDなどのカンナビノイドは、内因性カンナビノイドと同様に、カンナビノイド受容体に結合し、体の機能を調節することで、さまざまな症状を軽減させる効果があります。

テルペンは、カンナビノイドの受容体の働きを阻害したり、活性化したりすることにより、CBDの作用に影響を与えます。また、カンナビノイドは脂溶性であり、吸収率があまり良くないのですが、テルペンの誘導体のテルペノイドの中にはカンナビノイドの吸収を高める効果があるものもあります。

さらに、カンナビノイドだけでなく、テルペン類のうち黒コショウやオレガノなどのハーブ類などに含まれるβカリオフィレンはカンナビノイド受容体2に結合し、炎症を引き起こす炎症性サイトカインの生成を抑制することで、胃潰瘍などの炎症性の疾患や、自己免疫疾患の治療に効果があることが明らかになっています。

テルペンの種類

テルペンは、主に炭素と水素から成る炭化水素の仲間で、さまざまな種類が知られています。CBDオイルに含まれる、テルペンはCBDの効果を助けるほか、単独でも様々な効果を持っています、代表的なテルペンについて、それぞれの効果をご紹介します。

ミルセン

ミルセンは、カンナビス植物に最も多く含まれるテルペンで、カンナビス植物の他にもタイムやレモングラス、バジルなどのハーブに含まれています。脳は、有害な物質を排除するために、脳血管関門で多くの物質が脳に侵入を防いでいます。

ミルセンは、CBDやTHCなどのカンナビノイドが脳血管関門を通過するのを助け、脳に存在するカンナビノイド受容体に作用しやすくして、カンナビノイドの生体利用効率を高めてくれます。
また、ミルセンには、糖尿病の症状の軽減や鎮痛効果があることが知られています。

β-カリオフィレン

カリオフィレンは、カンナビス植物のほか、ブラックペッパーやクローブなどに含まれるテルペンです。

β‐カリオフィレンはテルペンの中でも特に、カンナビノイド受容体に直接作用し、炎症を抑える働きがあるテルペンです。このため、β‐カリオフィレンはテルペン類の中でも、もっとも薬理効果の高い化合物であると期待できます。

リナロール

ラベンダーの代表的な成分である、フローラルな香りをもつリナロールは、リラックス効果を高める作用があります。

うつ病や不眠に効果があるため、アロマテラピーにもよく使われます。また、リナロールは、グルタミン酸塩やGABA神経伝達物質を調節することで、鎮静、鎮痛、発作制御作用を持ちます。

α-ピネン、β-ピネン

ピネン類は、松やローズマリーなどに含まれる香り成分です。抗菌性、抗炎症性があり、また、低濃度で吸引した場合は気管支の拡張作用があるほか、記憶力を高める効果があることも知られています。

リモネン

カンキツのさわやかな香りの成分で、自然界に広く存在するテルペンの一つです。抗炎症性、抗菌性、抗真菌性を持つほか、がん細胞の細胞死を引き起こしたり、コレステロールを含む胆石を分解したりする効果があります。さらに、さわやかな香りにより、不安やストレスの緩和に効果があります。

β-フェランドレン

フェンネルやトドマツなどに含まれるテルペンで、わずかにカンキツの香りがするペパーミントのようなさわやかなにおいの成分です。腫瘍に作用することが期待されており、CBDと共にがんの治療に役立つことが期待されていますが、作用のメカニズムなどの詳細については、まだ明らかにはなっていません。