マリファナ VS アルコール

マリファナとアルコールがもたらすリスクと危険度の比較検討の最後に、同じくこの件について調査を行った専門家の意見を紹介しよう。

1990年半ば、世界保健機関(WHO)はある科学者チームに委託して、マリファナ使用が健康面・社会面に及ぼす影響を、アルコール、ニコチン、アヘン剤を含む他の薬物と比較させた。それぞれの薬物がもたらす危険の大きさを比較し、数値化したのち、調査チームはこう結論した。

「全体として(マリファナによる)こうしたリスクは、大きさで言えば小から中程度である。総体的に言って、現在アルコールやタバコが原因となっている公衆衛生問題に匹敵する規模の問題を引き起こすとは考えにくい。現在の使用パターンでマリファナが引き起す公衆衛生問題は、すでにアルコールやタバコが欧米社会で引き起している問題よりもはるかに軽度のものである」

WHOは最終的にこの研究結果を、1997年に出版された報告書「Cannabis: A Health Perspective andResearch Agenda(公衆衛生の観点から見たマリファナと調査事項)」から削除した。これは、アメリカ政府が、このような結論はアメリカで施行されているマリファナ法を弱体化させるものだとして政治的圧力をかけたためだと言われている。

フランス国立衛生医学研究所の科学者たちは、これと似た調査報告を1998年に発表している。彼らは合法・非合法薬物を三つのカテゴリーに分類した。公衆衛生に最大の脅威となるもの、中程度に危険なもの、まったく危害を与えないか与えてもごくわずかなもの、である。はたしてアルコール、ヘロイン、そしてコカインは最も危険な薬物カテゴリー、煙草と幻覚剤は公衆衛生に中程度の危険を及ぼすカテゴリーに分類された。そしてマリファナについては、公衆衛生に及ぼす危害が最も少ないカテゴリーと断定されたのである。

1989年には、カリフォルニア州の研究諮問機関がマリファナとアルコールによる健康への影響を調査した。その結論は、「マリファナを客観的に検討した結果、使用者および社会に与える被害は、アルコールやタバコよりも少ない」ということだった。案の定、この報告書は州の法務長官によって公表を拒絶された。

2002年、カナダ上院の特別委員会がマリファナと健康について行った徹底的な調査によれば、「科学的なデータは、マリファナがアルコールに比べてはるかに害が少ないこと、犯罪としてではなく社会的・公衆衛生的な課題として扱われるべきものであることを圧倒的に示している」。委員会は報告書の最後で、16歳以上の市民のマリファナ使用を合法化するよう呼びかけたが、この要請は議会の大多数に無視された。

2007年には、オーストラリア保健福祉研究所が科学者の一団を雇い、アルコール、煙草、その他の薬物が公衆衛生に与える影響を調査させた。予想されたとおり、飲酒は死亡や疾患の大きな原因だった。「オーストラリア国内の疾患とケガ全体のうち、3.2%はアルコールによる害が原因である。調査した14種のリスクファクター(薬物)のうち、45歳以下の男性において、疾病とケガの一番大きな原因はアルコールだった」と報告書は結論づけている。それに対し、マリファナの使用が原因となった死亡は1件もなく、推定されるオールラリアの疾病とケガの総数のうち、マリファナが原因のもんはわずか0.2%だった。

同じ年、権威あるイギリスの医学雑誌「Lancet」のために、専門家のチームが同様の調査を行った。多数の合法・非合法薬物による身体および社会への害を査定した結果、調査チームは、アルコールのほうがマリファナよりもはるかに健康面・安全面に与える危険が大きいと断定した。

最後に、2008年には、イギリスの無党派シンクタンクであるベックリー財団に委託された調査団が、マリファナが健康に及ぼす危険を否定した報告書を発表した。

その結論は、「現在のマリファナ使用パターンが公衆衛生に及ぼす影響は、他の非合法薬物(オピオイド他)、あるいはアルコールによる影響に比べ、ささやかである。前者との差は、マリファナの過剰摂取による死亡の危険性がないことを反映している。後者との差は、マリファナ使用中の運転による死亡の確立が、飲酒運転の場合のそれよりもはるかに低いこと、健康への悪影響の少なさ、マリファナの常習使用率がアルコールのそれよりも低いこと、そして成人後もマリファナを使い続ける率がアルコールよりも低いことによる」というものだった。

報告書の執筆者は、最終的には中央政府による麻薬取締法を改正し、マリファナの販売と使用をアルコールと同じような形で許可することが、公衆衛生と安全のために最も役に立つ、と提言している。

出典:マリファナはなぜ非合法なのか?