アルコール、ニコチンとの健康上の比較

もっとも一般的に使われている2種類の向精神性の薬剤、アルコールとニコチンに比べた場合、大麻の健康上のリスクとはどの程度のものなのか。

これはもはやわかりきった問題のように思えるが、実際にはこうした比較には困難がともなう。アルコールやタバコは大麻に比べるとはるかに多くの人たちによって利用されており、公衆衛生に及ぼす影響もそれだけ大きくなっている。

またわれわれはタバコやアルコールが健康に及ぼす長期的影響についても、大麻に比べてはるかに多くのことを知っており、このため三者を比較すると、たいていの場合大麻が一番安全な薬物のように思えてくる。

大麻とアルコール、ニコチン、アヘン剤が及ぼす健康への影響や心理的影響を比較した最近のある論評は、土壇場で世界保健機関(WHO)の報告(1997年)から取り除かれる結果となっている。

そのすぐれた論評『大麻使用による健康上ならびに心理学的な結果』の中で、そうした比較をあえて試みている。娯楽用薬物を使うさい、われわれが意識的に見過ごしがちである裏づけのある健康上のリスクについて、いま一度思い起こす価値はあるだろう。

アルコール

アルコールによる主たる急性のリスクは大麻の場合と同様、陶酔状態にともなうリスクである。いずれも精神運動機能や認識機能、とくに記憶や将来計画に障害をもたらす。アルコールによる陶酔が道路交通その他の事故に巻き込まれる危険を高めるのは大麻の場合とおそらく同じだが、アルコールは大麻と違って攻撃的な行動を促す傾向がある。

アルコールは家庭内暴力の大きな要因でもある。大麻と違って、急性アルコール中毒は命を脅かすことがある。慢性のアルコール摂取にともなう健康上のリスクも多岐にわたっている。

出生前の子供への損害(胎児性アルコール症候群)や口や喉のがんの発症率の増加、肝臓の深刻な損傷や肝硬変、深刻な認識障害につながる脳への永続的損害(コルサコフ症候群)などがある。

アルコールはまた人によって依存を起こし、これが摂取をやめたとき、存在的に命を驚かす禁断症状をともなう。アルコールの大量使用は仕事の遂行能力や家庭生活の深刻な障害につながる恐れがあり、依存者は精神病になる可能性がある。

大麻もまた認識障害をもたらすことがあり、使用者によっては依存を起こすが、禁断症状は比較的軽い。米国では毎年、15万件以上の死亡がアルコール乱用に起因している。

タバコ

タバコ喫煙の急性効果はマリファナ吸引が引き起こす急性効果に似通っている。つまり煙が呼吸器系に及ぼす刺激効果や、ニコチンやTHCが循環系に及ぼす刺激効果がある。

タバコ、マリファナともに慢性の使用は、気管支炎にかかる危険が高まる結果となるが、タバコの場合はさらに気腫や喘息といった呼吸器疾患にかかる危険が高くなる。タバコ喫煙は肺がんやそのほかの深刻な形態のがんとの関連がつきとめられているため、おおきな公衆衛生上の危険をもたらす。

大麻吸引も肺や上気道のがんを発症する危険を高める恐れがあるが、因果関係はまだ明らかになっていない。米国では毎年35万件前後の死亡が、タバコに関係した疾患に起因している。