医療大麻とマリファナ

医療大麻について詳しく解説します。

この記事では、医療大麻とマリファナの定義、マリノールやナビキシモルズなど海外で実際に使用されている大麻系医薬品やその効果、アメリカ各州で異なる医療大麻の扱いや適応疾患、大麻に関する医学的研究について説明します。

医療大麻とマリファナについて

日本では違法薬物の代表のように扱われているマリファナは、大麻草の葉や花穂の部分を乾燥させ、紙で巻いてタバコのようにしたり、あるいはパイプに詰めて火を点けて喫煙するものです。

マリファナは、もともとはメキシコの言葉ですが、現在では多くの国で通用する呼称となっています。メキシコでは、マリファナは安いタバコを意味していました。この安いタバコは大麻を混ぜて吸われることがあり、次第に大麻タバコを意味するようになったようです。米国で大麻を取り締まるとき、悪のイメージを浸透させるために「大麻(カンナビス)」を「マリファナ」と呼び変えたという歴史があります。

つまり、医療目的で使用する大麻もマリファナと同じです。日本では嗜好目的の場合をマリファナ、医療目的の場合を医療大麻と呼ぶことが多いようですが、実際は全く同じものです。米国では Medical Marijuana(医療マリファナ)と呼んでいます。

医療大麻は、産業利用や嗜好利用などいろいろある大麻の利用法の一つと理解すれば良いのです。医療利用の場合、品種や栽培条件を特定するなどの品質管理をされた大麻を用い、成分の含有量の表示や、呼吸器系に影響が無いような特別な喫煙具が開発されるなど、より医療目的に沿った利用しやすい手段が用いられています。

また、医療大麻には含まれる成分の異なる様々な品種や株が用意されています。そして、自分の病状の治療に最も合った医療大麻を選択できるというオーダーメイドの治療も行われています。

大麻製剤や合成カンナビノイドがエイズやがんや多発性硬化症に使用されている

日本では大麻取締法で大麻の医療目的での使用も禁じられているため、精神変容作用のあるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)を製剤化したものや、大麻抽出物由来の医薬品も一切使用できません。しかし、欧米では多くの地域で医療大麻や合成THCなどが使用されています。

ドロナビノール(Dronabinol)は合成したΔ9-デトラヒドロカンナビノール(THC)製剤で商品名はマリノール(Marinol)と言い、米国やドイツなどで処方薬として認可されています。THCには食欲増進や吐き気止め作用があり、エイズ患者の食欲不振や体重減少、抗がん剤治療による吐き気や嘔吐に対する治療に使われています。

米国では規制物質法のスケジュールⅢ薬物になっており、処方薬として利用可能で、非麻薬性で精神的あるいは身体的依存の危険性は低い薬として認められています。大麻がスケジュールⅠのままであることと矛盾していることが指摘されています。

ナビロン(Nabilone)もTHCを模倣した合成カンナビノイドで商品名をセサメット(Cesamet)と言い、米国やカナダや英国などで承認されています。やはりエイズ患者の食欲不振や体重減少、抗がん剤治療に伴う吐き気や嘔吐、多発性硬化症などの神経障害性疼痛の治療に使用されています。1mgノナビロンは7~8mgのドロナビノールに相当する活性を示します。

ナビキシモルス(Nabiximols)はΔ9-デトラヒドロカンナビノール(THC)とカンナビジオール(CBD)をほぼ同量含む大麻抽出エキスを製剤化したもので、商品名サティベックス(Sativex)として多くの口で許可されています。多発性硬化症患者の痙縮、疼痛、過活動膀胱などの改善目的で使用され、カナダではがん性疼痛の緩和のための使用も認可されています。

ここで重要なことは、合成THCしか含まない製薬(ドロナビノールやナビロン)の内服は、マリファナの喫煙に比べると、効果は弱く、副作用が強いという点です。

大麻抽出エキスを製剤化したナビキシモルス(商品名サティベックス)の方が合成THCの単剤よりも効果が高く、副作用も少ないようですが、ナビキシモルスも大麻の吸入には及ばないようです。ナビキシモルスは舌下にスプレーして摂取します。内服すると肝臓で代謝を受けて効果が弱くなるからです。舌下よりマリファナの喫煙で肺から吸入した方が発現が早く、効き目も高いことが知られています。

