ダスティン・スラク博士インタビュー:大麻の投薬

ダスティン・スラク博士は、インターグレイト・ヘルスの所長であり、Healer.comの共同創設者です。インタビューでは、大麻の投薬計画、長期的使用者に対する増感動手順、THCがもたらす精神活性性による潜在的な健康上の利点について議論してくださいました。大麻はいつでも多い方がいいとは限りません。

 

 

プロジェクトCBD:大麻対話へようこそ。私はマーティン・リーです。本日は整骨医のダスティン・スラク博士にお越しいただいています。スラク博士はメイン州ポートランドの近くにある大麻志向のホリスティック・ヒーリング・プラクティスであるインターグレイト・ヘルスの所長です。インターグイド・ヘルスはニューイングランド地方にさらに2件展開しています。スラク博士は患者や医師に役立つ情報がたくさん詰まっている非常に面白い教育サイト、Healer.comの共同創設者でもあります。本日はお越しいただき、ありがとうございます。

 

スラク:こちらこそありがとうございます。

 

 

プロジェクトCBD:大麻治療に関して患者にとっても医師にとっても困難なのが、投薬問題、疾患や症状のために適切な投薬計画を見つける方法です。スラク博士はこの分野で多く経験を積まれてきました。いわば先駆者です。博士はどのように適切な推奨投与量を決めるのでしょうか?

 

スラク:いい質問ですね。よく聞かれます。患者を診察し、大麻投薬に関して何をすべきか明確に分かっている、ということはあり得ません。薬に対する反応は人それぞれ非常に異なりますし、薬にはさまざまな種類があります。私の経験では、非常に低用量が効く人もいれば、非常に高用量でちょうどいい人もおり、その投与量の幅は大きいです。また投与方法もさまざまです。ですから、その人に適切な投与量を定めようとするのではなく、まずは開始点を与え、そして開始点からそれぞれ最適な量を定めるために増量するプログラム、方法論を提供します。

 

 

プロジェクトCBD:例をあげていただけますか?大麻初心者である患者がやってきたら、どのように対処しますか?投薬計画を開発するために用いている基準はありますか?

 

スラク:一度も大麻を使用したことのない大麻初心者で大麻に関心がある患者を診察するときは、まず大麻に関して恐れがないか確認します。そういった患者はおそらく大麻によって良い結果を得た人を知っているのでしょうが、大麻に対して少し恐れを持っています。前向きな期待感を持っている場合、そういった考え方や環境が大麻に関する体験を左右し、 体験しうる副作用に関わることがあるのは理解しています。ですからまず話し合い、通説を元にしないように説得したり、感じている恐怖に対処したりして、それと同時に患者の目標を探ります。例えば、関節炎や腰痛に悩む高齢の大麻初心者がやってきたとしたら、目標は鎮痛だったり、睡眠や機能の改善だったりするでしょう。孫ともっと遊べるようになりたい、まだ芝刈りをやりたい、のようにね。そうすると現実的な目標が見えてきます。その後最初にすることは、実際は治療量以下の投薬を始めることです。大半の患者、特に大麻初心者に最適なのは、経口投与して口内の粘膜から吸収することができる方法です。もちろん飲み込んで、消化器官から吸収することもできます。ですから、アルコールベースのチンキ剤またはオイルや、CBDとTHCが実際何mg含まれているかはっきりしているものがベストです。通常は、大半の患者に対して1:1の割合のものから始めます。なぜなら1:1の割合は非常に有効で、耐容性も良好だからです。もし過去に大麻を使用して妄想反応が出たことのある患者の場合は、もっとCBD濃度を高く、THC濃度を低くして、4:1、または8:1などにします。

 

 

プロジェクトCBD:THC濃度を高くし、CBD濃度を低くするようなことはありますか?

 

スラク:もちろんです。精神活性作用を体験したくないという患者に対して、日中、とはいえ夜または週末に1回試して見るように推奨しています。基本的に、大麻は人生における新たな視点を得ることや独創的な問題解決に役立つのだという認識を得るために、そしてただ笑って楽しむために、THC優勢の大麻株を試すよう勧めています。またTHC優勢の大麻は時により良い効果を示すことがあります。THC優勢の大麻の方が、疼痛や不安障害、けいれんにより効果的であることもありますし、睡眠にもより役立つ傾向にあります。

 

 

プロジェクトCBD:低用量と高用量に関しては、実際どれくらいの幅がありますか?どれくらい低用量で効きますか?高用量で効く場合はどれほど必要ですか?

