大麻問題:発展するCBD

カンナビジオール(CBD)は医療用途に関して急速に「より興味深いカンナビノイド」になりつつあります。ファーマコロジー・アンド・セラペウティクス誌7月号に発表された科学論文に関する新たな包括的レビューで、シモナ・ピサンティ、アンナ・マリア・マルフィターノらが注目しました。研究著者らは、CBDの生物学的効果を調べた後、広範囲の疾患に対するカンナビノイドの治療可能性について調べました。

・大麻が治療可能性を持つ分野
1.アルツハイマー病
2.パーキンソン病
3.多発性硬化症
4.てんかん
5.がん

・医療大麻の規制と研究結果の矛盾

CBDが治療可能性を持つ最も有望な分野の一つは、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症といった神経変性疾患の治療です。これらの疾患を引き起こすメカニズムはまだ解明されていませんが、 特に進行期において重要な要因と考えられているのは炎症です。CBDは脳内の炎症を抑制します。CBDが持つ抗酸化作用および神経保護効果も有望です。

1. アルツハイマー病

認知症と特徴付けられているアルツハイマー病は、βアミロイドペプチド沈着で構成される脳内のプラーク沈着によって引き起こされます。このβアミロイドペプチド沈着は神経毒性で、酸化を引き起こします。研究結果からは、 これらの神経炎症および神経変性反応の緩和にCBDが有望であることが分かりました。

ある研究では、CBDは社会認知障害の好転を促しました。

2. パーキンソン病

パーキンソン病は「 黒質線条体ドーパミン作動性ニューロンの進行性の死」によって運動系変性を引きおこす疾患です。治療薬はなく、進行性の運動機能損失を遅延または好転させる薬もありません。レボドパは治療において有効な医薬品ですが、長期的な使用は合併症を引き起こすことがあります。

CBDが新たな薬学的アプローチの開発に貢献できる可能性があります。CBDがドーパミン生成ニューロンを保護し、健康を促進する可能性を示す実験的証拠があります。この分野におけるCBDの可能性を調べるために、より大規模な研究ならびにパーキンソン病の症状のより詳細な評価が実施されなければなりません。

3. 多発性硬化症

多発性硬化症は、脳の軸索を囲むミエリン鞘を破壊、またそれによって起こる神経機能障害および不可逆身体障害の再発エピソードによって特徴付けられます。

大麻は痛み、震え、けいれんといった多くの多発性硬化症の症状の治療に有効であることが分かっています。大麻使用を支持する研究が多く存在する一方で、その研究には大麻の精神活性成分であるTHCが関わっています。

これらの研究では、CBD単体ではまだ研究されていません。

「しかし、CBDの抗炎症、神経保護、免疫促進作用など幅広い効果を考えれば、また臨床的利用の妨げとなる精神活性性の欠如を考慮すれば、CBDの活用は多発性硬化症患者にとって新たな安全で有効な潜在的治療代替薬としてますます大きな注目を集めています」

CBDは多発性硬化症の発症および進行における抗炎症要素の抑制に有望であることを示す実験的データがあります。

4. てんかん

てんかんは、発作を引き起こす複数の神経障害として言及されます。数多くの治療法が存在しますが、患者の30%には制御不可能な発作が起こります。

「これまでに、さまざまなてんかん型の治療におけるカンナビノイドの潜在的な有効性を証明する科学的証拠が増えています」

複数の実験においてCBDの抗けいれん効果が示されています。ランダム化研究によるさらなる臨床データが必要とされます。一方、GWファーマシューティカルズ社の経口CBDに関する最新研究では、発作頻度の軽減がもたらされました。CBDは極めて治療が困難なてんかんを患う子供と成人において十分な安全性プロフィールがあります。

5. がん

CBDはがん性腫瘍との戦いにも有望であることが示されています。

カンナビノイドの抗腫瘍特性を実証する確立された研究がありますが、これらの研究では「デルタ9テトラヒドロカンナビノール(THC)および付加的合成アゴニストの臨床的利用が関わっており、またTHCがもたらす望まれない精神活性的副作用によって制限されることが多い」とされています。

しかし、CBDが単体で「がん細胞の転移、癒着、浸潤を抑制し、抗腫瘍特性を持つことを示唆する複数の報告書が存在します。

ピサンティ、マルフィターノら研究者は「乳がん、肺がん、結腸がん、脳腫瘍その他といった複数のタイプのがんの腫瘍形成調節におけるCBDの有効性」についても再調査しています。

ピサンティ、マルフィターノら研究者チームによると、CBDは多角的な薬理作用を持ちます。CBDは神経を保護し、痛みを抑制し、不安を緩和し、抗鬱作用があり、血管緊張を低下させます。また抗酸化剤でもあり、がん細胞の成長を抑制し、腫瘍血管形成プロセスや炎症を抑制します。

医療大麻の規制と研究結果の矛盾

研究著者らは結論として、近年世界中で医療大麻の解禁が広がっているが、その傾向には国家規制当局による薬としてのカンナビノイドという認識が伴っていないため矛盾した状況が発生していると述べています。

CBDは多くの点で合法ですが、規制されていません。数多くのCBD製品が登場していますが、患者は適正なラベル表記を要求する法律または規制基準によって守られていません。したがって、製品の安全性または品質に関する保証や確実性はありません。また多くの場合、治療用途に必要とされる効果的な投与量に関しても特に情報が欠如しています。

例えばアメリカでは、CBDは食品医薬品局(FDA)によって診断、治療、治癒、または病気の予防を目的とした利用が承認されていません。このためにCBD製品は栄養補助食品という扱いになっています。1日あたりの推奨摂取量を決めるのはFDAなので、FDAが承認していないために投与量に関するデータが欠如しているのです。

イギリスではそのような規制が登場し始めており、研究著者らは次のように期待しています。「より大規模で着実な臨床試験によって複数の病理におけるCBDの治療的妥当性が確率されれば、世界中のその他規制当局もCBDの規制状況の見直しをしなければならなくなるでしょう」

参考:HighTimes