マリファナへの依存は起こるのか

動物実験によってTHCへの肉体的依存が起こりうるという証拠が得られ、人間の場合に心理的依存が起こるという証拠も存在している。数々の研究の結果、国際的に認められた物質依存に関するDSM-IV基準を適用した場合、大麻の習慣的使用者はかなりの割合で、ほとんどの者は認めようとしないが、依存者に分類されることが判明している。中毒研究の分野で国際的にに止められた専門家であるウェイン・ホールとナディア・ソロウィーはこうした状況について次のように語っている。

大麻依存は習慣的使用者の間にもっとも多く認められながら、もっとも過小評価されているリスクがある。大麻を使用したことのある人の約10%、毎日使用している人の3分の1ないし2分の1は抑えがきかなくなり、大麻が原因で怒ったり、悪化したりしたと自ら認識している問題をかかえながら、大麻を使いつづけることになる。大麻依存の克服がどれほどむずかしいのか、また本人が使用を断つ際、これを助けるにはどんな方法が一番よいのかといったことは今のところ定かではない。

ポール博士は英上院報告(1998)への証言で次のように述べている。

一般的な世評では、はっきりした禁断症状がないため、大麻は依存性のある薬物ではないことになっている。だが使用をやめようと思ったり、使用料を減らそうと思った使用者の一部がそうすることに大変な困難を覚え、生命に関わる副作用が見られるのに使いつづけてしまうのは、ほぼ確かなようだ。疫学的研究の示すところでは、大麻依存は使用に対する抑制力が損なわれるという意味でタバコ、アルコールに次いで広く見受けられる薬物依存の形態であり、羅患率は大麻を使用した経験のある人の10%に及んでいる。

ホールやソロウィーの母国、オーストラリアでは大麻の消費レベルがとりわけ高い。上記の証言はこうした状況の中でホールらがとれた特定の問題を反映して、実情を少々誇張したものになっているのだろうか。大麻依存の程度を測る方法のひとつに、大麻が原因で治療を求めてきた人たちの数を計測する方法がある。

英国の保健省が1996年に公表したデータによると、地域の薬物診療所で行われた診察の6%で、大麻が主たる乱用薬物となっていた。これと似通った数値だが、オーストラリアの薬物治療センターの新患受付の7%を大麻使用者が占めているというデータが、最近になって報告されている。米国では国立薬害研究所(NIDA)によって10万名が目下、大麻依存症候群の治療を行っていることが報告されている。

米国のデータは職場の検査で陽性となったために強制的に治療を受けさせられた人たちの数が加算され、数値が膨らんでいるものとみられているが、英国とオーストラリアについては、職場での薬物検査が両国ではまだ普及していないことから、そうした影響はないものと思われる。

治療を求めてきた慢性使用者は使用量を減らそうという強い願望がありながら、継続的使用にともなって集中力の減退、抑鬱、不眠といった薬物中毒を示す辛い症状が現れているにもかかわらず、使用量を減らすことができないことを報告している。

米国医学研究所の報告(1999)では、大麻を使用した経験のある人の9%が依存に陥っていることがわかっている。(DSM-IV基準による診断)この報告で公表されたタバコの依存率は32%、ヘロイン23%、コカインは17%、アルコールは15%であった。

出典:マリファナの科学