 

スラク:私は自分の発見にとても驚きました。その過程にあったのは、患者の話をよく聞き、彼らが提出する調合法を事務所の一角にある実験室でそれを検査することです。時に私たちは、1日にたった数mgで効果を感じる人々にとても驚かされます。1日に全カンナビノイドが1、2mgでちょうど良いという成人患者がいました。それが、私が診てきた最も低い投与量です。信じがたく聞こえるでしょう。これは精神活性基準値以下です。それでも患者は時間をかけて気分が良くなったり、身体機能が改善したり、症状が軽減したりするのです。これが最低用量でした。低用量または中容量で効果が出なかった患者、また侵襲性の強いがんやその他重度の疾患と闘病する患者に対する高用量は、1日に2000mg以上など数千mgにもなります。ですから2mgから2000mgまでの幅がありますが、個々によって投与量は異なります。

 

 

 

プロジェクトCBD:今、特にがんとおっしゃいましたが、おそらくがん患者も治療してきていらっしゃいますよね。がん患者はより高用量を必要とする、と推定するのは適正ですか?それとも低用量で効く患者もいるのでしょうか?

 

スラク:低用量で生活の質が向上したがん患者は確かにいました。いつも生活の質の改善が、私にとって最初の目標です。人は誰でも死にますし、その死因ががんとなる人もかなりいます。大麻を使用したい、それも高用量が最適だと聞いたことがあるので極めて高用量を試したいと言うがん患者が来た場合でも、それが極めて侵襲性の強いがん患者または大麻の経験が豊富な人でない限り、まずは1、2ヶ月低用量から始めましょうと話します。実際に生活の質を改善し、笑ったり、眠ったり、気分を良くしたりするためにです。なぜなら人は気分が優れているとき、免疫系がより良く機能する傾向にあり、排泄や解毒がうまく機能します。そこで体内にあるがんに対処しようする治癒力を増強させることができます。その1、2ヶ月の間、血液マーカーや経過スキャンを診て、低用量アプローチが実際にがんの成長を阻止しているか確認します。時には阻止できていることもあります。しかし阻止できていない場合、患者がその低用量の経験があった場合は、次の手段に移ります。第二案では通常、 耐容性がある限り、または経済的に余裕がある限り投与量を上げて、それを数ヶ月間続け、結果を診ます。

 

 

プロジェクトCBD:患者が長期的に大麻を使用してきた慢性使用者であった場合はどうでしょうか?これらの人々はすでに高用量を使用してきていますから、必ずしも低用量が適切ではなさそうです。こういった人々に対処する中で分かったことはありますか?

 

スラク:これはとても興味深いことで、これまでの診察において大きな割合を占めています。診察に来て、「これまではこの大麻株が効いていた」「健康上の利点をより多く得るにはどのように調整したら良いか」と話す、大麻を使用してきた患者は数多くいます。たいていの場合、その答えは投与量を減らすことです。耐性を築かず、もっとも多くの効果が得られ、副作用がもっとも少なくなる最適な大麻投与量というのは誰にでもあることが分かりました。最適な投与量を越えるとゆっくり効果が失われていきます。そこで患者はもっと量を増やすべきだと考えてしまうのです。これらの効果をもっと得るために投与量を増やし、さらに効果が失われていきます。そこで私は6日間の手順を開発しました。私はこれを「増感手順」と呼んでいます。この手順では、2日間大麻断ちをしてから4日間慎重に投与量を増量していきます。6日間かけて結果的にこれらの人々は、少なくとも50%投与量を減らせます。この手順を終える頃までには使用量も減り、より大きな効果を感じられ、また副作用も減り、お金も節約することができるので、彼らにとっても有益です。それに50%と言いましたが、通常はそれよりももっと多く減ります。良く聞かれるのは「先生、俺は1日に12本ジョイントを吸っていたのに、今は2本です。それなのにこっちの方が強力で、健康状態も良くなり、より大きな効果を得られています」という意見です。

 

 

プロジェクトCBD:それはちょっと直感に反した事実ですね。通常はうまくいっていなかったら使用量を増やそうとするものですから。しかし二相効果について考えれば、そうではないことが推測できます。二相効果とは何でしょうか?また大麻医師と患者が覚えておくべきことは何ですか?

 

スラク:素晴らしい質問です。大半の人は、多ければ多いほどいいと考えています。しかし私たちは必ずしもそうではないことを知っています。そしてこれまでの私の臨床経験上、そして研究による動物・人体データに基づいても大麻に関しては多ければ多いほどいいのではないのです。二相効果とは、用量反応曲線のことを指しています。私たちは計画を建てるとき、特定の量を与え、その反応を見ます。その後投与量を増やせば反応が大きくなり、さらに増やせば、さらに大きな反応が得られるといった具合です。しかし、高用量を与えると効果が下がり、さらに高用量になるとさらに効果が下がります。その曲線は釣鐘型になります。最適な量というのは曲線の真ん中あたり、もっとも高い部分になります。それ以上増やすと、反応は減ります。これが二相効果というものです。

 


プロジェクトCBD:では三相性とは何ですか?最近その単語を耳にしたのですが、良く意味が分かりませんでした。三相性も博士が発見した大麻治療に当てはまりますか?

