マリファナの医療効果について

マリファナはさまざまな治療に用いることが可能であることが示唆されており、研究者たちもそれに科学的根拠を解明しようと日々勤しんでいる。
近年医療大麻の解禁ニュースなどでマリファナがどんな症状を抑えるのに効果があるか、そのいくつかはご存じの方も少しは増えてはいるものの実態はそこまで多く知られていない。

マリファナが食欲を増進させるのにどれほど効果があるかは、もう何十年も前にヒッピーたちやエイズなどの疾患を患った人たちによって指摘されている。俗にいう「マンチ」という言葉だ。これはマリファナを使用することで食欲増進効果や普段の食事がより美味しく感じなど味覚にも作用することが関係している。

「マンチ」は脳内におけるメカニズムが大きく関係することが米エール大学の研究チームよって解明されている。通常食欲意欲などをコントロールしているPOMC細胞がカンナビノイドを摂取した場合、通常の科学信号を反転させることが指摘されている。つまり、私はお腹いっぱいだ!と神経細胞を通じて促しているものを私はお腹が減った!という指令を脳に出している。

勿論、HIV、エイズ、癌の化学療法、あるいは悪液質などで激しく体重が減少している人には、「腹が減る」という副作用は生きるために必要なことであり、
大麻が激しい悪心・吐き気を抑えるのに使われたり、マリファナを吸うと咽頭反射が減少することなども指摘されている。

このようなメカニズムを解明することができれば、癌治療や拒食症などで食欲不振に陥ってしまう摂食障害を抱える人たちにとって有益な治療になる可能性があることを研究者は指摘している。

またマリファナは緑内障に効果がある。極端に眼圧が高くなるのが特徴の眼疾患である緑内障の治療にも使われることを知っている人は少ないと思う。マリファナを吸うと一時的に眼圧が下がる効果が実証されている。そして、マリファナが気分を高揚させ、不安感を軽くするということを知らない人はいないに違いない。しかし、マリファナを吸って逆に不安感も抱くという症状を誘発することも同時にあることを忘れてはいけない。

多発性硬化症など、運動性疾患の一般的な症状である不随意筋肉痙攣や失禁の減少にも、マリファナが効くことが近年急速に広まっている。マリファナはまた眠気を誘発し、トゥレット・シンドロームに伴う痙攣を抑えたり、炎症や痛み、中でもニューロパシー(通常の鎮痛剤では治療が難しいことで有名な神経痛の一種)の症状を劇的に緩和する。

2007年にサンフランシスコ総合病院で行われた研究は、大麻の喫煙によってHIVと関連した感覚性ニューロパシーが30%以上削減された、と結論付けられている。専門誌「Neurology」中で研究者は「マリファナ吸引の認容性は高く、HIVに付随するニューロパシーからくる慢性的な神経因性疼痛の軽減に効果があった」と報告している。

マリファナの医療的な効用が、単に病気の症状をやわらげるにとどまらない、ということを知っている人はおそらくずっと少ないだろう。中には、マリファナが病気の治療そのものに効果がある場合もあると思われるのである。たとえば、マリファナには強い抗酸化特性があって、それが心的外傷から脳を守り、アルツハイマー病のようなある種の神経疾患を妨げる可能性がある。近年マリファナが脳にもたらすメカニズムが徐々に解明されつつある。

研究:大麻は脳の老化プロセスを食い止める

事実、政治的に非常に皮肉なことではるが、アメリカ保健社会福祉省はカンナビノイドを酸化防止剤および神経保護材をして使用する特許(特許番号6630507)をもっているのである。そう、マリファナを「スケジュールⅠ」の非合法薬物(連邦法では「いかなる治療における医療効果も現時点で認められていない」
と定義される)に指定している。

そのアメリカ政府が、大麻草にもともと含まれている、治療効果をもつカンナビノイド化合物のいくつかに対して、知的所有権を保有しているのである!

