ストレスに対するCBDは21世紀の解決策?

ストレスは、現代のいたるところに存在します。人生のなかでとてつもないストレスを感じていないなら人間ではない、というほどです。それでも、ストレスはゆっくり私たちを蝕んでいます。ストレスは多くの致死性疾患に静かに共通する原因でもあります。心疾患から、うつ病、自己免疫疾患、がんまで、すべて慢性的なストレスが根元にあると考えられています。大麻に含まれる化合物CBDは役に立つのでしょうか?

ストレスと大麻

ストレスは多くの人が大麻を使用する理由の一つに挙げられています。大麻は1日に終わりにリラックスさせ、不眠症においては眠りを助け、また不安レベルを軽減してくれる、と言われています。それだけでなく、最近の研究では、定期的に大麻を使用する人は大麻を使用しない人と比べてストレスの多い刺激にさらされた時のストレス反応が低いことが分かりました。また心的外傷後ストレス障害(PTSD)も、医療大麻の治療標的として急速に認知され始めています。

大麻とストレス軽減が密接に関連している理由は、大麻の活性化合物と体内のエンドカンナビノイドシステム(ECS)の不可欠な関係を考えれば明らかです。私たち脊椎動物は、特別なカンナビノイド受容体とエンドカンナビノイドと呼ばれる神経伝達物質の巨大システムを持っています。これらは体内の全てのシステムにバランスと保護をもたらすやり方で、ホメオスタシス調節剤として作用します。過多または過少の活動が検知された場合、エンドカンナビノイドシステムが調和を取り戻すために作動します。

ECSは大麻草に含まれる化合物によっても刺激されます。精神活性カンナビノイドであるTHCはECS受容体に結合することによって直接的な効果を引き起こしますが、大麻草のなかで2番目に多いCBDは間接的に体内のエンドカンナビノイド、アナンドアミド量を増加させることによってECSを正常な状態にする、と考えられています。

エンドカンナビノイドシステムとストレス

エンドカンナビノイドシステムによって調節されていない生物学的機能はあまりありませんが、なかでも重要性において際立っているのはストレス調節における役割です。

エンドカンナビノイドによるシグナル伝達は、ストレスに関係する重要なエリア、特にコルチゾールおよびその他ストレスホルモンを調整する視床下部・下垂体・副腎系(HPA)に起こります。エンドカンナビノイド受容体も、感情や記憶、特に恐怖に大きく関わる辺縁系の一部、へんとう体内に見つかっています。

科学者は、HPA軸およびへんとう体におけるエンドカンナビノイドシステムの機能が、体が高度のストレスに対処するのを可能にする一方で、ECSのシグナル伝達が阻害されると慢性的ストレスに順応できなくなる、と示唆しています。

ヴァンダービルド医大の研究者も、エンドカンナビノイド2-AGがストレスからの回復力においてどのように重要な役割を果たすのか観察してきました。この研究者たちは、2-AGをへんとう体に投与されたマウスが高いストレス抵抗性を示した一方で、2-AG不足のマウスには逆の効果が表れたことを発見しました。彼らは次のように結論付けました。「天然カンナビノイドの欠乏は、PTSDおよびうつ病を発症しやすい傾向をもたらします。このシグナル伝達システムの強化は、これらのストレスに関連する疾患に対する新たな治療アプローチを示します」

エンドカンナビノイドによるシグナル伝達を強化する一つの方法は、大麻草に含まれる植物性カンナビノイドを摂取することです。ストレスに対処するために大麻を使用する大半の人は、おそらく精神活性化合物THCを含む株を摂取しています。THCの精神活性は、主に脳や中枢神経系に存在するCB1受容体とTHCの結合親和性によって起こります。THCは少量の場合、落ち着きや抗不安効果をもたらすことが分かっています。しかし大量に摂取すると、THC優勢株は真逆の作用を持ち、不安を悪化させます。

CBDはどのような働きをするのか?

CBDはCB1受容体と結合親和性を持たないので、THCと同じ方法でエンドカンナビノイドのシグナル伝達に影響するとは考えられていません。実際、CBDはTHCの精神活性効果を中和することが研究で示されています。しかし、CBDはエンドカンナビノイドのアナンドアミドを分解する酵素FAAHの生成を阻害することで、間接的にECSを正常な状態にし、ストレスに対処する能力を改善する、と考えられています。

それだけでなく、研究ではCBDが不安を軽減することが分かっています。これはCBDが部分的にセロトニン5HT1A受容体を活性化するからだ、と研究者は考えています。

またCBDは強力な抗炎症剤でもあります。抗炎症作用は、心疾患など、ストレスによる損傷効果を無効化する重要な武器です。

今年発表された研究でハーバード大の科学者が、ストレスによって過剰活性化したへんとう体、動脈炎症、心臓発作の高リスク間に強い関連があることを発見しました。継続的なストレスを受けると、骨髄は過剰に白血球を生成し、それが次に炎症や動脈をつまらせるプラークの発達を引き起こします。CBDの抗不安および抗炎症性質は、ストレスによる損傷の予防および緩和に対する多面的アプローチを提供することができるのではないでしょうか?

CBDは血圧を下げる

しかし、慢性的ストレスおよび炎症がすでに一斉に動脈を攻撃し、動脈を固く狭くする疾患であるアテローム性動脈硬化を発症させようとしていたら、どうなるでしょうか?結果として高血圧となる傾向があり、また慢性的ストレスの典型的な症状です。ここでもまたCBDは、血圧を下げる自然な手段として頭角を表します。

最近モントリオールで開かれた国際カンナビノイド研究会シンポジウムで、ノッティンガム大学の准教授シアーシャ・オサリバンは、1度のCBD投与が人間の血圧を低下させることができることを要約した論文を発表しました。無作為プラセボ比較二重盲検交差研究で、9人の健常人がCBD600mgを投与されました。CBDの投与が「安静時血圧、および心拍数に関連するストレスに対して上昇した血圧を下げる」ことを発見しました。オサリバンは、この血圧の低下はCBDの抗不安効果に続発する可能性があると仮定し、CBDが攻撃・逃避反応を刺激する神経系の一部に抑制作用を持つため「それによって血圧ならびに心拍出量の上昇を防ぐ」ことを提示しました。

これはCBDが直接的に被験者の血圧を下げることを示す初の研究です。心疾患に対する治療標的としてのCBDに関する研究が後続することになるでしょう。

CBDは、長期的ストレスが人体と心に与える影響を中和する方法、または予防策として、ストレスの多い生活の荒波をなだめてくれる可能性を多く秘めているようです。