ジャハーン・マーキュ・インタビュー:大麻の研究所検査&安全性手順

ジャハーン・マーキュはASA(アメリカンズ・フォー・セイフ・アクセス)における患者中心の認証プログラムの主任監査員です。インタビューでは、研究所検査や安全性手順、 有害事象報告ならびに大麻業界における規制基準について議論してくださいました。動画のスポンサーはケア・バイ・デザインです。

プロジェクトCBD:本日はジャハーン・マーキュをお迎えしています。ジャハーンはプロジェクトCBDの科学顧問でもあります。ジャハーンはテンプル大学でカンナビノイド受容体の構造および活動に関する論文を執筆し、博士号を取得しました。また大麻に含まれる化合物の抗がん作用を記録した極めて重要な科学論文にも関与しています。ジャハーンは現在、アメリカンズ・フォー・セイフ・アクセス(ASA)の主任研究員で、ASAにおける患者中心の認証プログラムの主任監査員です。そのことについても後ほどお話を伺います。また、米国化学学会、大麻を薬とする国際協会、米国植物製品協会など、さまざまな事業者団体委員会の一因でもあります。本日はお越し頂き、ありがとうございます。

最初に大麻と安全性手順について伺います。「リーファー・マッドネス」に惑わされていない人々において、大麻は安全な物質だと幅広く認識されています。実際に、前DEA(麻薬取締局)行政法務官であるフランシス・ヤングは法的文書において、大麻は私たちが口にする多くの一般的な食品より安全であると述べています。大麻がそれほど安全なら、なぜ大麻業界において安全性に関する規制や基準を設定するのが重要なのでしょうか?

ジャハーン:良い質問ですね。もっとも根本的な答えはそれが規則だからです。私たちの国では、人が摂取するものを販売する場合、安全性の検査をする必要があります。要約すると、それが単純な規則だからです。

プロジェクトCBD:では安全性手順に基準を設定することに関してはどんな意味があるのでしょうか?この場合の「基準」とは何でしょうか?

ジャハーン:通常、基準は成功事例としてスタートします。米国植物製品協会(AHPA)などの団体が数年前に、業界人やさまざまな株主、実験室のオペレーター、患者支援者らが集まり、基準について議論する委員会を始めました。優れた製造業者とは何か?優れた栽培者とは何か?優れた大麻薬局とは何か?優れた実験室とは何か(おそらく医療大麻基準において最も重要な要素)?という風に。

これらのベストプラクティスが採択されます。そしてAHPA基準などに見られるように、これらの基準は米国植物薬局方基準とともに11州で採択されました。何度も採択される法律があれば、それが基準になります。そこで定められるのは例えば、製品に含まれる重金属や鉛の限度量であったり、残留農薬または真菌の限度量だったりします。食品店でサラダを購入したり、別のお店でビタミンCサプリや植物抽出エキスを購入したりするときに定められているのと同様の基準です。人間による消費を意図して製造された製品には、一定レベルの安全性が期待されます。これらの製品は動物に与えることを意図していません。シャツや自動車用燃料のために作られていません。人間の食用を意図して製造されています。

「品質」という言葉が意味することに関しては混乱も生じています。品質は、純度のことを指しています。また品質は、潤滑油や毒などの製品を表現するのにも使用される用語です。全てのものに高品質な製品が存在します。しかし、純度や一貫性が意味することについて理解しなければなりません。医療大麻製品が広まり、人々がそれを使用するなか、多くの医療大麻使用者が繰り返し使いたくなるような一貫性のある製品を探し求めています。そこへ新たな研究が入ってきます。

治療法が存在しない稀な疾患は6000以上あります。これらの疾患に対する治療法を開発したいと考えたとき、長期調査に利用することのできる標準化された医薬品があった方がいいのです。これは基準が業界にとって意味することの一つの手段に過ぎません。基準は、現在入手不可能な長期的臨床試験の実行に役立ちます。

プロジェクトCBD:大麻は連邦政府によって違法とされる物質、ハーブです。医療大麻が一部の州でしか合法化されておらず、また成人利用が合法化されたのはごくわずかな州のみである場合、どうやって全国的に適用できる基準を設定するのですか?基準を開発・実施することに関する障害はどのようなものですか?

