カンナビノイドの薬物動態について

カンナビノイドの吸収について

体内に入ったカンナビノイド成分は、呼吸器官や消化器官から吸収され、血液に流れて各組織に達する。肺からの吸収は、摂取から効果が出るまでの時間が数分以内と短く、効果の持続が2~4時間あり、使用者が自己管理しやすいという長所がある。短所は、使用者の吸引技術に影響を受けることや喫煙の場合は肺、気管支への影響である。生体利用率(バイオアベイラビリティ)=THCの吸収率は、平均で25%であるが、使用者の経験値や吸引方法によって大きく異なる。

食べること(経口摂取)は、肺からの吸収と比べて、効果が表れるのが緩やかで遅く2~6時間後となり、効果の持続も4~8時間と長くなる。問題点は、生体利用率が低く、毛中濃度が安定しにくく、効果が出るのに時間がかかり、量が調整しにくということである。

静脈注射は、カンナビノイドが水に溶けにくいため一般的に行われていない。CBDの生体利用率は、11~45%で平均31%である。毛中濃度は、THCと同じように吸収後数分以内に100ng/ml以上と高いレベルになり、早く濃度が減少して1時間後は10ng/mlとなる。GW製薬のサティベックスの研究により薬物動態においてTHCとCBDの相互作用はないことがわかっている。1日10mg/体重kg当たりの経口摂取を6週間し田人の血中濃度は5.9~11.2ng/mlであった。このレベルでも動物実験では癌細胞を死滅させることができる。

分布

THC血中濃度は、急速な組織への分布および肝臓でも代謝によって摂取の終了後に急速に減少する。THCは、オクタノール/水分配係数(Logp)6.97と非常に高い油溶性があり、最初に、肺、心臓、脳、および肝臓のような組織に取りこまれ、その後、脂肪組織に蓄積する。マリファナは離脱症状が出にくいと言われているが、これは油溶性が高く脂肪組織へ蓄積されることが影響している。

しかし、体内の脂肪組織にはカンナビノイド受容体が存在しないため、長期間にわたって脂肪組織にTHCが滞留したとしても問題が生じるおそれはない。THCとその代謝物の95~99%が、血液中でリポタンパク質に結合する。そのため、薬物が血液、体液などに対して、どれだけの体積に分散したかを表す見かけの容積である分布容積(Vd)は、THCで3.4L/Kgと推定されている。

代謝

肝臓において解毒を行う酵素として知られているシトクロムP450のCYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4がTHCの代謝に関与している。THCの代謝物は100種類ほど知られているが、主にヒドロキシ代謝物(11-OH-THC)およびカルボキシル代謝物(THC-COOH)となる。この代謝物の半減期が3~4日と長い。

代謝物の11-OH-THCはTHCと同程度の精神作用があり、濃度もTHCと同程度まで上昇する。

排泄

投与したTHCの80~90%が、ヒドロキシ代謝物およびカルボキシル代謝物として5日以内に排泄される。65%以上は大便中に排泄され、25%が尿中に排出される。マリファナ3.55%濃度の喫煙の場合、8時間後に尿中の排泄最大値となり、平均153.4ng/ml排泄される。