マリファナ吸引は医療大麻として推奨できるのか?

マリファナ投与手段はほかにあるのか

マリファナ吸引が肺に及ぼす悪影響が文章で十分に裏付けられ、上気道や下気道のがんにつながる可能性が指摘される中で、マリファナ吸引を医療に利用する道ははたして残されているのだろうか。呼吸器系への潜在的危険は別として、薬草の煙を使って治療を行うという発想は、科学的根拠ののある医療という観点からわれわれが抱く多くの概念と対立するものである。米国医師会は次のように述べている。

何十種類もの毒性物質や発がん性物質を含む植物を乾燥させて燃やし、その燃焼生成物を治療薬として吸引するという考え方は、標準的な薬剤認可過程とは著しくかけ離れたものである。この観点にしたがって、合法的な治療薬は繰り返し同じかたちで生産でき、試験できる精製物質から成り立っている。

その一方で、吸引によるTHC投与が多くの患者にとって経口でTHCや大麻抽出物を投与するよりすぐれた方法になっていることは、ほとんど疑う余地のない事実である。THCを経口投与する場合は吸引率がまちまちで、吸引速度も遅いため、患者はつねに摂取量が適量より少なすぎたり、多すぎたりするリスクを背負っている。

だが、吸引では、少なくとも一部の患者にとっては、患者自身がせいかくな薬用量とみなす分だけを速やかに摂取することが可能になる。正確に計測されたTHCを速やかに投与する新たな方法について、即刻さらなる研究を進めていく必要があるのは明らかで、この点は最近公表されたいくつかの公式報告でも、優先事項として勧告されている。
(米国医師会、米国国立衛生研究所、英国医師会、英上院:科学技術委員会、米国医学研究会)

吸引エアロゾルによってTHCを投与する試みは行われているが、この方法は呼吸器系に受け入れがたい刺激効果をもたらすと言われている。肺や鼻の穴に刺激効果をもたらさず、薬剤を送り込む方法も考えられる。肺や鼻の穴は表面積が大きく、血液供給量が豊富なため、肺や気道の局部的治療のケースだけでなく、一般的な薬剤投与経路として大きな魅力をもっている。

他に考えられるのは気化器で、これは薬剤が発火せずに気化する程度の温度まで乾燥大麻や精製THCを熱し、患者が危険な燃焼生成物を吸い込むことなく活性薬を吸引できるようにする方法である。この装置はすでにマリファナを吸引する人たちのグループによって何種類も製作され、その一部はインターネットでも公表されている。

気化器の効果について科学的に研究した事例は少ないが、一部の報告では、現在使われている気化器では依然としてTHCの量に比例して受け入れがたいほどのタールが生成されてしまう点が指摘されている。また、これと同じ研究では水タイプの場合でも、THCに比べてタール吸収率を削減する効果が大きいため、事態を改善するどころかますます悪化させてしまうことが明らかになっている。

THCの新しい投与手段についての研究は、最近ではいくつかの製薬会社によってさらに詳細に行わえており、今後のこの分野で実際的な進展がみられるかもしれない。

マリファナ吸引は現代医学でどのようにつかわれるべきなのだろうか。
慢性の呼吸器疾患やがんにつながる存在的危険のために、何年にもわたって規則的に投与を続けなくてはならない疾患の長期的な治療のケースには推奨できそうにはない。だが現在、マリファナ吸引を利用している人たちに目を向けると、利用層は主に生命を脅かす重い疾患に苦しむ患者たちであることがわかる。

エイズやがん、多発性硬化症に苦しむ患者たちは、これらの疾患ゆえに推定寿命がきわめて短くなっており、こうした患者にとってマリファナ吸引による長期的な健康上のリスクはもはや二義的なものにすぎないというのももっともな意見である。
既存の薬を使っても何ら効果がなく、担当医師がマリファナに効ありと認めた場合、どうして法律がしゃしゃり出る必要があろう。

1988年、英上院・科学技術委員会はこうした『恩恵よるマリファナ』の考え方をとり、医師が患者を特定して処方できるよう、大麻の等級づけを改めることを勧告している。