ジャハーン:素晴らしい質問です。米国植物製品協会やその他標準化団体が関わっているのは、これらの団体がDEAによって規制されていないからです。植物から発見された物質で合法的な薬を作るのはこれが初めてではありません。過去にも例があります。例えば、ケシという植物がありますが、それからアヘンやモルヒネが作られましたし、ケシを調べていた際に内因性のシステムが発見されました。これらの物質に関しても規定や基準があります。興味深いのは、一部の機関は基準の発令を阻止されています。USP(米国薬局方)は政府機関ではありませんが、医薬品承認基準を発行すると、薬剤師に一定の能力を与えます。例えば、薬剤師は物質から化合物を作ることができるようになります。USPは大麻の分類が変更されない限り正式な医薬品承認基準を発行することはできません。DEA基準の遵守ができなくなってしまうからです。しかし、米国植物製品協会はDEA基準を順守する必要はありません。分析標準を開発しているAOAC(米国公的分析法)などの団体は、DEAと直接協力する必要はありません。DEAの方が法医学検査の助けを求めて来ることはあるかもしれませんが。いつかUSPが全ての州に適用される標準を設定してくれれば、全ての問題が解決するでしょう。しかし現実的には、このプロセスには時間がかかるでしょう。この医薬品承認基準とAHPA基準が、一貫性に関して業界の基礎を提供しています。

プロジェクトCBD:AHPAとは米国植物製品協会のことですね。あなたが関わっている医薬品承認基準についてもう少し詳しく教えてください。

ジャハーン:AHPAはさまざまな植物に関して約28の医薬品承認基準を設定してきました。これは、植物薬基準を満たすための識別・栽培・製造に関する基準であり、また投与に関する手引きです。ほとんどの人が大麻をすぐに識別できますが、イロハモミジやアサ科に属する複数の植物など、同じような葉の構造をしている大麻に似た植物はたくさんあります。概念的な例えを挙げると、見た目からも化学分析からも植物を識別するための標準的手段が必要だとします。それが医薬品承認基準です。医薬品承認基準には、検査基準、残留用剤などの検査限界、農薬、真菌、細菌含有数を特定するための識別方法などが含まれます。規定文書を批判する人も一部いますが、これらの承認基準の作成には100人近くの人が関与しています。古いことわざにもあるように、100人の人がこれだと主張するのであればそれは意味があることなのでしょう。特に、基準作成に携わる人々は皆、異なる分野の専門家たちです。例えば、この医薬品承認基準はイーサン・ルッソ、マハムード・エルゾーリー、ラファエル・メコーラム、アッペンディーノラによって定められました。そのリストはさらに少し難解になりますが、ここで言いたいのはこれらの専門家はFDA(食品医薬品局)、USDA(農務省)などに働きかけてきた人々で、再調査したり編集したりして基準作成に貢献してきたのです。

プロジェクトCBD:科学界の指導的立場にある人たちですね。

ジャハーン:その通りです。個々のカンナビノイドとその効果に関する情報を含む医薬品承認基準の最終検閲者のひとりは、現在世界で最も多く出版をしている薬理学者のヴィンセンツォ・ディ・マルツォです。彼はエンドカンナビノイドとカンナビノイドに関するものだけで500以上もの出版をしています。

プロジェクトCBD:検査について聞かせてください。検査を行う実験所の信頼性へと行き着きますよね。あなたはASAにおける患者中心の認証プログラムでの業務を通じて、こういった実験所などの監査に携わってきました。一貫性に関して大麻コミュニティに情報を提供している実験所についてどうお考えですか?まだ解決すべき問題は多いのでしょうか?それともこれに関しては優れた業務が成されていますか?これらの実験所を監査する際に分かることは何でしょうか?

ジャハーン:一部の実験所は規制される準備が完全にできています。また一部の実験所は州当局からすでに査察を受けています。例えばワシントン州では、消防局など一部の機関から査察を受けています。とはいえ、一般的に運営担当者にとって最大の課題は、規制当局による査察に対して従業員に準備させることです。これは警察と協力することとは異なります。また他の市政機関と協力することとも異なります。監査人による査察を受け、書類を調べられることは、一部の人にとって新しいコンセプトなのだと思います。

プロジェクトCBD:大麻業界に従事する実験所が始まった時には無かったかもしれない、一定レベルのプロ意識を暗示させますね。

ジャハーン:最初にすべきなのは、実験所がベストプラクティスを認めなければならないことだと思います。一部の実験所はこの観察において優れた業務を行っています。例えばその他実験所が基準を作りたいと考える時、彼らは医薬品承認基準の作成が19年間にわたるプロジェクトで、複数の段階を経ていることに気づかないのです。基準は一夜で作成されるものではありません。時間がかかるんです。どんな機関であっても最初の方式を発表するまでに5〜10年はかかります。物事を科学的に有効とし、一貫性のあるものとするためには、実験所は一連の基準に同意することを受け入れなければならないと思います。歴史的瞬間となりますよ。これは医療大麻実験所が解決しようとしているプロセスにある科学的問題ですが、同時に分析化学における政策、規則、飛躍的進歩を表すものであり、人類学的でもあります。今こそ歴史的瞬間なのです。後になって振り返ったとき、実験所がどれほど精密に大麻を検査できるようになったか驚くでしょう。

プロジェクトCBD:ISO認定を受けている実験所があります。ISOが表すものは何ですか?これは最高レベルの認定なのでしょうか?それとも実験所が首尾よく機能するために必要な基準面なのでしょうか?そこにどのように基準が当てはまりますか?