米国では医療大麻が多くの疾患に使用されている

2015年現在、アメリカ合衆国では23州と首都ワシントンD.C.(コロンビア特別区)で医療大麻が合法化されています。

大麻の品種や株ごとに、含まれるカンナビノイドの成分比率やカンナビノイド以外の成分の量が異なり、薬効に違いがあるため、疾患ごとに適した大麻製剤を選択することが可能になっています。

通常、医療大麻の使用には処方箋が必要で、乾燥大麻として処方されパイプに詰めてから燃焼させて成分を吸引します。州によって販売(配給)の方法が異なります。

合法化の程度は州によって異なり、適応疾患が限られている州もあれば、「医師が大麻で効果があると診断した全ての疾患」に適用される州もあります。

例えば、コロラド州では「悪液質、がん、慢性疼痛、慢性神経系疾患、てんかん、緑内障、HIV感染症/エイズ、多発性硬化症、吐き気」に使用が許可され、バーモント州では「悪液質あるいは消耗性疾患、がん、HIV感染症/エイズ、多発性硬化症、けいれん発作、他の方法でコントロールできない疼痛や吐き気」に対して使用が許可されています。

一方、ワシントンD.C.では、コロンビア特別区のライセンスを持つ医師が必要と認めた全ての疾患に使用が許可されています。カリフォルニア州でも医師が必要と認めた疾患で使用が許可されています。患者が申請し、州が承認すれば、医療大麻対象疾患と認められる州もあります。

これらの州では州政府公認の医療大麻販売所(ディスペンサリー)があり、患者はそこで良質な大麻を、安全に安価に安定的に入手できます。公認のディスペンサリーが未設の州では、患者による所持や栽培が条件付きで許可されています。

このように、州によって合法化の制度は異なりますが、多くの州で使用が許可されている疾患は、医療大麻の効果がまず間違いない疾患と言えます。悪液質、がん、HIV感染症やエイズ、緑内障、吐き気、慢性疼痛、多発性硬化症、てんかん、けいれん発作、クローン病やその他の炎症性腸疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリッグ病)、C型肝炎、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などです。

これらの疾患の他にも繊維筋痛症、偏頭痛、筋ジストロフィー、ニューロパチー、慢性炎症脱髄性多発神経炎、痙縮(筋肉緊張亢)、水頭症、アーノルド・キアリ奇形(脳の奇形の一種)、水脊髄症、間質性膀胱炎、狼瘡、重症筋無力症、ミオクローヌス、爪膝蓋骨症候群(Nail Patella Syndrome)、神経線維腫症、関節リュウマチ、ショーグレン症候群、脊髄疾患、脊髄小脳性運動失調、脊髄空洞症、神経根嚢胞、トゥーレット症候群、外傷性脳障害、脳震盪後症候群、病気の末期状態(医師が余命1年と診断した場合、ホスピスに入院中など)といった病名が上がっています。

1990年代からカリフォルニア州で大麻を多く患者に使用してその効果を観察したドット・ミクリヤ医師がまとめた。大麻が有効な疾患のリストには約250種類の疾患が記載されています。

このように極めて多様な疾患に効果が期待できるとは、10年前には信じられなかったことですが、内因性カンナビノイド・システムが体内の多くの生理機能の制御に関わっていることが明らかになった現在では、不思議ではなくなっています。

大麻も医学的研究

PubMed(アメリカ国立医学図書館の国立生物工学情報センターが運営する医学・生物学分野の学術文献検索サービス)のサイトで、Cannabis(大麻)で検索すると14,000件以上の論文がヒットします。大麻草の医学研究の論文は1960年代から増えます。これは大麻草の薬効成分のカンナビノイドの発見とその構造や薬効の研究が始まったからです。大麻草の精神変容成分としてΔ9テトラヒドロカンナ(THC)が単離されたのが1964年です。その後カンナビノイドの構造や薬理活性に関する研究が行われました。

