大麻研究からどんなことが期待できるのか?

大麻や体内の生理学的なカンナビノイド制御システムに対する科学的関心が最近とみに高まっており、こうした傾向は今後も続くだろう。科学者はこの新たな自然規制のメカニズムの発見に沸き立ち、その探究に熱意を燃やしている。こうした研究からさらに多くの副産物がもたらされることも考えられる。

すでに脳の外側、免疫系に存在する第二のカンナビノイド受容体のCB-2が発見され、基礎的な発見が精神活性効果をともなわない大麻製剤のまったく新しい医療利用の方法の開発につながる可能性が出てきている。

これまでに知られている2つのカンナビノイド受容体と2種類の内因性カンナビノイドがたんに氷山の一角にすぎず、今後さらに多くの内因性カンナビノイドや受容体が発見されていくことも考えられる。だがここで確認しておかなけらばならないのは、現在研究が進められている大麻の適応症のほとんど、またはすべてが中枢神経系にあるCB-1受容体へのTHCやこれに類するカンナビノイドの働きにもとづくと見られる点である。

CB-1受容体に拮抗薬として働くSR141716Aなどの薬剤の開発は、この点を明らかにするのに一役買っている。現在のところ、好ましくない精神活性効果を引き起す容量まで投与量を上げることなく、カンナビノイドの医療効果を得る方法は見つかっていない。

実際、CB-1受容体に直接作用して刺激を与えるカンナビノイド製剤で、いかにこうした効果の分離を実現できるのかを見極めることはむずかしい。だが今後、中枢神経系のカンナビノイド系の機能を操る別の方法が発見される可能性はある。

たとえば通常、酵素の分解や組織の摂取メカニズムによって起こる非活性化を遮断する薬剤を使うことで、脳内のアーナンダミドなど内因性カンナビノイドの活性を高めることができる可能性がある。これが実現すれば、中枢神経系でのカンナビノイドの活性をより細かく調節することができる。

最大の効果は内因性カンナビノイドの接続的放出量がもっとも高い脳内領域で示されるからだ。既存の精神活性薬ではセロトニン摂取阻害剤(よく知られているのがプロザック)と、脳内のセロトニン受容体のひとつに直接働くd-LSDのような薬剤を比較することができる。プロザックはセロトニンの機能を高め、抗鬱剤として利用できるのに対し、d−LSDは医療的価値のない強力な幻覚剤である。アーナンダミドの摂取阻害剤が、THCなどカンナビノイド受容体に直接働く薬剤より、はるかに有用性があることも考えられる。

大麻製剤の医療利用の進展を助けるもうひとつのテーマは、THCや合成カンナビノイド、乾燥大麻をこれまでより効率的に投与する新しい手段の開発である。経口ルートの限界はこれまで何度も指摘されているが、投与手段として、吸引は効果がある一方で呼吸器疾患やがんを起こすリスクが大きく、ごく短期間利用する場合を除いて適正な投与手段とはいいがたい。

すでにさまざまな気化器やそのほかの吸引装置についての研究が行われており、実現すればマリファナの煙に含まれる毒性を避けることができるはずだが、現在のところ完全ではない。エアロゾルを使ってTHCをハイに送り込む方法にはあまり関心が寄せられておらず、現在的な吸引装置開発技術を応用することで、実益がもたらされるかもしれない。

カンナビノイド製剤をハイに送り込むことで、吸引の場合と同じくらいの投与速度と効率性が実現できるはずだ。マリファナ吸引の長期的リスクについての大規模な疫学的研究も、大いに必要とされる。1970年代に世界各地で公表された大麻が及ぼす健康上の危険についての種々の報告は、主に大麻の即時効果に焦点を当てたものであった。

マリファナを20年ないし30年間吸い続けた人を追跡した西洋の研究は、数えるほどしか行われていない。タバコ喫煙のケースから類推するかぎり、マリファナ吸引がもたらす長期的なリクス(とりわけ肺がんの可能性)について伝々することができるのは、こうした長期的にわたる追跡研究を行ったあとのことだ

出典:マリファナの科学