ジャハーン:ISOは国際的な基準です。ATOAは、ISO施設に出向き、その場所がISOに準拠しているか調べる査定人を多く訓練しています。彼らには異なる規則があります。ISO17025は分析実験室のための認定です。一方で全般管理システムもあります。例えばホテルまたは警察署が一定の方法で書類仕事を管理しているか、に認定されるISO9000などです。とても重要です。例えば、ISOは実験所に有効な手法やスタッフが用いられていることを要求しますが、必ずしも従業員の訓練を対象にしたり、実験所が大麻に関する法域内で合法的に稼働しているかどうか伝えてきたりしません。ですから多くの基準が業界にはあります。他より優れているものもあれば、他より詳細なものもありますし、異なる領域を扱うものもあります。例えば患者中心の認証プログラムに関して言えば、私たちも方法確認に注意します。ISO準拠または正式認証を受けていると、データ方法論の検査がずっと簡単になるので、間違いなくPFC監査に合格するのに役立ちます。標準実施要領を更新できるでしょう。しかし私は、訓練記録やライセンス供与、建築規制、どのようにゴミを処分しているかにも注目します。有効ではないが現場で使用されている方法を調べます。私たちは全てをチェックしているようなものです。またバッチの追跡や有害事象報告も調べ、誰が何を抽出し、それがどの製品に入り、どこへ出荷されたのか理解していることを確認します。もし問題があれば、製品を追跡、またはリコールできるように。

プロジェクトCBD:問題の話が出たので、それについて教えてください。実験所の業務の一つは、有害な検査結果や事象を報告することです。プロジェクトCBDは、特定のCBDが豊富な製品に含まれているはずのない残留溶剤が入っていたと報告したとき、随分と非難されました。こういった有害事象報告に共感しますか?これは業界が利用すべきものでしょうか?それとも回避すべきでしょうか?有害事象報告は必ずしも業界にいい意味で光をあてるものではありませんよね。

ジャハーン:そうではないと思います。リコール計画に携わる事業は全て、製品の安全性に関与しています。有害事象に関する苦情を追跡する会社なら、製品をリコールするべきか、または勧告を発行すべきか、もしくはラベルを変更すべきかに関して決定します。これらは公衆衛生の問題です。そして、こういったリコールに携わる企業を非難しないことが重要だと思います。実験所は有害事象の管理人ではありません。製品の製造業者、流通業者こそが有害事象プログラムを持つべきです。そして私たちは、それに携わる企業を賞賛すべきです。なぜなら彼らはいつも間違っているわけではないからです。製品がいつも汚れているわけでもありません。コロラド州では毎週のようにリコールの話を聞きますよ。

あまり大きく報道されたり議論されたりしていないのは、実験所が有効な方法を使用しておらず、製品は安全なのに非難されるため、合格とみなされた後に発売された製品です。とは言え、この有害事象プログラムが作用しているのがベストです。そのおかげで、正当性、私たちが行なっていることに対する科学的基盤があるのですから、有害事象は避けられるべきではありません。これに関しては公開討論が成されるべきです。またこの業界の事業者らが閲覧できるような全国的保管所があるといいですね。大麻コミュニティはこれに関して自らのFDAとなる必要があるのです。大部分に関して、現在、州は大麻業界に対してFDAのように機能する余裕はありません。OSHA(職業安全衛生局)には十分な問題や作業安全検査がありますが、いずれ大麻業界に介入してくるでしょう。私たちは準備しなければなりません。自らのFDAにならなければなりません。私たちは慎重になるべきです。薬に関する警戒が欠如しているために多くの製品が市場に出回り、有害事象の追跡や対処が行われるのを見てきました。多くの場合、これは有害事象だと人々は言います。私たちは大麻が引き起こしたものなのか、単にその製品がいけなかったのか証明できません。私はそれこそが見直され、追跡されるべきだと思います。

プロジェクトCBD:FDAの話が出ましたね。以前トッド・ミクリヤ博士がFDAのことを「完全に信用を失った機関」だと言及していました。現状においてFDAが果たすべき役割は何でしょうか? FDAは最近、警告書を発行し、ラベルミスや間違った主張をしたCBDオイル企業を厳しく批判ました。この点に関して食品医薬品局(FDA)には 有効とされる役割がありますか?