THCと他のカンナビノイド、特にカンナビジオール(CBD)との相互作用が明らかになったのが1975年ころです。

THCの精神変容作用などの薬効は、その量だけで決まるのではなく、CBDなど他の成分から影響を受けることが明らかになりました。

例えば、CBDはTHCの薬効を阻害する作用があるので、CBDの含有量が多いとTHCの効き目が弱くなります。しかし、これはTHCの精神作用の副作用を軽減する効果とも言えます。

CBDの含有量が多い医療大麻は、小児のてんかんの治療などTHCの精神作用が好ましくない場合での使用が期待されています。

1966年から76年が大麻研究のルネッサンスで、この間の大麻草の研究から「天然のままの大麻草」が「安全かつ最良の」多数の疾患に有効な医療品であることが証明されました。

大麻に独自に含まれる成分として約80種類のカンナビノイドが発見されていますが、これらの成分が相互に作用し合って精神変容作用を含めて様々な薬効を示すことが明らかになったのです。

最近の報告では、カンナビノイドだけでなく、大麻に含まれるテルペン類も大麻の薬効に関与していることが指摘されています。つまり、大麻の薬効と有用性は、単一の成分だけで説明できるものではなく、大麻全体として捉える必要があると言えます。

1978年以降は論文数が減少します。これは、1976年のフォード政権時には「薬物乱用に関する全米学会」(NIDA)とアメリカ麻薬取締局(DEA)が、大学機関や連邦保健機関が大麻草を研究することを事実上禁止し、天然の大麻由来の抽出液の類を医薬品として研究することも禁じたからです。

その後、1990年代にカンナビノイド受容体CB1とCB2が発見され、その内因性のアゴニスト(受容体に特異的に結合する物質)である内因性カンナビノイド(アナンダミドなど)が発見され、大麻の研究は1990年代から急速に増加することになります。

つまり、体内に存在する内因性カンナビノイド・システムの生体機能における重要性が明らかになり、大麻草成分のカンナビノイドの研究の必要性が高まってきたからです。

依然として医療大麻を認識していない人が多すぎる

医療大麻は何度も説明しているが、医療で大麻(マリファナ)などを有効活用することが許可された患者のみ使用することができる。
患者によっても、マリファナを喫煙する人や酩酊状態になることを避けてTHCとCBDの割合が1:20などの割合に調整された製品を摂取したり、人それぞれに摂取方法は異なるのです。また人によっても効果や効能に個人差があり、自分にあった摂取方法で適切な量のカンナビノイド成分を摂取することが求められています。

誰もがマリファナを想像したときにイメージを引き起こす作用は、テトラヒドロカンナビノール(THC)のみ。それも当然であり、精神活性化作用を誘発し、いわゆる酩酊状態にする原因となる成分である。しかし、カンナビジオール(CBD)は酩酊状態を引き超す作用を抑制する作用が特徴ともいえる。その他のカンナビノイド成分も酩酊状態を誘発することはありません。
この両者の成分が相互作用があることが立証されており、お互いのいい特徴を伸ばし、片方の成分の悪い(酩酊状態)部分を抑制してくれるという不思議な性質を持っている。

日本でもCBDオイルなどを摂取されている方が年々増加傾向にあるので徐々に偏見は緩和されているのではないでしょうか。CBDオイルを摂取して酩酊状態になることはないことは摂取されている方自身が一番よく分かっていると思います。

そもそも大麻取締法は、酩酊状態になるテトラヒドロカンナビノール(THC)を取り締まっている法律である。ここが混乱させる要因ともなっているのだが、大麻取締法はカンナビジオールなどのその他の成分を規制しているわけではないのだ。カンナビゲノーム(CBG)やカンナビクロメン(CBC)も同様です。

まずは大麻やマリファナ、ヘンプという植物がどのような形態で私たちの体にどんな作用や効果があるのか、自分で調べることからはじめましょう。

出典:医療大麻の真実