長期にわたるカンナビノイドの使用は、多発性硬化症など、ある種の神経疾患や自己免疫系の病気の進行を遅らせることが推測されている。臨床試験では、サティベックス(天然の、大麻草全草から作られたエキスを口腔スプレー)を数年間使用した多発性硬化症患者は、痛みや痙攣の治療のため1日に必要とする薬の量が少なくなったと報告されている。多発性硬化症は進行性の病気なので、普通に考えれば患者が効果を得るために必要な薬の量は、時間が経つとともに増えるはずである。それが真逆の結果になっているのだ。

イギリスの研究者は「Brain」誌の中で、「マリファナは、最終的に多発性硬化症やその他の疾病における慢性障害につながる神経変性のプロセスを遅延させる可能性もある」と指摘している。前臨床試験の結果によれば、マリファナは命にかかわる神経変性疾患である筋委縮性側索硬化症(ルー・ゲーリック病)の進行を抑える可能性もある。少なくとも1件の研究例が、筋委縮性側索硬化症の発病の前と後にTHCを投与すると、病気の進行を停止させ、ネズミの生存期間が長くなることを示したのである。

マリファナはこれと同じ効果を人間にもたらすだろうか?

アメリカ国内に住んでいるキャシー・ジョーダンは、筋委縮性側索硬化症を患いながらもっとも長く生存している人の一人だ。それは日常的にマリファナを使用していることが理由だと彼女は伝えている。

キャシーは1986年に筋委縮性側索硬化症と診断され、余命数年と言われた。(筋委縮性側索硬化症の半数以上が、発病から三年以内に死亡している。)1986~1989年まで、医師らは彼女に筋弛緩薬と精神安定剤を与え続けた。薬を飲み続けたにもかかわらず、キャシーの症状にも精神状態にも改善は見られなかった。1980年代の終わりには、彼女は絶望し、死を望むようになった。友人にマリファナを勧められたのはそんなときだった。

キャシーが初めてマリファナ煙草を吸うと、すぐに素晴らしい治療効果が表れた。マリファナは痛みを劇的にやわらげ、筋肉を弛緩させ、同時の食欲を増進させ、気持ちを明るくさせたのである。数年のうちにキャシーはほとんどすべての処方薬をやめてマリファナに替え、その結果には医師も、彼女を知る人たちも衝撃を受けている。

2008年、フロリダの新聞のインタビューで彼女は、「医者が部屋から出ていってしまうのを見るとワクワクします」と冗談を言っている。「私があんまり元気なのでムッとしているのよ」最後に、カンナビノイドは糖尿病の発症を予防し、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(一般的には耐性菌と呼ばれる)などの多剤耐性菌の感染が広がるのを抑えるとする研究例もある。(「米国医師会雑誌」によれば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌によって入院・死亡した例は年間二万件近い。)

マリファナはまた、癌との闘いにも力を発揮する。研究室での実験では、カンナビノイドを計画的に投与すると、神経膠腫(脳腫瘍)、前立腺癌、乳癌、肺癌、皮膚癌、脾臓癌、リンパ腫の悪性癌細胞を選択的に狙って破壊する。抗がん剤とは違い悪性の癌細胞に対してのみ攻撃するため、他のいい細胞に攻撃をすることはないのも特徴の一つだ。

スペイン人研究者マヌエル・ガズマン氏は、権威ある雑誌「Nature」でこうようなことを述べている。「カンナビノイドは、実験室の動物実験において、腫瘍の増殖を抑える。細胞シグナリングの主要な経路を調整することによって直接的な増殖停止と腫瘍細胞の死を促進させるのと、腫瘍の血管新生を阻害したり転移を抑制したりするのがその仕組みである。カンナビノイドは選択的に働く抗腫瘍化合物であり、癌化していない細胞に影響を与えることなく癌細胞を殺すことができる」。

問題は、科学雑誌を検証してみると、アメリカの研究者たちがマリファナのもつ豊かな抗癌作用について初めて報告したのは、30年以上も前の1974年だということである! それなのに今日まで、政府はただの一件も、死に至る病の治療に関するマリファナの可能性を評価するための追跡研究を行ってはいないのだ。

出典:マリファナはなぜ非合法なのか?