ジャハーン:彼らは今も自らの役割を果たしています。あなたが触れたFDA警告書がそうです。FDAは製品のラベルを調べます。しかしFDAはDEAではありません。FDAには本質的に実験所にやってきて人を逮捕するような警官はいませんが、実験所や製造所に来てさまざまな点に関して罰金を科すような役員や担当者はいます。例えば、承認された標準実施要領の欠如、安全なハードウェア・ソフトウェアの欠如、未較正の設備などが対象になります。違反行為は483つあります。ですから今私たちはラベルの違反について話していますが、おそらく私たちもが生きている間にFDAが施設を訪れて召喚状を発行するかもしれません。それがFDAの仕事です。時にはFDAがやって来て、是正処置が完了するまで日毎の罰金を支払うか業務を停止するか迫ることもあります。

プロジェクトCBD:今の話で別の有害事象の話が出ましたね。人間が消費する製品の品質に関わりなく、大麻に関してひどい体験をする人や大麻に触れるべきではない人も一定数います。連邦当局がふれ回っている数字は、9%が大麻乱用者になるというものだったと思います。私はその数字は多すぎると思います。しかし、自分たちにとって対処が難しいかもしれない何かに露出するわずかな人々に関してはどうでしょうか?あなたが取り組む懸念に関してこの件はどう展開されますか?

ジャハーン:それに関する研究はとても困難です。なぜなら標準化された製品が含まれないからです。この情報を引き出した人々とのインタビューがあります。また大麻乱用障害または依存症を発症する人の数を表す9%という数字のうち、半数以上は所持などの罪で裁判所命令による薬物治療を受けた数から算出されたものです。実際は約5%かそれ以下でしょう。いずれ分かると思います。しかしFDA認証を受けたマリノール(ごま油に溶かした経口THC剤)やサティベックス(エタノールに溶解させたハシシオイル抽出エキス)といった大麻薬品に関しては極めて集中的に研究され、どちらも非常に乱用の可能性は低いです。実質的にブラックマーケットにおける価値はありません。これが標準化された製剤です。痛みの研究に参加するすべての患者を調べるとした場合、例えば研究が12週間に渡って5人の患者を対象に行われるとしたら、患者数と期間をかけると60週間になりますね。これに全患者年をかけると、サティベックスやマリノール、その他標準化された鎮痛目的の大麻製剤を使用する患者から約6000年分のデータが得られます。そして有害事象プロファイリングも調べます。離脱症状も調べます。また乱用の可能性についても検査します。標準化された製剤の場合、その可能性は非常に低いです。何を摂取しているか分からなかったり、投与量が高かったり低かったり、活性成分が日によって異なったり。現在、有害事象に関する最大の問題は、製品の使用方法に関する予測可能性と指導だと思います。

プロジェクトCBD:マリノールは実際、医師による処方があれば入手できる承認された医薬品で、純粋なTHC製品です。サティベックスはアメリカにおいて、がんの疼痛に関する臨床試験の第III相にありますが、複数の国で認可された医薬品です。実質的にはCBDとTHCが1:1のチンキ剤です。これら医薬品を標準化する明らかなメリットは意義深いもので、その薬を飲む人は薬に何が含まれているか知ることができ、効果があれば安心して繰り返し使用で来ます。一方で、連邦レベルで承認されるこれらの薬剤に関しては別の立場もあると思います。医療大麻法を持つカリフォルニア州やその他の州における草の根活動で展開されている医学的実験はどうなっていくのでしょうか?医療大麻の運命はどうなるのでしょうか?成人の娯楽使用合法化に向けた運動の観点から、個々のカンナビノイドを薬として利用する大手製薬会社とは対象的に、医療大麻の未来には何が見えると思いますか?

ジャハーン:最初にしなければならないのは大麻の分類変更です。スケジュールIIへの変更ですら、製薬会社が関与するための大きなインセンティブにはならないでしょう。私たちは、完全な大麻の医薬品化からとても遠いところにいます。しかし大麻の分類変更によって、実験所は必要な基準へのアクセスが得られるようになるでしょう。AOACやそのた分析基準団体などの団体は、全米における研究室間検査に関する公認参照基準を開発できるようになるでしょう。スケジュールIIのDEA許可証はスケジュールIの許可証よりずっと取得が簡単です。それによって業界をさらに強化できると思います。大麻がスケジュールIIになれば医療大麻患者の安全性も強化できますし、実験所も製造業者もスケジュールI指定によって不当に不利にされることなく品質管理により携わることができるようになります。

プロジェクトCBD:最終的にスケジュールIIで十分だとお考えですか?

ジャハーン:前向きなステップだと思います。国際的な流れを作るのには十分です。また一つの国が法律を改正するだけでなく国際レベルでそれが起こるでしょう。私たちは、UNODC(国連薬物犯罪事務局)または薬物や精神活性物質を扱うさまざまな国連団体において、極めて興味深い議論が繰り広げられる最先端にいるのです。

プロジェクトCBD:興味深いトークでした。参加していただき、ありがとうございました。

ジャハーン:ありがとうございました。

参考:ProjectCBD