 

スラク:もちろんです。三相性または多相性では、上がったりさがったりします。どの傾向も段階です。例えば、治療量以下を投与して、効果を得た人がいればそれは一つの段階です。投与量を増量し、効果が下がれば、それは別の段階です。しかし投与量を大きく増量した際に効果が戻ることがあります。その場合、効果が戻るとともに副作用が出たり、低用量時の効果とは少し異なる効果だったりします。またおそらく超低用量でも、効果は下がるでしょう。

 

 

プロジェクトCBD:投与量に関して、主に大麻の主要カンナビノイドであるTHCとCBDについて話していますよね。加熱するとTHCやCBDに変化する生の酸性カンナビノイド、THCAや CBDAに関してはどんな経験がありますか?

 

スラク:酸性カンナビノイドには非常に感銘を受けています。以前は酸性カンナビノイドがもたらすと言われている効果について信じていませんでしたが、数年前、私のてんかん患者の母親が発作抑制に効いたというCBDオイルの瓶を持ってきたので、検査しようと言いました。実験室を配置したばかりでした。そのCBDオイルを調べると、そこにはCBDもTHCも入っていませんでした。含まれていたのは非常に少量のTHCAでした。それ以来、私はTHCAが、そしてある程度CBDAがもたらす効果について注目してきました。それで分かったのは、これら酸性カンナビノイドは症状抑制に有効で、時には中性または脱炭酸されたTHCやCBDの10〜100倍も有効であるということです。

 

 

プロジェクトCBD:それは発作を持つ患者だけではなく、THCAやCBDAは他の疾患に関しても当てはまりますか?

 

スラク:もちろんです。偏頭痛や疼痛、その他炎症性疾患に効果を示すのを診てきました。

 

 

プロジェクトCBD:この構造を科学的に明らかにすることはできますか?THCがどのように脳に作用し、どの受容体に結合するかを示す研究があるのは知っていますが、THCAはTHCのような精神活性作用を持たないという事実を考えたとき、THCAはどのように作用するのでしょうか?

 

スラク:少し科学的に解説できますが、全てではありません。酸性カンナビノイドは炎症を抑えることがわかっています。また複数の動物実験では、THCAがTHCの1/100〜1/10の量で吐き気・嘔吐を抑制することが分かりました。これらの結果は、私が患者の治療から分かったことの一部を裏付けるものです。実際、私たちはTHCの投与量を10%減らし、その分THCAを増量し、優れた結果を得ることができます。私たち科学者は、生の酸性カンナビノイド、特にTHCAがTHCと同じメカニズムを持つとは考えていません。THCAはCB1受容体に結合しません。THCAの作用はCB1受容体に左右されるかもしれませんが、直接的には作用しないのです。

 


プロジェクトCBD:それはCBDと同じように聞こえますね。

 

スラク:おそらくそうでしょう。まだ分からないのです。研究のおよそ99.9%は中性カンナビノイドに関するもので、酸性カンナビノイドに注目した研究はわずかしかありません。さらなる研究が必要です。

 

 

プロジェクトCBD:Healer.comについてお訪ねします。今お話いただいたような情報は、Healer.comでも閲覧できるのでしょうか?

 

スラク:もちろんです。Healer.comは無料の教育サイトです。効果的なカンナビノイド治療を実践するためには、多くの教育的な情報が必要だということが分かったため、Healer.comを立ち上げました。本ウェブサイトには、これらの教育的ニーズを解決するプログラムがあります。全ての医師が私たちのように45〜60分かけて外来診療するような余裕がないからです。大麻初心者に対するプログラムもあり、そこでは一つずつ解説し、分かりやすいように買い物ガイドを提供しています。すでに大麻を使用している人に対して、増感手順を用いて投与量を減らし、効果を改善するためのプログラムもあります。また吸引からチンキ剤に変えたい人のためのプログラムもあります。これらは精神活性化させたくない人々のためのプログラムです。また時々は精神活性化するのも効果的であることについても説明しています。私たちが診察で見てきた最大の教育的ニーズに関する答えが本サイトにあります。過去2年間の診療において経験した最大の体験は、重度の神経学的疾患を抱える子供の治療のために大麻を使用したいと考えている、非常によく勉強しているが慎重な親たちがたくさんいることです。Healer.comでは、大麻を選択肢の一つとして考慮している親が知るべきことすべてを解説する動画シリーズを作っています。

 

 

プロジェクトCBD:素晴らしいですね。本日は投与量などについて貴重な体験をシェアしていただき、ありがとうございました。

 

スラク:こちらこそありがとうございました。

参考:ProjectCBD